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M&Aニュース |
取得の対価として1株未満の株式を交付した後の当該株式の買い取りでみなし配当課税も |
@ | まず、既存の株式について、全部取得条項を付するためには、株主総会の特別決議により会社の定款を変更する必要があるが、会社法では定款変更に反対する株主に対して、株式買取請求権が認められている。(会社法116@二) この段階では、会社が反対株主から株式を買い取った場合には、相対取引となるため、みなし配当と譲渡損益の計上が必要となる。 |
A | 次に全部取得条項付株式を発行した会社は株主総会の特別決議により全部取得条項付株主を取得することができるが、対価については、金銭以外の財産とすることもできる(会社法171)。 そして、会社は「取得日」において、全部取得条項付株式の全部を取得することになるが(会社法173)、この段階では、全部取得条項付株式の取得の対価として株主に交付されるのが株式のみであり、取得した株式と交付された株式が概ね同額である場合には、譲渡損益は繰り延べられることとされており(所法57の4B三、法法61の2M三)、みなし配当課税については適用除外となっている(所法25@四、法法24@四)。 したがって、規定上は、対価として欣然が交付された場合は取得株式と交付株式が概ね同額でない場合には、課税繰り延べが行われず、みなし配当と譲渡損益の計上が必要となるため、M&A等の実務ではそうならないように対応されているようだ。 |
B | また、全部取得条項付株式をM&Aで活用する場面においては、会社が全部取得条項付株式を取得する際に、その対価として1株未満の株式を交付し、その後、株主からの求めに応じる形で、その1株未満の株式を金銭で買い取ることが多いと言われている。 この場合には基本的には、みなし配当は生じず(所令61@九、法令23B九)、株主側は譲渡損益の計上のみを行うこととなろう。 |
1株未満の株式の買取りが株式交付か金銭交付かは実質判断が原則
しかし、このように各段階での課税関係を踏まえれば、全部取得条項付株式の取得に際しては、結局、みなし配当課税は生じることはないともとれるが、以上の取引を一団の取引としてみた場合には、全部取得条項付株式の取得に際して、なお金銭を交付したものと認定される虞はあり、そのことを懸念する向きもあるようだ。
この点、全部取得条項付株式の取得に際して、金銭が交付された場合であっても、その金銭が、取得の対価として株式を交付した場合に、1株未満の端数が生じたために、1株未満の株式の合計数に相当する数の株式を買い取った代金として交付されたものである場合には、株式交付をしたものとする旨の取扱いが、18年度の法令改正に対応して新設されており、参考になるだろう(現行法基通2−3−1)。
この取扱いを受けて、金銭交付が株式交付となれば、課税は繰り延べられるわけであるが、同通達のただし書きでは、「交付された金銭が、取得の状況その他の自由を総合的に勘案して実質的に株主等に対して支払う取得条項付株式の取得の対価であると認められるときは、取得の対価として金銭が交付されたものとして取り扱う」としている点に留意する必要がある。
1株未満株式の買い取りに際し、実質的に株式交付であるのか金銭交付であるのか、という点について判断があるとの取扱いは、上記の取得条項付株式等の取得時のほか、組織再編関連でも同様の取扱いが示されているところだ(基通1−4−2)。
これは、取得等の対価が株式のみである場合には、投資が継続しているとみうことができるのに対し、取得の対価に金銭等、株式以外の会社財産が含まれる場合には、特定の株主に対して恣意的に利益を移転する可能性もあるため、取扱いとして定められたものと考えられる。 したがって、全部取得条項付株式の取得であれば、すべからくみなし配当が生じることはないとまではいえないのであるから、それぞれの事案で個別の判断が必要だろう。
(以上参考;週刊「税務通信」第2978号)
(このコンテンツの使用に関し(株)税務研究会の許諾を受けています。)
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