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M&Aニュース

                                               2009年7月27日
 



   タックスヘイブン子会社から受ける配当等は
    開始事業年度に注意
  

    4月1日より前に開始した事業年度から生じた配当等は益金算入に

    配当等を益金算入した場合は経過措置により間接外税控除を適用
  



 
 平成21年度税制改正では、内国法人が外国子会社から受け取る配当等の95%が益金不算入となる外国子会社配当益金不算入制度が創設されているが、これに伴い改正されているタックスヘイブン対策税制との関係についても確認しておきたい。
 タックスヘイブン対策税制は、軽課税国・地域に所在する実体のない特定外国子会社等の所得を内国法人の所得とみなして、内国法人の所得に合算して課税する制度であるが、この特定外国子会社等からの配当等については、非軽課税国・地域に所在する子会社からの配当等とは異なり、経過措置が設けられている。
 非軽課税国・地域から受け取る配当等については、内国法人の、平成21年4月1日以後に開始している事業年度に受け取るのであれば、95%益金不算入となる。
 これに対し、特定外国子会社等から受け取る配当等については、経過措置により、その特定外国子会社等から受け取った配当等の生じた事業年度が、平成21年4月1日より前に開始されているのであれば、益金算入となり、間接外国税額控除の適用を受けることとなる。
 また、この経過措置では、タックスヘイブン対策税制が適用除外となるならないは問題とされておらず、、特定外国子会社等に該当するのであれば、経過措置の適用を受けることと成る点には注意が必要だ。
 例えば、アジアの国や地域であれば、中国、香港、シンガポール、台湾等の特定外国子会社等から受ける配当等で、平成21年4月1日より前に開始した事業年度に生じたものについては、内国法人の平成21年4月1日以後に開始している事業年度において受け取る場合であっても、益金算入として取り扱われ、間接外国税額控除の適用を受けることとなるので、くれぐれも注意されたい。


◆ 特定外国子会社等からの配当等には経過措置


 外国子会社配当益金不算入制度は、内国法人が外国子会社に対する特殊割合25%以上で保有期間が6月以上である場合、その外国子会社から受け取る配当等の95%は益金不算入となる制度で、外国子会社の利益を国内に環流することを期待して改正された制度だ。
 この制度に関連して、タックスヘイブン対策税制では、これまで特定外国子会社等の適用対象留保金額から控除されていた配当等について、控除されないこととされた。これは、これまで益金算入とされてきた外国子会社からの配当等が益金不算入とされたことで、二重課税を受けなくなったからだ。その上で、特定外国子会社等からの配当等については、非軽課税国・地域の子会社からの配当等であれば経費として控除する5%分についても控除することなく、100%益金不算入として取り扱われる。
 ただし、特定外国子会社等から受け取る配当等の益規不算入には、経過措置が設けられており、内国法人が特定外国子会社等から受け取る配当等で、制度の施行日である平成21年4月1日前に開始した事業年度に係るものに限っては、外国子会社配当益金不算入制度の規定は適用しないとされている。
 つまり、配当等を支払う外国子会社が、非軽課税国・地域に所在するのであれば、配当等を受け取る内国法人の開始事業年度が平成21年4月1日以降であれば、その外国子会社から受け取る配当等は益金不算入となるのに対し、軽課税国・地域に所在する特定外国子会社等から配当等を受け取る場合には、経過措置により内国法人の開始事業年度が平成21年4月1日以降であっても、その特定外国子会社等から受け取る配当等の生じた事業年度の開始が平成21年4月1日より前であると、その配当等は益金に参入されるということだ。


