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                                               2007年7月02日
 


19年度改正法令 現物出資等による資本金等の額の規定を整備

 資本金等の増加額は出資財産の時価であることを計算上も明確化

 

平成19年度の税制改正では、法人税法施行令に置かれた「資本金等の額」の計算規定について一部改正が行われ、現物出資により増加する資本金等の額は「出資財産の価額(時価)から資本金の額を減算した金額」とされた(改正法令8@一)。
 現物出資については、会社法で、会社の資本金の額は、設立または株式の発行に際して株主となる者が会社に対してその会社に対して払込み又は給付をした財産の額(時価)とされたため、法人税法上も、既に平成18年度の改正で「資本の部」を整備する際に、対応が図られていたところであるが、上記の改正は、その点を計算規定の上でも明確にするために行われたものだ。

現物出資による資本金等の額の増加を計算規定上も明確化

具体的な改正内容は、【表】に掲げたとおりであるが、法人が新株発行に際して、株主となる者から金銭債権等の給付を受けた場合、その法人の資本金等の額は、給付をされた金銭債権等の時価だけ増加することになるのは、19年度の改正前から変わりない。
 例えば、額面10,000万円、時価2.000万円の金銭債権が出資されたのであれば、増加する資本金等の額は金銭債権の時価2,000万円となるのであるが、改正前の施行令第8条第1項第1号の金額は、「給付を受けた金銭以外の資産の価額その他対価の額に相当する金額のうち、資本金として計上しなかった金額」と「うち書き」されていたため、例えば、会計上、額面額10,000万円を資本金に計上した場合には、資本金に計上しなかった金額はないということになり、資本金等の額の増加額2,000万円を導く計算規定としては疑義が生じてしまう。
 もっとも、前述のとおり、現物出資により増加する資本金等の額は時価であることは既に確認されているため、実務上は、このケースで資本金に10,000万円を計上したのであれば、申告時の別表五(一)の資本金等の額の明細には、マイナス8,000万円を記載することになるのであるが、【表】に掲げた19年度の改正は、この計算を法令の規定上も明確化する趣旨であるとのことだ。
 すなわち、このケースでいえば、(給付を受けた金銭以外資産の価額その他対価の額に相当する額=金銭債権の時価)−(その発行により増加した資本金の額)という計算を行うので、2,000万円−10,000万円=△8,000万円が、法人税法施行令第8条第1項第1号の金額ということになる。


昨年度改正で税務上DESは評価額説によることを確認済みだが          

ところで、金銭債権の現物出資の活用ということでは、DES(デット・エクイティ・スワップ)があるが、DESによって債務者が債務を資本に振り替える金額については、従来から「券面額説」と「評価額説」とがあり、税務上は、時価、すなわち、評価額説によることが、既に平成18年度の税制改正で確認されている。
 したがって、上記の例で、金銭債権の出資がDESであったとすれば、債務者が資本に振り替えた金額は、金銭債権の時価である2,000万円で、金銭債権の額面10,000万円との差額の8,000万円については、「債務消滅益」ということとなる。
 この点についても、今回の改正を待つまでもなく、会計上、たとえ券面額説に立って、資本金に10,000万円計上したとしても、DESにより増加する資本金等の額は2,000万円となることに変わりはないことになる。
 今回の改正の趣旨は、あくまでも、現物出資一般における資本金等の額の計算規定の整備であり、特段に券面額説によるDESへの対応を意識して行われたものではないとのことであるが、結果的には、「DESの税務上の処理は評価額説による」ことをより明確化することにつながったともいえよう。

【表】 19年度改正による法人税法施行令第8条第1項第1号の新旧対照表

式(出資を含む。以下第11号までにおいて同じ。)の発行又は自己の株式の譲渡をした場合(次に掲げる場合を除く。)に払い込まれた金銭の額及び給付を受けた金銭以外の資産の価額その他の対価の額に相当する金額からその発行により増加した資本金の額又は出資金の額(法人に設立による株式の発行にあっては、その設立の時における資本金の額又は出資金の額)を減算した金額 株式(出資を含む。以下第11号までにおいて同じ。)の発行又は自己の株式の譲渡をした場合(次に掲げる場合を除く。)に払い込まれた金銭の額及び給付を受けた金銭以外の資産の価額その他の対価の額に相当する金額のうち、資本金又は出資金として計上しなかった金額

(以上参考;週刊「税務通信」第2973号)
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