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                                               2007年10月18日
 


東審 組合員の死亡脱退払戻金へのみなし配当課税を認める

納税者は裁決を不服として、訴訟を提起



  事業協同組合の組合員の死亡脱退に伴う払戻金について、その組合員の出資金の額を超える部分の金額がみなし配当に該当するか否かを争点とした審査請求事案で、東京国税不服審判所は、審査請求を棄却し、課税当局の更正処分を適用とする判断を示した。
 問題となったのは、中小企業等協同組合法に基づく事業協同組合の、組合員の死亡脱退に伴う出資持分の払戻金。
 課税当局は、払戻金のうち、その組合員の出資金の額を超える部分の金額は、いわゆる「みなし配当」に該当するとして、源泉徴収に係る所得税の納税告知処分及び不納付加算税の賦課決定処分を行った。
 これに対して、払戻金は所得税を課税せずに相続税のみを課税する相続財産として取り扱われるべきとして、処分の取消しが求められていた。
 審判所は問題となった払戻金につちえ、組合員が死亡によって組合から脱退した結果、出資持分の払戻金として支払われたものであり、所得税法25条に規定するみなし配当と認められるとして課税処分を適法とする判断を示し、組合による審査請求を棄却している。
 なお、この事案は、組合側が訴訟を提起して、判断の場を東京地裁に移しており、今後の動向が注目されている。


出資持分を超える払戻金が問題に


 この事案は、中小企業等協同組合法に基づく事業協同組合の、組合員の死亡脱退に伴う出資持分の払戻金について、組合員が出資した金額を超える部分が、所得税法25条に規定する配当の額とみなす金額、いわゆる「みなし配当」に該当するかが争点となっている。


当局はみなし配当として課税


 課税当局は、払戻金は組合員の出資に基づくものであり、死亡した組合員に帰属すると認められることから、所得税法25条に拠り、組合員に対して支払われる「みなし配当」であるとした。そして、組合員の死亡により出資持分の払戻請求権が一旦組合員に帰属し、その後に遺産として組合員の相続人に承継されて、相続人に組合員の出資持分相当の払戻金が支払われたものであるとして、みなし配当にかかる所得課税と、相続財産としての相続税が二重課税になることはないと主張した。


組合は払戻金を相続財産と主張

 これに対し、組合側は、組合員は死亡により組合を脱退していることから、払戻金は、所得税法9条1項15号に規定する「相続、遺贈又は個人からの贈与に取得するもの」であり、所得税が課されない所得であると主張し、相続税のみを課税する相続財産として取り扱うべきであると主張した。


法律の規定ぶりからみなし配当と認定


これらに対し、審判所は、死亡した組合員は中小企業等協同組合法20条1項の規定により、組合から脱退しており、支払われた払戻金は組合員の出資持分の払戻しとして認められるとした。
 裁決では、所得税法25条「みなし配当」の規定について、法人の株主等が、法人からの退社又は脱退により、出資持分の払戻しによる金銭その他の資産の交付を受けた場合に、その金銭の額及び金銭以外の資産の合計額が、その法人の資本等の金額のうち、その交付の基因となった株式に対応する部分の金額を超える部分の金額について、利益の配当、又は剰余金の分配の額とみなすものとした。
 そして、その趣旨からすると、問題となった払戻金はみなし配当に該当するため、課税当局の処分は適法であるとして、納税者の主張を退ける裁決を行っている。


判断の場は地裁へ


組合側はこの裁決を不服として、東京地裁に訴訟を提起し、判断を司法に委ねている。
 訴訟において、組合側は、払戻金が組合員の死亡後に確定すること、また相続税法基本通達3−32,3−33に照らしてみても、死亡した組合員が死亡後に支払を受ける事業協同組合の組合員持分額の取扱いについては、死亡退職金と同様に所得税を課さずに相続財産として取り扱うべきであると主張している。
 また、払戻金は余剰金的な性格は薄く、みなし配当というよりも生前の組合活動において貢献してきた代償としての死亡退職金の性格が強いとも主張している。
 さらに、審判所の課税根拠と考えられる過去の判例においても言及し、合資会社の無限責任社員が死亡退社した場合の出資持分払戻金のうち、出資金の額を超える部分はみなし配当に当たるとされた事例について、合資会社においては、事業年度のいつでも配当が可能であり、死亡退職した事業年度末における組合財産により払戻金が計算される事業組合とは、異にするものとの主張もされている。
 この事案は、みなし配当課税の該当性と同時に、所得課税と相続財産としての相続税の二重課税の問題も含んでおり、今後の地裁における判断の行方が注目される。



(以上参考;週刊「税務通信」第2987号)
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