◆ 特定外国子会社等の事業年度の開始時期が重要に


 例えば、3月決算の内国法人の場合、平成21年4月1日に開始した事業年度において、非軽課税国・地域に所在する外国法人から受け取る配当等については、95%益金不算入となる。
 しかしながら、同じ3月決算の内国法人であっても、軽課税国・地域に所在する特定外国子会社等から配当等を受け取る場合には、その配当等が生じた事業年度が、平成21年4月1日より前に開始されているのか否かが問題であり、仮に前であるならば、経過措置により、益金不算入制度が適用されない。
 特定外国子会社等から受け取る配当等が益金不算入となるのは、平成21年4月1日以後に開始した事業年度から生じた配当等からとされる。


◆ 適用除外であるか否かは問われず


 さらに気を付けたいのは、この経過措置において、特定外国子会社等については、タックスヘイブン対策税制の適用除外要件を満たしているか、否かによって区別されていないということだ。
 タックスヘイブン対策税制では、制度の適用を受け、内国法人に課税対象金額を合算するに当たり、仮に特定外国子会社等に該当する場合であっても、「事業基準」「実体基準」「管理支配基準」「所在地国基準又は非関連者基準」の適用除外要件をすべて満たせば、合算税制の適用を受けることはない。
 しかしながら、この経過措置では、特定外国子会社等について、この適用除外要件を満たしている・いないの区別をしていない。言い換えれば、タックスヘイブン対策税制の適用を受ける・受けないにかかわらず、特定外国子会社等に該当するのであれば、平成21年4月1日より前に開始した事業年度に生じた配当等を内国法人が受け取る場合には、益金算入の対象となってしまうということだ。l


◆ 経過措置により間接外国税額控除を適用


 この経過年を規定している改正法附則44条5項では、特定外国子会社等で平成21年4月1日より前に開始した事業年度から生じた配当等については、その特定外国子会社等の所得に対して課される外国法人税の額のうち、その配当等の額に係るものについて、間接外国税額控除制度を適用するとされている。
 外国子会社配当益金不算入制度においては、外国子会社から受ける配当等の額を課税標準として課される外国法人税の額は外国税額控除の対象外とされている。ただし、この経過措置により課税される配当等の額を課税標準として課される外国法人税については、外国税額控除の対象となる。
 よって、内国法人が平成21年4月1日以後に開始した事業年度において、平成21年4月1日より前に開始した特定外国子会社等の事業年度から生じた配当を受け取る場合には、その特定外国子会社等がタックスヘイブン対策税制の適用控除要件を満たしているか否かにかかわらず、内国法人は、その配当等を益金算入し、間接外国税額控除により、二重課税の調整を行うこととなる。

 たとえば、3月決算の内国法人が、中国、香港、シンガポール、台湾等の特定外国子会社等から、平成21年4月1日より前に開始した事業年度から生じた配当等をこの6月に受け取るケースでは、この経過措置の対象となり、受け取った配当等については益金に算入し、間接外国税額控除制度の適用を受けることとなる。


◆ 間接外税控除が認められない場合も


 実務の上では、この経過措置の適用を受ける特定外国子会社等からの配当等を受け取った場合、誤って益金不算入として処理し、間接外国税額控除の適用を受けるための別表の添付を失念するケースも想定される。
 税務調査で指摘を受けるのは、申告後、ある程度の時間が経過してからであることを考えれば誤って特定外国子会社等からの配当等を益金不算入とした場合には、調査において増額更生を受け、別表等の添付要件を満たしていないことから、間接外国税額控除の適用が認められない可能性もある。
 繰り返しになるが、タックスヘイブン対策税制の適用除外要件を満たしている特定外国子会社等であっても、この経過措置が適用されることとなるので、特定外国子会社等で平成21年4月1日より前に開始した事業年度から生じた配当等を受け取る場合には、益金算入となり、間接外国税額控除の適用を受けることを再確認しておきたい。

 なお、会計においては、特定外国子会社等から受け取る配当等が、平成21年4月1日より前に開始した事業年度から生じている場合には、繰延税金負債の計上が必要となるので、その点においても注意する必要がある。












(以上参考;週刊「税務通信」第3071号)
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