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                                               2007年7月27日
 


子会社支援にかかる法規通9-4-2の判定で注目判決

 東京地裁 課税処分の適法性を認める判断を示す

 食品の生産販売を主な生業とする企業が行った子会社支援の可否を主要な争点とする訴訟で、東京地裁は課税処分を適法とする判断を示した(平成18年(行ウ)第144号 平成19年6月12日判決言渡)。
 これは、子会社の倒産防止のために貸付金及び売掛金の債権を放棄して、子会社支援損として損金の額に算入したものが、子会社に対する寄附金に該当するとして受けた更正処分を不服として提起されたもの。
 東京地裁民事第2部の大門匡裁判長は、債権放棄につちえ法人税基本通達9-4-2の要件に該当するか否かの検討を行い、問題となった債権放棄は子会社の倒産防止のためにやむを得ず行われたものではないと判断、課税処分を適法とする判決を行った。
 なお、この訴訟は1審で確定している。

 子会社の経営状況を検討

  判決では、新会社が子会社に対する支援として行った債権の株式化(デット・エクイティ・スワップ)が、子会社の倒産防止のためにやむを得ず行われたものであるか、法基通9-4-2「子会社等を債権する場合の無利息貸付け等」に従い検討されている。特の子会社の経営状況について「金融機関の対応」、「親会社による子会社のキャッシュ・フロー分析」、「子会社の再建に対する考え方」、「子会社の中国工場への新たな投資」の4点から検討が行われている。

金融機関の対応について

 まず、「金融機関の対応」については、各金融機関とも子会社に対する貸付金債権を被担保債権とする担保権を実行しておらず、また、実行しようとしたこともなかったことから、各金融機関は、子会社からの返済の見込みはあると判断していたことをうかがわせるものとし、子会社が資金繰りに窮する状態にあったとまでは認め難いとした・

親会社の判断について

   また、親会社は、子会社のキャッシュ・フローの分析において、親会社が子会社の営業権買取等の支援を講じれば、子会社は金融機関からの借入金の支払も可能であるとし、累積欠損金も早い時期に解消できると結論付けていた。この事から、新会社は子会社が自力で再建する可能性が十分にあると判断していたことが認められるとした。

子会社自身の判断について

さらに、子会社は、親会社に対して経営支援を要請していたものの、具体的な支援策には言及していなかったことから、子会社の経営陣が緊急に親会社からの支援を受ける必要があるとの認識を有していたとは認められないとした。また、子会社は、親会社からの借入金の返済の猶予及び買掛金支払の繰延を依頼していたものの、債権放棄は依頼していないため、親会社からの借入金については返済の猶予を受ければ足り、債権放棄を受ける必要まではないと認識していたと判断された。

中国工場への投資について

 子会社は、親会社の支援をうけた時期において、中国にあった工場を移転させ、新たな設備投資を検討していたが、判決ではこの点につき、子会社は中国工場の移転という新たな投資をしていたと認められると判断している。
 そしてこの点からすれば、子会社が決算書上は債務超過の状態にあったことを考慮しても、倒産の危機にあったとまで認められることはできず、親会社の債権放棄は、子会社のためやむを得ず行われたものということはできないと判断されている。

経営判断による債権法規に厳しい判断

 この事案では債権放棄の寄附金該当性が問題になっているが、判決では寄附金について、法文上寄附金に該当するものについてそれが寄附金に該当しないとする評価は、あくまでも客観的基準に基づき行われる必要があるのであって経営判断を強調する親会社の主張はその前提からして理由がないといわざるを得ないとして、経営判断による債権放棄について厳しい判断が示されている。
 その上で、問題とされた債権放棄について、外形的には子会社の倒産を防止するという目的を有していたといえるものの、むしろ、親会社自身の投資を拡大することを主な目的をして行われたと認められるとし、債権放棄が寄附金に該当するとした課税処分を適法とする判断を示し、納税者の訴えを退けている。


(以上参考;週刊「税務通信」第2975号)
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