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M&Aニュース

                                               2007年8月29日
 


会社再建で活用する全部取得株式の課税関係

税務上は増資分だけ資本金等の額が膨らむことに

 企業買収において、全部取得条項付株式を使ってTOBに反対する株主の持分を取得する場合の株主側の課税関係については、個別判断を要する部分があることは、既にご紹介したところだ。
 一方、全部取得条項付株式の取得は、旧商法における「100%減資」の手続きに代わるものとして会社法に盛り込まれた経緯があり、もともと会社再建での活用を想定したものと言われている。
 こうしたケースでの発行会社側の課税関係については、既に平成18年度の税制改正において、税務上の資本の部の整備によって手当てがなされており、全部取得条項付株式を本来的な目的で使った場合には、増資分だけ会社の「資本金等の額」が膨らむ結果になる点を確認しておきたい。


「100%減資」に代わる手続きとして会社法に盛り込まれた
全部取得条項付株式


旧商法下では、民事再生法等による会社再建を図る場面において、まず100%減資を行い、超過債務を減資差益で圧縮した上で、同時に第三者割当増資を行って、再建の原資とするスキームが活用されていた。
 この場合、再建前の株主については、「強制消却」の手続きによって、株主責任をとって”退場”してもらい、新株主には、金融機関や取引先等が、第三者割当増資を引き受ける形をとって再建のスポンサーとなっていた。
 しかし、周知のとおり、会社法では、株式の消却は、自己株式の消却に限ることとされ、資本金の減少手続から株式消却が除かれたため、法律上、「強制消却」の手続きはなくなってしまった。
 全部取得条項付株式の手続きは、このような従来の100%原資の手続きに変わるものとして、会社法に盛り込まれた経緯がある。

合理的な再建計画等に基づくものである場合には資本等取引・増資分だけ
資本金等の額が増える結果に


100%減資に代えて、全部取得条項付株式を活用した会社再建のスキームの概略は、@発行済みの普通株式に全部取得条項を付加して取得する、A自己株式を消却する、B資本金の減少手続きを行う(0円まで)、C第三者割当増資を行い資本金を増額する、というものだ。
 一方、この流れに応じた税務上の取扱いは、以下のとおりとなろう。
 まず、@の全部取得条項付株式の取得は、自己株式の取得であるので、原則的には、取得対価について、みなし配当の計算を行った上で、資本金等の額を減額することになるが(法令8@二十、九@八)、このスキームでは、全部取得条項付株式を対価なし(無償)で取得するため、みなし配当も資本金等の額から減額すべき金額もないことから、資本金等の額は(利益積立金額も)不変ということになる。
 次にAの自己株式の消却であるが、税務上は、取得時にその帳簿価額について資本金等の額を減額するため、実際の消却時にはなんら処理を行わない。したがって、資本金等の額は不変ということになる。
 また、Bの資本金の減少手続は、会社法上、株式の消却を行っただけでは、株数が減るだけで資本金は減少しないため、行う必要があるが、この場合、税務上は、減額された資本金は、資本金等の額のうち、資本金を除いた部分の金額(従前の資本積立金額)を増加することになるので、資本金等の額の「内訳」だけの異動となり(法令8@十三)、資本金等の額全体は不変ということになる。
 C最後の第三者割当増資の場面では、税務上は、払込金額が資本金等の額の増加要因となる(法令八@本文、同@一)。
 以上のとおり、税務上は、第三者割当増資による資本注入の場面で、払込金額分だけ資本金等の額を増加させることになり、結果的には、旧商法下の100%減資と増資を組み合わせた企業再建策と同じ効果を得ることになる。
 なお、このスキームで、寄附金課税等の問題等損益が生じないのは、あくまでも合理的な再建計画等に基づくものであることが前提となる点も、従前の100%減資のスキームと同様であるので、併せて留意したい。


(以上参考;週刊「税務通信」第2980号)
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