運営人:潟Gムアンドエーインタークロス
後援:税務研究会

M&Aニュース

                                               2010年06月23日
 





同一事業年度中に完全支配関係を有しなくなった
      場合の処理
           
 
       

     譲渡損益調達資産の繰延べ及び戻入れの両方を処理する方向

  

 平成22年10月1日以後に適用される譲渡損益調整資産の課税繰延べ制度(法法61の13)は、100%の完全支配関係にある法人に対する譲渡を前提としている。近年の企業経営を取り巻く環境では事業再編やM&Aが広がっており、法人の資本関係について、株主が頻繁に移動することも少なくないようだ。
 そこで、完全支配関係にある法人に対して譲渡損益調整資産を譲渡した同一事業年度中に、完全支配関係を有しなくなるケースが考えられる。その場合には損益の繰り延べ処理を行わなくても支障がないとみる向きもあるようだが、同一事業年度中においては何の処理も行わないのではなく、基本的に損益の繰延べ及び戻入れの両方の処理を行うこととなろう。


◆ 完全支配関係を有しなくなれば損益の戻入れ処理


 譲渡損益調整資産の課税繰延べ制度とは、内国法人(譲渡法人)が譲渡損益調整資産を完全支配関係のある他の内国法人(譲受法人)に譲渡した場合に、譲渡損益調整資産の譲渡利益額・譲渡損失額に対する課税を繰延べるもの。その後において資産の再譲渡や償却、評価換え、貸倒れ、除却等が行われた場合には譲渡利益額・譲渡損失額を戻入れる(益金算入・損金算入する)こととなる(法法61の13@A)。同制度は平成22年10月1日以後の取引から適用となる点はご承知のとおりだ。
 譲渡損益調整資産の損益の繰延べ制度では、完全支配関係にある内国法人間の取引を前提としている。しかし、同制度の適用を受けた譲渡法人が、譲渡損益調整資産に係る譲受法人との間に完全支配関係を有しなくなったときは、譲渡損益調整資産に係る譲渡利益額・譲渡損失額に相当する金額について、完全支配関係を有しなくなった日の属する事業年度の所得金額の計算上、益金の額または損金の額に算入する(法法61の13B)。つまり、譲渡法人は再譲渡や除却と同じように繰延べた損益の戻入れ処理を行うこととなる。


◆ 同一事業年度に譲渡と完全支配関係がなくなる場合は?


 完全支配関係のある法人間で譲渡損益調整資産の譲渡が行われ、別の事業年度に完全支配関係を有しなくなるケースは特に悩まないが、同一事業年度において完全支配関係にある法人間の譲渡が行われ、譲渡を行なった法人間で完全支配関係を有しなくなる場合には、譲渡損益調整資産の課税繰延べ制度の適用を受けない譲渡と同じ形となり、その間に行われた損益の繰延べと戻入れの処理は必要がないのではないかという見方もあるようだ。
 しかしながら、税法上においては「内国法人がその有する譲渡損益調整資産を他の内国法人(完全支配関係がある・・・・)に譲渡した場合には・・・」とする規定ぶりから、完全支配関係にある法人間の取引ごとに適用があるということだ(法法66の13@)。このため、完全支配関係にある法人間における譲渡損益調整資産に係る損益の繰延べは譲渡時に完全支配関係があれば適用されることとなり、譲渡利益額・譲渡損失額を繰延べることとなる。その後において、同制度の適用を受けた譲渡法人が譲受法人との間に完全支配関係を有しなくなった場合には前日の属する事業年度の所得金額の計算上、戻入れることとなる。
 したがって、同一事業年度において完全支配関係のある法人間の譲渡損益調整資産の譲渡及び、その法人間で完全支配関係を有しなくなった場合には、損益の繰延べ及び戻入れの両方の処理を行うこととなろう。例えば、譲渡損益調整資産の譲渡益が出る場合には、譲渡利益額について別表4で「減算・留保」の処理を行い、完全支配関係を有しなくなれば、同じ別表4で「加算・留保」の処理を基本的に行うことになる。同一事業年度末でみれば、同制度の適用を受けない譲渡の形になるからといって、損益の繰延べと戻入れの両方の処理を省略することにはならないようだ。
 なお、完全支配関係の判定に当たっては、自己株式や、発行済株式総数の5%に満たない従業員持株会及びストックオプションによる取得株式を除外している(法令4の2A一、ニ)。これらの理由で100%の完全支配関係が外れた場合には、平成22年度税制改正で創設されたグループ法人税制において完全支配関係があるものとみなされるので、あらためて確認しておきたい。






       (以上参考;週刊「税務通信」第3116号)
       (このコンテンツの使用に関し(株)税務研究会の許諾を受けています。)






Copyright (C) 1999- M&A Intercross Co.,Ltd , All rights reserved.
omo