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                                               2007年11月22日
 


東京高裁 税率26%に適用したタックスヘイブン対策税制を支持  地裁に引き続き、外国法人税には該当しないと判断


 海外の子会社が26%の税率で外国に納めた税金が、外国法人税に該当するのか否かを主な争点とした訴訟で、東京高裁は、一審の東京地裁に引き続き課税当局の構成処分を支持し、納税者の控訴を棄却した(平成19年10月25日判決言渡 平成18年(行コ)第252号)。
 これはガーンジー島(グレート・ブリテン及び北部アイルランド連合王国領チャネル諸島ガーンジー)に本店を置く100%子会社が特定外国子会社等に当たるとして、日本国内にある親会社の益金の額に、その子会社の留保所得を算入すべきとした課税当局の更正処分を不服として提起されていた訴訟の控訴審。
 東京高裁第19民事部の青柳馨裁判長は、ガーンジー島で26%の税率で収められた税は外国法人税に該当せず、子会社の租税負担割合は零で25%以下となるため、特定外国子会社等に該当するとして、一審と同様の判断を示し、納税者の控訴を棄却する判決を行っている。


選択できるガーンジー島の税率


 事案の争点は、ガーンジー島に所在する子会社が26%の税率で納付した税金が、法人税法69条1項の外国法人税に該当するか否か。
 子会社はガーンジー島で、@免税法人となる、A20%の定率課税を受ける、B定率の段階税率による課税を受ける、C国際課税資格を取得して、0%から30%の間の一定の税率により申請をして承認された税率により課税を受ける、という4つの税制が選択でき、Cの国際課税資格という税制上の資格をガーンジー税務当局から取得し26%の国際課税法人として税金を納付した。
 これに対し日本の課税当局は、ガーンジー島の税は日本の法人税に該当しないとの理由から、タックスヘイブン対策税制を適用、日本の親会社の益金にガーンジー島の子会社の課税対象留保金額を合算し課税した。


高裁は地裁の判断を踏襲


東京高裁は、一審に引き続きこの課税処分を適法とする判断を示しているが、その理由に地裁の判決を引用、地裁と同旨の判断として納税者の控訴を退けている。
 まず、法人税法69条1項を受けた外国法人税の意義を定めた政令とは、同法施行令の141条1項であるとし、外国法人税に当たるかどうかは、最終的に同項に該当するかどうかによって判断することが予定されているものとした。
 そして141条2項、3項の規定は、同条1項の規定と同格の規定であるとは考えられず、同条1項に該当するかどうかを判断するための一種の解釈規定として位置付けられるべきものとして、141条2項、3項各号の定めは、このひょうな規定の性質上、例示列挙と解するとして、納税者の限定列挙であるとする解釈は採用できないとした。


ガーンジー島の税はタックスヘイブン回避の対価


 また、ガーンジー島の税については、以下の3点を主な問題点として指摘。
 1点目は同一の法人の同一の収入に対して、基本的性格を異にする4つの税制が適用されており、同種の法人の同種の収入に対して、基本的性格を異にする税制に基づく課税が行われ得るという極めて不自然な事態が生じていること。
 2点目は、ガーンジー島の税率は、納税者と税務当局との合意により決定されることから、納税者の自由が広範に認められる租税であること。これは、納付や還付に関し納税者の裁量が広範に認められている税として法人税法施行令141条3項1号、2号に掲げられた租税に類似した側面を有しており、租税の特質である強行性と相容れない面があること。
 3点目は、ガーンジー島の税に自力執行力がなく、租税に対する一般的優先権を承認する制度も存しないため、徴収手段において実効性に欠けること、である。
 そして、ガーンジー島においてこのような税制が採用されているのは、外国法人に対し、本国におけるタックスヘイブン税制の適用を回避するためのメニューを提供するためとの判断を示し、ガーンジー島の税は税という形式をとるものの、その実質は、本国において、タックスヘイブン対策税制の適用を回避させるというサービスの提供に対する対価ないし一定の負担としての性格を有するものと結論付けている。
 この事案においては、地裁に引き続き、高裁においても同様の判断が示されているが、仮に25%を超える税率で税金を納付していても、外国法人税に該当しないと判断される場合には、タックスヘイブン対策税制が適用されることが想定され、海外に事業展開している企業等から、関心の高い事案になっているようだ。



(以上参考;週刊「税務通信」第2992号)
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