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                                               2007年10月25日
 


最高裁 タックスヘイブン対策税制について注目判決



特定外国子会社等の欠損金、親会社の損金算入は不可

 タックスヘイブンに設立された外国関係会社、いわゆる特定外国子会社等の欠損金を日本にある親会社で損金算入することができるか否かを争点とした訴訟で、最高裁判所は、損金に算入することはできないとする判決を行った(平成19年9月28日判決 平成17(行ヒ)89号)。
 争点となっていたのは、タックスヘイブン対策税制で規定されている特定外国子会社等の益金の合算課税と同様に、欠損についても内国法人の所得計算に認められるか否か。
 この事案は一審の松山地裁で、納税者の主張が支持され特定外国子会社等の欠損を内国法人の損金の額に算入することが認められたが、二審の高松高裁では逆転で、内国法人の損金に算入することはできないとの判断が示されていた。
 今般、最高裁判所第二小法廷は、内国法人の所得を計算するに当たり、タックスヘイブン対策税制を規定している租税特別措置法66条の6では、特定外国子会社等に係る欠損の金額を内国法人の損金の額に算入することはできないとする判断を示し納税者の上告を棄却している。


特定外国子会社等の欠損の損金算入が争点


租税特別措置法66条の6第1項に想定されるタックスヘイブン対策税制は、いわゆる軽課税国に本店等を有する外国関係会社が、その発効済株式総数か出資総額の50%超を内国法人によって直接又は間接に保有されている場合には、その支配している内国法人が保有する株式数又は出資額に対応する特定外国子会社の留保金額を、その内国法人の各事業年度の所有の金額の計算上、益金の額に算入する規定。


一審は納税者、二審は課税当局を支持


事案において、納税者サイドは、パナマ共和国に設立した子会社に生じた欠損を、実質的には日本にある親会社に帰属するとして、日本の親会社の損金に算入して法人税等の申告をした。これに対し、課税当局は、損金の過大計上等を指摘、法人税に係る更正処分及び過少申告加算税の賦課決定処分を行い、訴訟に至っていた。
 一審の松山地裁では、タックスヘイブン対策税制を規定している租税特別措置法66条の6では、特定外国子会社等に係る欠損の金額を内国法人の損金の額に算入することができない旨を特に規定したと解することは相当でないとして、脳z制者の請求を支持。特定外国子会社等の欠損を親会社の損金に算入を認める判断を示し、課税当局の処分を取り消した。
 この判決に対し課税当局は控訴をし、それを受けた二審の高松高裁では、タックスヘイブン対策税制の立法趣旨は、外国法人を利用することによる税負担の不当な回避又は軽減を防止するとともに、課税執行面の安定性を確保しつつ税負担の実質的公平を図ることとした。そして、この立法趣旨に鑑みれば、特定外国子会社等に欠損が生じた場合には、それを内国法人の損金には算入することはできず、その特定外国子会社等の未処分所得算出において控除すべきものとして繰り越すことを強制しているものと解すべきとし、一審の判決を取り消す判断を示した。


タックスヘイブン対策税制は特別な規定


上告審で最高裁は、タックスヘイブン対策税制を規定している租税特別措置法66条の6第一項について、「内国法人が、法人の所得等に対する租税の負担がないか又は極端に低い国又は地域に子会社を設立して経済活動を行い、当該子会社に所得を留保することによって、我が国における租税の負担を回避しようとする事例が生ずるようになったことから、課税要件を明確化して課税執行面における安定性を確保しつつ、このような事例に対処して税負担の実質的な公平を図ることを目的として、一定の要件を満たす外国会社を特定外国子会社等と規定し、これが適用対象留保金額を有する場合に、その内国法人の有する株式等に対応するものとして算出された一定の金額を内国法人の所得の計算上益金の額に算入することとしたもの」とした。
 また、「特定外国子会社等に生じた欠損の金額は、法人税法22条3項により内国法人の損金の額に算入されないことは明らか」とした。
 さらに、措置法66条の6第2項2号の規定については、「特定外国子会社等の留保所得について内国法人の益金の額に算入すべきものとしたことの均衡等に配慮して、当該特定外国子会社等に生じた欠損の金額についてその未処分所得の金額の計算上5年間の繰越控除を認めることとしたものと解される」とした。
 さらに「そうすると、内国法人に係る特定外国子会社等に欠損が生じた場合には、こpれを翌事業年度以降の当該特定外国子会社等における未処分所得の金額の算定に当たり5年を限度として繰り越して控除することが認められているにとどまるものというべき」とした。
 そして、「当該特定外国子会社等の所得について、同条1項の規定により当該特定外国子会社等に係る内国法人に対し上記の益金算入がされる関係にあることをもって、当該内国法人の所得を計算するに当たり、上記の欠損の金額を損金の額に算入することができると解することはできないというべき」と結論付けている・
 なお、判決では、補足的意見として、タックスヘイブン対策税制を規定した措置法66上の6は、特定外国子会社等に関し、特定外国子会社等が外国の法人であることをも踏まえて特別の措置を定めた規定と解すべきであると考えるとしている。



(以上参考;週刊「税務通信」第2988号)
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