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M&Aニュース

                                               2007年8月03日
 


日蘭条約にかかる匿名組合契約の分配金訴訟 
国側の控訴棄却

東京高裁 地裁と同旨の判断を示し納税者を支持

    匿名組合契約に基づく分配金が、日蘭租税条約の「その他取得条項」に該当し、日本に課税権がないことを争点とした訴訟で、東京高裁は、1審に引き続き、オランダ企業の主張を支持し、課税当局の控訴を棄却する判決を行った。(平成19年6月28日判決言渡、平成17年(行コ)第278号)。
 事案は、1審の東京地裁で、問題となった契約の大きな目的が税負担の回避にあるとしても、契約は匿名組合契約と認めざるを得ないことや、匿名組合からの分配金は日蘭租税条約の「その他所得」に該当することを理由に、納税者の主張が認められており、課税当局が控訴していた。
 東京高裁第14民事部の西田美昭裁判長は、控訴審の判決で、問題になった契約の匿名組合該当性、また、分配金が日蘭租税条約に規定される「その他所得」条項の該当性についても、地裁の判断と同旨であるとして、課税当局の控訴を棄却し、地裁、高裁ともに納税者を支持する判断が示されている。

匿名組合の該当性が争点に

 この事実では、オランダにある会社と日本にある会社の契約が、商法に規定される匿名組合なのか、民法で規定される任意組合かが争点となった。
 この契約は匿名組合契約であり、組合契約による分配金は、日蘭租税条約23条に規定する「一方の居住者の所得で前諸条に明文の規定がないもの」となり、日本に課税権がないとする納税者に対し、課税当局は、「国内源泉所得」であり、日蘭租税条約の8条1項に規定する「企業の利得」に当たるとして更正処分を行い、訴訟に至っていた。

一審では納税者を支持

 一審の東京地裁は、匿名組合を締結する主な目的が税負担を回避することにあるとしても、契約は匿名組合契約であると認めざるを得ないとし、また、日蘭租税条約においては匿名組合分配金に関する明文の規定はなく、日蘭租税条約のいわゆる「その他所得」条項に該当するため、日本には課税権がないとしt、納税者を支持する判断を示した。

高裁も一審と同様の判断

 今般の、東京高裁の判決でも、問題になった契約の匿名組合該当性、また、分配金の日蘭租税条約に規定する「その他所得」条項の該当性についても、地裁と同旨であるとの判断を示し、これを引用するとしている。

非典型的匿名組合とする主張を否定

  控訴審で課税当局は、仮に問題とされている組合が匿名組合の一種であると性質決定されたとしても、非典型型的匿名組合契約であり、オランダ企業は日本に恒久的施設を有するというべき、とする新たな主張を行っていた。
 判決では、これについて、日本の商法、民法などのその他日本の法律には、匿名組合、民法上の組合という制度を設けているが、業務執行型及び財産参加型非典型的匿名組合という制度に関する規定は存在しないことから、日本の商法、その他日本の法律に予定されていない非典型的匿名組合という制度を当事者が想定して契約を締結するということはありえないとした。

明文規定による規制を喚起

 また、租税回避スキームは租税条約の趣旨に反するとの課税当局の主張については、「一般論として、租税回避という目的が認定された場合には、その選択された手段、態様によっては、違法という認定がされることはありうるが、そのような目的自体、自由主義経済体制の下、企業又は個人の合理的な要求・欲求として是認される場合もある。」とし、税負担を回避するという目的それ自体は是認し得ないときもあろうが、税負担を回避するという目的から、問題となった匿名組合契約を組成するという方法を採用することが許されないとする法的根拠はないと言わざるを得ないとして、1審の判決と同様の判断を示している。
 その上で、課税当局の主張するような二重非課税の排除という目的は、匿名組合利益について源泉地国が課税できることを租税条約の明文において明らかにするなどの措置により解決することが可能であり、それが相当な事柄であるとした。
 1審に引き続き、課税当局にとって厳しい判断が示されており、課税当局の今後の動向を含めて注目される事案といえよう。


(以上参考;週刊「税務通信」第2976号)
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