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                                               2007年3月28日

三角合併等に対応して「包括否認規定」の改正も


  組織再編税制 タックスヘイブンのペーパーカンパニーを使った租税回避を規制   

 平成19年度税制改正では、会社法の合併等対価の柔軟化への対応として、組織再編税制の改正が行われるが、三角合併の解禁により、タックスヘイブンに所在するペーパーカンパニー等を介在させた新たな租税回避行為が行われることが懸念されるため、これを含め組織再編を利用した国際的な租税回避を防止する措置が盛り込まれている。
 また、組織再編税制には、平成13年度の導入時から、繰越欠損金や資産等の含み損を活用した租税回避を防止する観点から個別規定や、個別規定を形式的にクリアして、なお行われるおそれのある租税回避行為に対して「包括否認規定」が置かれているが、今回の改正では、三角合併解禁に併せて、包括否認規定の改正も盛り込まれている。


タックスヘイブンのペーパーカンパニーを介した租税回避行為を規制

 
(1) 適格合併等の範囲に関する特例(措法68の2の3)条文番号は改正法案による。以下同じ)
@ 企業グループ内(特定支配関係(50%超の資本関係)がある内国法人間)で行われる三角合併のうち、合併親法人株式等が「特定軽課税外国法人」の株式等である場合には、適格合併、適格分割、適格株式交換から除外する。
A 内国法人が保有する軽課税国の子法人(特定外国子法人:その内国法人と50%超の資本
関係を有する等一定の要件を満たす特定軽課税外国法人(外国子会社合算税制の対象))の株式等を軽課税国の親法人(特定外国親法人等:その内国法人と80%超の資本関係を有する一定の特定軽課税外国法人)に現物出資する場合には、その現物出資は適格現物出資としない。
(2) 特定の合併等が行われた場合の株主等の課税の特例(措法68の3)
 株主である法人が、適格合併等に該当しない合併等で、その対価として「特定軽課税外国法人」の株式等を交付される場合には、合併等により交付を受けた株式等の譲渡の特例(法法61の2A)は適用しない。すなわち、旧株について譲渡損益を計上する。
(3) 特殊関係株主等である内国法人に係る特定外国法人にかかる所得の課税の特定(措法66の9の6〜第66の9の9)
 内国法人(5株主グループによって発行済株式の総数の80%以上を保有されるものに限り、その内国法人の資産・負債のほとんどすべてを取得した他の内国法人を含む)とその株主の資本関係が、組織再編等によって、特定軽課税外国法人を介在することで、80%以上となった場合には、特定軽課税外国法人又はその外国子法人に留保した所得については、株主である内国法人の所得に合算して課税する。

 18年5月1日に施行された会社法に伴い、平成18年中の財産評価に係る取引相場のない株式評価については、「会社法の施行及び法人税法関係法令の改正に伴う取引相場のない株式の評価における経過的な算出方法等について(情報)」(資産評価企画官情報1号・18年7月7日)によって整理されている(2930号18年8月7日に原文)。

 今回の評価通達改正のあらましは、18年10月27日付けの財産評価基本通達の改正と、取引相場のない株式の評価明細書の様式・記載例の改正に対応したもので、19年1月1日以後の相続等に係る評価から適用されることになる(通達原文は2945・2946号、関連記事は2944号)。  改正のあらましでは、@奥行価格補正率等の画地調整率の改正、A国税局長の指定する株式の廃止、B取引相場のない株式等の評価の改正(法人税法上の同族関係者の範囲の改正等に伴う改正)、C取引相場のない株式等の評価の改正(類似業種批准方式の計算)、D取引相場のない株式等の評価の改正(純資産価額方式)、E取引相場のない株式等の評価の改正(会社類型の整備に伴う改正)について、評価通達の改正理由、適用にあたっての留意事項を説明している。


租税回避防止措置の施行は19年10月1日


  上記の国際的租税回避防止措置は、(1)Aのように、三角合併の解禁と直接関係のない規定も盛り込まれており、「特定軽課税外国法人」が介在するスキームを対象としている点に共通点がある。
 この「特定軽課税外国法人」は、「その本店又は主たる事務所の所在する国又は地域における課される税の負担が本邦における法人の所得に対して課される税の負担に比して著しく低いものとして政令で定める外国法人」と規定されており(措法68の2の3D一)、その範囲は政令に委任されているが、基本的にタックスヘイブンに置かれたペーパーカンパニーを指すようだ。
 また、これらの措置は、改正法の施行日である19年4月1日ではなく、10月1日以後に組織再編行為等から適用することとされており、タックスヘイブンの活用を予定している企業グループでは、例えその目的が租税回避でないとしても、施行までに新規定の適用関係を点検しておく必要があるだろう。
 なお、上記と同様の措置は凍結納税制度においても規定されており、株主に関する規定については、所得税についても導入されるが、所得税に関しては、非居住者株主が三角合併等で、外国親法人株式等の交付を受ける場合には、その外国親法人株式等の価額に相当する金額を「みなし譲渡所得」とする規定も盛り込まれている(措法37の14の2)。


三角合併対応で「合併法人」も包括否認規定の対象に


 ところで、もともと企業合併等は、欠損金や含み損を使った租税回避に使われる可能性があるため、組織再編税制の導入当初から、租税回避防止に関する個別規定が置かれている(法法57BE、法法62の7)。
 また、昨年度の税制改正においては、欠損法人を買収して利益の見込まれる事業をその法人に移転することによって課税所得を圧縮する租税回避行為を防止するため、「特定株主等によって支配された欠損等法人の欠損金の繰越しの不適用」(法法57の2)が創設されているところだ。
 19年度の税制改正では、これら既存の租税回避防止措置のうち、13年度に導入された、いわゆる「包括否認規定」について、三角合併解禁に対応した見直しがなされる(法法132の2)。
 「包括否認規定」とは、組織再編に係る法人の行為や計算をそのまま容認してしまった場合に、「法人税の負担を不当に減少させる結果となると認められるとき」には、税務署長は、更正等に際して、法人の行為・計算に関わらず、課税標準や法人税額を計算できるというもので、いわば、個別規定の網をかいくぐって行われるような租税回避行為を包括して否認する規定だ。
 現行法では、包括否認規定が適用されるのは、組織再編の当事者である「一方の法人若しくは他方の法人」とされているが、今回の改正では、これに「合併等により交付された株式を発行した法人」が加えられている。
 つまり、三角合併の場合、合併法人が新たに法画否認規定の対象とされることになるので念頭においておきたい。


(以上参考;週刊「税務通信」第2958号)
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