運営人:潟Gムアンドエーインタークロス
後援:税務研究会

M&Aニュース

                                               2007年11月01日
 


持分プーリング法の適用は3件のみ



ASBJ 調査報告を受け企業結合基準を改正へ

 企業会計基準委員会(ASBJ)は10月16日、「企業結合会計に関する調査報告〜EUによる同等性評価に関連する項目について〜」を公表した。来年予定されているEUにおける国際財務報告基準(IFRS)と日本基準の同等性評価に関連して、ASBJにおける今後の検討に利用するために調査を行ったもの。欧州証券規制当局委員会(CESR)から追加的開示(補正措置)を提案された企業結合に係る項目について、国際的な会計基準と日本基準の主な相違点とそれぞれの根拠、国内企業の企業結合会計基準の適用状況等に関する調査結果をまとめている。調査結果によると、差異のひとつである持分プーリング法に関して、その適用件数が3件に留まっていることなどが明らかとなっている。調査報告を受け、ASBJでは今後、企業結合会計基準の改正を行う。早ければ年内にも論点整理を公表し、平成20年末までに最終基準の公表を目指す方針だ。


持分プーリング法適用は限定的


 調査項目は、@持分プーリング法の取扱い、A株式を対価とする場合の対価の測定日、B負ののれんの会計処理、C少数株主持分の測定、D段階取得における会計処理、E外貨建のれんの換算方法、の6項目。事務局に設置された企業結合プロジェクト・チームが平成18年4月1日から平成19年7月2日までに提出された有価証券報告書(半期報告書)を対象に調査を行った。以下では、主な調査結果について見てみる。
 平成18年4月1日以後開始する事業年度から適用されている「企業結合に係る会計基準」では、限定的であるが持分プーリング法の採用を認めている。国際財務報告基準および米国基準との差異のひとつである。しかし、調査結果を見る限りでは、実務における適用は限定的なようだ。会計基準の適用五、116件の企業結合のうち、持分プーリング法が適用されたのは3件に留まっている。報告書では、「経済的実態が持分の結合でない企業結合に対して持分プーリング法が任意で適用される事態も、現時点では防止されている」と分析している。
 報告書では会社名は明らかにされていないが、確認されたところでは、@カーマ、ダイキ、ホーマック、Aライフフォート、ジップドラッグ、B東海パルプ、特殊製紙、の3件の企業結合が該当する。

◆持分プーリング法およびパーチェス法の適用件数
連結財務諸表 中間連結財務諸表
連結会計年度内の企業結合 後発事象としての企業結合 中間連結会計期間内の企業結合 後発事象としての企業結合
持分プーリング法
パーチェス法 96 10 113



株価を対価とする場合の対価の測定日は


 株式を対価とする場合の対価の測定日の取扱いについては国際財務報告基準が「取得日の時価」であるのに対し、日本基準では、「合意公表日前の合理的な期間における株価(株式公布日の株価がそれと大きく異ならない場合には、株式公布日の株価でも可)」である。
 プロジェクト・チームが市場関係者に対して行ったヒアリングによると、「通常の購入取引と同様に、合意公表日を測定日とすることが整合的である」として、現行の取扱いを支持する声が多かったようだ。


「負ののれん」の計上は21件


 国際的な会計基準と同様にパーチェス法を適用した場合であっても、「のれん」の取扱いが異なる。日本基準では、負ののれんの計上を認め、20年以内の期間で規則的に償却することとしている、負ののれんの計上状況をみると、パーチェス法を適した113件のうち21件で負ののれんを計上している。償却期間は表の通りである。5年を償却期間とする事例が多い。
 負ののれんの会計処理を見直すべきか否かについては、賛否両論あるようだが、現行の取扱いを支持する意見の理由としては、「負ののれん」が発生するのは主として将来の一定期間赤字が見込まれるような事業を取得した場合であるから、当該一定期間の赤字に対応させるような負ののれんを規則的に償却すべき」というものだ。
 今後、国際的な会計基準と同様に、発生した期の利益として処理することも検討されるもpのとみられるが、報告書では、今後の議論の論点として「正の値であるのれんの会計処理との対称性をどのように考えるか」、「負ののれん相当額の算定に関わる企業結合会計基準の他の要素の差異をどのように考えるか」などの点をあげている。

負ののれんの計上件数
連結財務諸表 中間連結財務諸表
連結会計年度内の企業結合 後発事象としての企業結合 中間連結会計期間内の企業結合
パーチェス法の適用件数 96 10 113
負ののれんが計上されている件数 17 21


負ののれんの償却期間
償却年数 件数
1年
3年
5年 13
8年
10年
15年
20年
記載なし
合計 23


全面時価評価法と部分時間評価法の選択適用廃止が検討議題に

 少数株主持分の測定で問題となるのは、子会社の資産および負債の評価方法として、部分時価評価法によった場合には、少数株主持分は当該資産および負債の時価評価差額を反映しないことになる点だ。連結決算上、全面時価評価法と部分時価評価法の選択適用を認めている取扱いを見直すことが検討課題となる(企業結合会計基準では、全面時価評価法のみ認められている)。
 なお、調査によると、全面時価評価法を採用している企業は3,326社あるのに対し、部分時価評価法を採用している企業は125社に留まっている。

全面時価評価法と部分時価評価法の適用件数
適用社数 割合
全面時価評価法 3,326社 96.4%
部分時価評価法 125社 3.6%
合計 3,451社 100.0%



(以上参考;週刊「経営財務」第2841号)
(このコンテンツの使用に関し(株)税務研究会の許諾を受けています。)





Copyright (C) 1999- M&A Intercross Co.,Ltd , All rights reserved.
omo