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M&Aニュース

                                               2007年12月10日
 


公正価値会計時代のデューディリジェンス


 企業全体と個別資産負債を公正価値で評価しなければならないこれからのM&Aには、デューディリジェンスの重要性は益々高まるであろう。潜在的なリスクを確認し、買収価額や契約条件に反映するための事前調査であるから、対象会社の有価証券報告書を分析するだけでは分からない情報、開示情報以外の内部情報を利用しなければならない。敵対的買収においてはいうまでもなく、少なくとも対象会社の経営陣が買収提案に拒否反応を示す段階ではとうてい無理である。友好的買収であっても、タイミングとしては、合併または買収について双方が合意し、LOIやMOUを正式に締結ずみであり、新聞公表したあとでなければならないだろう。また、デューディリジェンス関係の費用はM&A費用の中でも比重が高いため、無駄にならないようにするためにも、拙速は厳禁である。他方、デューディリジェンスの結果を買収条件に反映するには、最終契約締結前でなければならない。
 法律面では、たとえば係争案件にかかわる損害賠償責任の精査は会計にとっても追加負債の査定上重要である。通常は法律事務所や会計事務所に依頼して必ず実施している企業が多い。さらに米国では環境面については必ず外部の専門家に依頼して実施している。ビジネス・デューディリジェンスでは、事業内容と事業環境からみた事業の将来性・成長性分析が主な調査目的となるが、対象企業のビジネスを熟知している社内の担当者が行うことが多く、専門家の意見を聞くこともある。
 従来の会計デューディリジェンスといえば、財務状況の確認と税務上のリスクの把握である。前者はまた、勘定残高の実在性と網羅性のチェックであり、権利義務の確認であり、損益の期間配分が適切かどうかといった、財務会計の現状確認に限られてきた。通常の場合、相手先の財務諸表はすでに会計士または監査法人による期末監査を受けているはずであるが、改めて監査人を送り込むのはその後の損益状況と財政状態の変化をチェックするのが目的である。
 ではこれからの公正価値会計時代の会計デューディリジェンスはどう変わるであろうか。M&Aを純資産または株式の買収であるとみるパーチェス法が主流となり、これからの国際会計基準との収斂の過程で、持分プーリング法が使えなくなれば、企業価値と純資産の公正価値測定が不可欠となる。市場で取引される金融商品のみならず、長期使用目的の固定資産から簿外になっていた偶発債務に至るまで、広く公正価値測定が求められることになろう。わが国でも無形資産会計基準が整備されれば、R&Dの成果やIn-Process-R&Dなどオフバランスとなっている無形資産の認識測定の対象になるであろう。そのときには、いまの不動産鑑定士による土地の時価評価と同じように、会計デューディリジェンス時における公正価値測定が取得企業の資産負債全体に及ぶと考えられるからである。




(以上参考;週刊「経営財務」第2846号)
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