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                                               2009年5月25日
 



  GC注記規定を改正した財規等公布
  
  
    
  対応策を勘案して判断 21年3月期から適用  

  
 「財務諸表等の用語、様式及び作成方法に関する規則等の一部を改正する内閣府令」(内閣府令第27号)、「会社計算規則の一部を改正する省令」(法務省令第22号)が4月20日に公布・施行された。これに合わせて、財務諸表等規則ガイドライン及び開示府令ガイドラインも改正されている。
 今回の改正は、継続企業の前提に関する注記(GC注記)に係るもの。「継続企業の前提に重要な疑義を抱かせる事象又は状況」(GC事象等)が存在すれば直ちにGC注記を要する旧規定が見直された。改正後の財務諸表等規則では、GC事象等が存在する場合で、それらを解消または改善させる対応をしてもなお重要な不確実性がある場合に、GC注記を要する。
 旧規定によるGC注記で開示していた情報は、改正後の開示府令により、有価証券報告書の「事業等のリスク」等に記載させることになった(開示は監査対象外)。
 改正後の財務諸表等規則・開示府令・会社計算規則の適用は、平成21年3月31日以降終了する事業年度に係る財務諸表・注記表・有価証券報告書等から。


◆ GC事象等あれば注記する旧規定を見直し


 旧来の財務諸表等規則では、貸借対照表日にGC事象等が存在する場合、GC注記を要する旨が規定されていた。しかし、この規定については、「外形的な判断により画一的に注記が行われている」、「国際的な基準と必ずしも整合性がとれていない」等の指摘もあった。欧米では、同様のケースでもGC注記の対象にならず、有価証券報告書におけるリスク情報等としての開示にとどまる事例も多いという。
 また、近時の企業会計基準業績悪化に伴い、継続的な営業損失の発生等が生じ、GC注記を付される企業も増加している。21年3月期でさらに急増すれば、信用不安が発生するおそれもある。
 こうした背景もあり、内閣府令27号により財規や開示府令等が、法務省令22号により会社計算規則が改正された。以下では(1)財務諸表等規則、(2)財務諸表等規則ガイドライン、(3)開示府令、(4)開示府令ガイドライン、の4本を取り上げる。


◆ 対応してもなお重要な不確実性あれば注記


 (1)及び(2)では、GC事象等がある場合も直ちに注記を要するのではなく、それらを解消または改善させるための対応をしてもなお重要な不確実性がある場合に、GC注記を行う。
 ただし、貸借対照表日後に当該重要な不確実性が認められなくなった場合は、注記が不要となる。当局では、この場合の期間について、「原則として、貸借対照表日後から監査報告書作成後、有価証券報告書等を実際に提出する日までに重要な不確実性が認められなくなったことで注記を修正する場合、監査人と再度協議することが必要になる」とコメントしている。
 具体的な注記事項は、以下の4点だ。

@ 当該事象又は状況が存在する旨及びその内容
A 当該事業又は状況を解消し、又は改善するための対応策
B 当該重要な不確実性が認められる旨及びその理由
C 当該重要な不確実性の影響を財務諸表に反映しているか否かの別

「重要な不確実性」の定義について、当局では、「継続企業の前提に関する重要な不確実性が認められる場合の注記を投資者へ適切に開示するという趣旨から、個々具体的な場合に応じて適切に解釈すべきものと考えられる。国際的な基準においても、個々具体的な場合に応じて様々なものが有り得ることから定義していない」としている。


◆ 旧GC注記事項は「事業等のリスク」等に記載

 

 (3)及び(4)により、旧規定によるGC注記で開示していた情報は、有価証券報告書の「事業等のリスク」及び「財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況」に記載することとされた。記載する場所が、「財務諸表における注記(監査対象)」から、「有価証券報告書における財務諸表以外の記載欄(監査対象外)」に移されたような形だ。これは、「新規定適用後は、経営者の対応策等を考慮して注記に至らないケースもある。投資家に対して、資金調達の困難性などリスク情報がきちんと開示されるのか」との懸念に対応し、投資家保護を図るためだ。「事業等のリスク」には、事業継続の前提に重要な疑義を生じさせるような事象又は状況その他提出会社の経営に重要な影響を及ぼす事象(重要事象等)が存在する場合には、その旨及びその内容を記載する。具体例は次の通り。


 売上高の著しい減少、継続的な営業損失の発生又は営業キャッシュ・フローのマイナス、重要な営業損失、計上損失又は当期純損失の計上、重要なマイナスの営業キャッシュ・フローの計上、債務超過、営業債務の返済の困難性、借入金の返済条項の不履行又は履行の困難性、社債等の償還の困難性、新たな資金調達の困難性、債務免除の要請、売却を予定している重要な資産の処分の困難性、配当優先株式に対する配当の遅延又は中止など(一部抜粋)
 
 一方、「財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー状況」には、「事業等のリスク」に重要事象等が存在する旨及びその内容を記載した場合に、当該重要事象等の分析・検討内容及び当該重要事象等を解消または改善するための対応策を具体的に記載する(実施時期、実現可能性の程度、金額等を含む)。具体例は次の通り。

◎資産の処分に関する計画(有価証券、固定資産等の売却等)
◎資金調達の計画(新規の借入れ又は借換え、新株又は新株予約権の発行、社債の発行、短期借入金の当座貸越枠の設定等)
◎債務免除の計画(借入金の返済期日の延長、返済条件の変更等)
◎その他(人員の削減等による人件費の削減、役員報酬の削減、配当の支払いの減額等)


◆ 注記する場合も記載が必要なことに留意を


 これらの記載は、GC注記を行っている・いないにかかわらず必要とされるので、留意が必要だ。また、記載の具体例が挙げられているが、実際の記載はこれらに限るものではない。当局では、「例示にとらわれることなく、積極的な開示が望まれる」として、留意を促している。
 なお、「事業等のリスク」等における開示は、監査の対象外となる。このため、「監査人のチェック機能が働かず、適切な開示が行われないのではないか」との意見もあった。当局では、この指摘に対して、「監査人は、継続企業の前提に関する重要な不確実性が認められないかどうかを判断するため、「事業等のリスク」、「財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの分析」等の内容も含めて、総合的に検討するものと考えられる」との考えを示している。




(以上参考;週刊「経営財務」第2916号)
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