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M&Aニュース

                                               2007年10月22日
 


M&Aにおける企業価値と資産価値


  企業価値評価論がいまブームであり、その背景にはM&Aブームがある。今年の会計研究学会でも企業価値をテーマとした研究発表が目立った。ただし、難解なことばと数式が氾濫し計算技術に偏りすぎ、会計よりも経済学やファイナンスに近くなっている。企業価値の評価の使い道は多様であり、M&Aに限らず、市場のグローバル化につれて、新たな計算技術の開発と高度化も重要性を増すからであろう。しかしながら、M&Aの会計においては、企業全体の価値評価よりも、個別資産負債の評価・測定の方がはるかに重要であろう。もう少し具体的にいえばこういうことになる。まずM&aの手続がデューディリジェンスから出発したときは、被買収企業が保有している資産負債(隠れた無形資産や偶発債務を含めて)をいかに価値評価すべきか、これこそ会計の任務である。また、株価に基づく公開企業の価値評価から出発したときは、その評価額をベースとした買収(取得)価額を被買収企業の個別資産負債にいかに割り振るか、その結果はM&A後の業績や財務内容に多大の影響を与えるという意味では、経営にとっても重要である。
 ところで、わが国の企業結合会計基準は、取得原価は原則として公正価値ベースで配分すべきであるとしつつ、簿価でも良いという簡便法を認めている。他方、国際財務報告基準IFRS3では、すべての資産負債について公正価値評価が求められ、簿価でもよいという例外規定が見当たらない。できるだけ客観的な市場価格を使い、それが得られないときは主観的な見積もり価額によることも認めるが、簿価よりも公正価値志向が挙売れるである。この彼我の違いはおそらく、持分プーリング法を廃止し、パーチェス法一本に絞ることによってコンバージェンスを達成してもなお残るギャップであろう、。誤解を避けるために付け加えれば、なにがなんでも公正価値評価がすぐれているとか、望ましいといっているのではない。むしろIFRSにも2つのジレンマがみられることを指摘したい。
 そもそも価値を評価するのは主観的な行為であり、絶対的かつ永続的な価値評価は望むべくもなく、それが正しいか誤っているかを判定するための究極的な基準もない。ところが、会計情報の信頼性には客観性が欲しい。これが第1のジレンマである。市場価格のある金融商品の公正価値評価は容易であり客観性もあるが、製造プラントについての公正価値評価にはいろいろな意味で疑問符が付く。上場株式は子供が保有していも経営者が保有しても市場価値に変わりはないが、製造プラントは子供には無価値である。経営者がその公正価値を甘く見積もれば償却費負担が増える。辛く見積もればのれんが増える。これは第2のジレンマである。これらのジレンマは、被買収企業全体と同時に、識別可能な資産負債の公正価値評価を進めるならば、完全に無理としても、ある程度の解消は可能であろう。





(以上参考;週刊「経営財務」第2839号)
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