2007年6月04日
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関連当事者注記
会社法の注記除外規定にどう対応したのか
3月期の決算実務が終盤に入った現在、「関連当事者との取引に関する注記」の検討に時間を要したという声が聞かれる。
会社法上求められる注記事項のひとつに「関連当事者との取引に関する注記」がある。関連当事者との間の取引で重要なものがある場合にその内容や金額などを個別注記表において開示するものだ。計算関係の規定は、会社法の施行に合わせ適用が始まっているため、3月期決算会社にあっては、5月期以降の決算会社の動向なども見ながら対応を進めることが可能であった。しかし、関連当事者注記に関しては、経過措置により、平成19年2月期決算から記載される事項であり、実質的には、適用が始まってから間もない状況にある。
会社法では子会社との取引も開示対象
関連当事者注記は、証券取引法上も注記が求められている事項であるが、証取法の取扱いと大きく異なる点がある。それは、会社法では個別のベースのみの規定であり、連結ベースでの注記は求められていないことだ。そのため、証取法上は連結相殺消去される連結子会社との取引については注記不要とされているものの(連結財規第15条の4第2項)、会社法では、そうした取引についても開示対象となる。実務負担が大きくなるのではないかと懸念されていた点だ。
「一般の取引と同様であることが明白な取引」の判断に迷うケースも
こうした実務負担等を考慮して、注記を省略できる取引として、「当該取引に係る条件つき市場価格その他当該取引に係る公正な価格を勘案して一般の取引の条件と同様のものを決定していることが明白な場合における当該取引」など3つの要件を規定している(会社計算規則第140条第2項)。
法務省によると、「会社計算規則における開示は、感覚的にいえば、通常であるものを開示するのではなく、異常なものを開示するという趣旨の規定となっている」というものであり、連結子会社との取引に関して言えば、開示対象となる取引はそれほど多くはないものとみられる。
しかし「取引条件が一般の取引と同様であることが明白な取引」の判断が難しいケースも多く、検討に時間を要した会社もあったようだ。また、取引額の算定に関しても、判断に迷うケースがある。例えばCMS取引(グループ全体で資金運用の管理を行うもの)を行っているケース。金額的にも大きく、日常的に資金を動かしているため、金額の算定に際しても、期中平均の残高とするか否かなどに検討が必要となるなど、判断に苦慮したケースもあったようだ。
<開示事例>小売業A社(19年2月期)
親会社との取引であるが、会社法と証取法では注記を行った取引にこれだけの差が生じている。
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取引内容 |
取引金額 |
科目 |
期末残高 |
会社法 |
商品の仕入高 |
11,364 |
未収入金 |
175 |
店舗の賃借料 |
985 |
差入保証金 |
955 |
EDP関連費用等 |
422 |
買掛金 |
2,190 |
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未払金 |
656 |
未払費用 |
26 |
長期未払金 |
136 |
証取法 |
商品の仕入高 |
11,364 |
買掛金 |
2,190 |
(以上参考;週刊「経営財務」第2820
号)
(このコンテンツの使用に関し(株)税務研究会の許諾を受けています。)
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