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M&Aニュース

                                               2007年9月10日
 


会社法・開始惠法人税法令による自己株式改正が相続税評価にも波及

標本会社の内容・業績に加え自己株式の状況等で評価額高くなる場合も類似業種比準価額方式による非上場株式の評価シミュレーション

 19年分の類似業種比準価額計算上の業種目・株価等をみると、多くの業種が18年分と比べて低めになっているのに対し、株価と1株当たり配当金額・利益金額・純資産価額が大きくなっている業種目がある。この要因には、上場会社の異動や業績の変動など様々なものが考えられるが、その中でも注目されるのが、株価表の算定の基となっている標本上場会社に自己株式があるなどして株価が高くなっているというものだ。
 これは、評価会社に自己株式がない場合でも、類似業種に自己株式の影響があって株価等が高くなっていれば相続税評価額が高くなることにつながる。類似業種比準方式で評価する以上、改正法人税法にとそれに伴う財産評価基本通達の取扱いからはやむをえないところだが、今後は、類似業種の上場会社の業績だけでなく、自己株式の取得や保有・消却等の状況と株価との関連についても留意して株価表をみる必要があるといえる。


自己株式取得による株価、配当等の影響は類似業種評価にも

 上場会社では、株価の維持や株主配当の増額などのために自己株式を取得・保有するケースがある。自己株式の取得等が市場価格に反映され株価が高くなることにもなるわけだが、こうした場合、上場会社によって算定される類似業種比準価額計算上の株価も高くなることになる。また、自己株式の取得によって資本金等の額や発行済株式数が少なくなるため、類似業種比準価額計算上の1株当たりの配当金額などが大きくなることにもつながっていく。
 したがって、類似業種比準価額方式による株式評価では、比準する業種目に属する上場会社が多額の自己株式を保有するなどの要因で株価等が高くなっている場合には、評価額の計算にも影響が生じることになる。

評価通達も法人税改正に対応して自己株式の取扱いを整備

 法人税法改正に伴う財産評価基本通達の改正でも、自己株式がある場合の取扱いが整備された。類似業種の株価及び各比準要素の計算については、「資本金」ではなく「資本金等の額」によって1株当たりの資本金等の額を50円とした場合の株式数を計算すること、自己株式を保有している場合には、取得資本金額を控除した後の資本金等の額によって50円換算を行い、発行済株式数も自己株式の数を控除することになる。株価を評価する会社についても、自己株式があれば、その分資本金等の額が小さくなり発行済株式数も減少することになるため、1株当たりの配当金額等は大きくなり、評価額が高く計算されるという場合も出てくるわけだ。


株価・各比準要素の金額と評価額との関係


 「類似業種比準価額計算上の業種目及び業種目別株価等」による評価を行う場合、比準する業種の株価や各要素の金額が高くなる場合には評価額にも変動が生じてくる。
 これを具体的に19年分株価表でみると、株価だけでなく、各比準要素B・C・Dの金額が18年分よりかなり大きくなっている自動車小売業では、18年12月と19年1月では次のようになっている。

【表1】
株価A 配当
金額B
利益
金額C
簿価
純資産
価額D
比準割合
18年分 283円
(18.12)
4.1円 32円 271円 0.46
19年分 3,041円
(19.1)
47.3円 264円 631円 0.06


この金額をベースにして類似業種比準価額方式による株価を計算してみると、例えば評価会社の配当金額を1円、利益金額20円、簿価純資産額60円とした場合、平成18年分株価表からは評価会社の株価は92.3円となる。これを19年分の株価表で計算すると141.7円と50%近く高くなってしまう。
 ただ、表からもわかるように、19年分の株価等は18年分と比べ、株価が10.7倍、配当11.5倍、利益8.2倍、簿価純資産価額2.3倍というように大きく増加している。評価額の方は92.3円から141.7円へと高く評価されることにはなるが、いきなり株価が何倍にもなるわけではない。比準割合による調整計算があるため、株価の著しい増加が直接に影響することにはならないということだ。しかし、類似業種の株価が高くなれば、当然評価額も高くなる。このような場合には、中分類の「自動車小売業」でなく、上位の業種目である大分類「小売業」で比準するという方法が考えられることになる。
 一方このケースでは、評価会社が自己株式を保有していて、配当金額が2円、利益金額30円、簿価純資産化gかう100円というように大きくなっているとすると、平成18年分で92.3円だった株価は2倍以上の225.6円。自己株式により資本金等の額と発行済株式数が小さくなるので高く算定されることになるわけだ。

類似業種の異動・業績に加え自己株式の状況でも株価は変動

 ただ【表1】と同様に平成19年分株価表での株価や配当等の金額が高くなっていても、逆に評価会社の株価が下がるような場合もある。
 評価会社の配当金額2円、利益金額30円、簿価純資産価額100円として単純に計算すると、【表2】のようなケースでは、平成18年分株価表からは183.4円だが、19年分で計算すると135.1円に下がる。
 この業種目の19年分株価は18年の3.4倍、配当2.1倍、利益5.3倍、簿価純資産価額3.8倍となっているが、【表1】の株価ほどは大きく変わっていないというケースだ。

【表2】
株価A 配当
金額B
利益
金額C
簿価
純資産
価額D
比準割合
18年分 312円
(18.12)
5.2円 26円 268円 0.84
19年分 1,073円
(19.1)
11.3円 138円 1,025円 0.18


 各比準要素の増加よりも株価の変動割合の方が大きい【表1】のケースは、評価会社の株式は高くなったが、逆の【表2】では評価額が下がる結果となる。類似業種比準割合による調整計算がされるためだ。
 株価が大きくなったからといって必ず評価会社の評価額も同じようにすべて上がるということではないわけで、株価が上がっても、同じような割合で配当等の金額が上がっていれば算定される評価額に大きな変動は生じない。配当等の金額は1年間を通じて固定されており、やはり、株価の増減が最大の要因になる。
 自己株式の保有が利益・配当の向上につながれば株価は高くなる。類似業種の株価や1株当たりの配当金額等の各比準要素の算定においても、19年分の株価表からは自己株式が考慮されて算定されていることから、業種によっては、自己株式の保有・消却などといった資本政策の影響が株価に現れる場合もあるので、今後はそうした点にも留意して株価表をみる必要がありそうだ。



(以上参考;週刊「税務通信」第2982号)
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