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                                               2007年11月30日
 


東京地裁 路線価を0.8で割った価額を時価相当額とみなす



債務免除による貸倒損失を寄附金と認定

 製造販売等を営む企業が、関係会社に対する立替金債権の放棄により計上した貸倒損失の損金該当性が争われた訴訟で、東京地裁は、課税当局を支持、納税者の請求を棄却する判決を行った(平成19年9月27日判決言渡 平成18年(行ウ)第411号)。
 この事案では、立替金債権の放棄による債権額は貸倒損失ではなく、関係会社に対しての寄附金であるとして、課税当局は損金算入限度額を超えた部分の損金算入を否認しているが、この債務免除をした時点で、関係会社は債務超過の状態にあったのか否か、また、その判断に際して、関係会社の所有していた土地をどのように評価するかが、争点となっている。
 東京地裁民事第2部は、課税当局の算定した関係会社の土地の評価について、路線価を0.8で除した価額を土地の時価相当額とみなし、これを基にして関係会社は債務超過の状態になかったと判断したことは相当であるとし、債務免除は関係会社への寄附金としたことを適法とする判断を示している。


路線価を0.8で割って計算


 事案において課税当局は、関係会社の純資産価額を、路線価を0.8で除した価額を時価相当額とみなして算定。その結果、関係会社は債務超過の状態にはなく、債権放棄された立替金は全額が回収不能とは認められないと判断。
 そして、関係会社に対して行われた債権放棄通知書による債権放棄について、関係会社へ経済的利益を供与することに経済的合理性がないとして、貸倒損失の計上は寄附金に該当するとして更正処分を行った。


原告は路線価による評価を主張


 これに対し、訴訟を提起した企業は、関係会社が債務超過の状態にあるかどうかの判断は、土地を路線価によって評価すべきと主張していた。ただし、訴訟を提起した製造販売会社と関係会社は、製造販売会社の取締役が共通の出資者であるという関係であるとはいえ、直接の資本関係は存在せず、また、関係会社は所有している土地を製造会社に賃貸して賃料収入を上げる以外、特段の営業を行っておらず、また、関係会社の債務は製造販売会社とその相談役に対するものが、そのほとんどであった。


路線価は相続税算定の基礎


 判決では、債権放棄をした場合に、その放棄した金額を損金に算入できる基準を定めている法人税基本通達9−6−1(4)と9−4−2について、債権放棄に経済的合理性があるかどうかを判断する基準として相当なものと認められるとして、通達の基準に合致するかどうかという観点から検討が行われている。
 そして、債権放棄に経済的合理性があるかどうか、債務者に支払能力がなく回収不能といえるかどうかは、債務者の有する財産を換価することにより、実際にどれだけの支払原資が得られるかを基準に判断すべきとした。
 その上で、製造会社が債権放棄したことについては、相当な理由があったとは認められないとしている。
 また、土地の評価について、地価公示は、土地の正常な価格、すなわち、自由な取引が行われるとした場合におけるその取引において通常成立すると認められる価格によって行われるものとされていること、これに対し、路線価は、取引によらない偶発的な原因により生ずる相続税額を算定する際に基礎とされるものであって、地価公示価格の80%を目途とした控えめな評価によるものとされていることからすれば、課税当局が路線価を0.8で除した価額を土地の時価相当額とみなし、これを基に関係会社が債務超過の状態になかったものと判断したことは相当性を有するとの判断を示し、製造会社の請求を棄却している。




(以上参考;週刊「税務通信」第2994号)
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