2008年1月18日
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資産除去債務の会計基準案を公表へ
ASBJ 2011年3月期から適用へ
企業会計基準委員会(ASBJ)は昨年12月27日、「資産除去債務に関する会計基準(案)」および同適用指針(案)を公表した。有形固定資産の解体や撤去などに関連して発生が見込まれる債務(資産除去債務)が発生した時(取得や建設した際)に負債として計上し、それと同額を帳簿価額に加える。その後、減価償却を通じて各期に費用配分するというものだ。2月4日までコメントを募集し、3月中には正式に基準等として公表する方針だ。2011年(平成23年)3月期から適用される予定である。
将来の除去費用を割引後の金額で負債計上
「資産除去債務」とは、将来の有形固定資産の解体や撤去などに関連して発生が見込まれる債務を指す。この債務を有形固定資産の取得、建設、開発又は通常の使用によって発生した時に負債として計上するというのが会計基準の柱だ。さらに、資産除去債務に対応する除去費用は、資産除去債務を負債として計上した時に負債の計上額と同額を関連する有形固定資産の帳簿価額に加え、減価償却を通じて当該有形固定資産の耐用年数にわたり、各期に費用配分する。資産除去債務は、有形固定資産の除去に要する割引前の将来支出(キャッシュ・フロー)を見積り、割引後の金額(割引価値)で算定する。
《会計処理例》
設備の取得原価10,000、耐用年数5年、除去費用見積額1,000、割引率は3.0%とする。
@X1年4月1日(取得、使用開始)
設備の取得と関連する資産除去債務の計上
有形固定資産 10,863/現金預金 10,000
資産除去債務( *1) 863 |
(*1)将来キャッシュ・フロー見積額1,000/(1.03)5=863
AX2年3月31日
時の経過による資産除去債務の増加
費用(利息費用) 26/資産除去債務(*2) 26 |
(*2)X1年4月1日における資産除去債務863×3.0%=26
設備と資産計上した除去費用の減価償却
費用(減価償却費)(*3) 2,173/減価償却類型額 2,173 |
(*3)減価償却費10,000/5年+除去費用資産計上額863/5年=2,173
BX3〜X6年・・・・X2年と同様の処理を行う
CX6年3月31日に除去(除去に係る支出は1,050)
減価償却累計額 10,863/有形固定資産 10,863
資産除去債務(*4 1,000/現金預金 1,050
費用(履行差額) 50/ |
(*4)X6年3月31日における資産除去債務863+137(X2〜6
までの増加分)=1,000
一般事業会社では限定的か
具体的にどういったものが対象となるか。基準案では、「有形固定資産の取得、建設、開発又は通常の使用によって生じ、当該有形固定資産の除去に関して法令又は契約で要求される法律上の義務及びそれに準ずるもの」とし、法律上の解釈により当事者間での生産が要請される債務に加え、過去の判例や行政当局の通達等のうち、法律上の義務とほぼ同等の不可避的な支出が義務付けられるものも該当するものとしている。原子力発電施設の解体費用を例示しているが、その他、アスベストの除去費用など有形固定資産に使用されている有害物質等を法律等の要求にyほる特別の方法で除去するという義務も含まれる。
基準案では、「有形固定資産の除去が企業の自発的な計画のみによって行われる場合は、法律上の義務に準じるものには該当しない」としていることから、一般事業会社で資産除去債務に該当する債務が生じるケースはそれほど多くないとみられる。考えられるものとしては、定期借地権により土地を借り受け、工事や店舗などを建てているケースやオフィスビルを賃借しているようなケース。契約上、「撤去や取り壊し義務がある場合は、その除去債務が負債として計上される。ただし、こうしたケースすべてにおいて契約時に負債計上が求められるケースでは賃貸借契約の継続期間を合理的に見積もることができないことが一般的であるためだ。その場合には、注記を行うことで、負債計上しないことができる(合理的に見積もることができることになった時点で負債計上する)。
既に引当計上を行っているケースでは?
電力業界では、原子力発電施設の解体費用について、発電実績に応じて解体引当金を計上している。このように特別の法令等により、有形固定資産の除去に係るサービス(除去サービス)の費用を当該有形固定資産の使用に応じて各期間で適切に費用計上する必要がある場合には、当該費用計上方法を用いることが可能だ。ただし、この場合でも、通常の処理方法による負債計上額に対する不足額があるときは、当該不足額が資産除去債務に計上されることとなる。
適用初年度は既存資産の除去債務を認識
会計基準の適用は、平成22年(2010年)4月1日以降開始する事業年度から。ただし、早期適用も認め、平成22年3月31日以前に開始する事業年度から適用することもできる。
なお、既存資産に係る除去債務についても適用初年度に認識することになる。その場合、適用初年度における期首残高は、以下の方法で算定を行い、両者の差額は適用初年度の損益とし、原則として特別損失に計上する。
(1) |
適用初年度の期首における既存資産に関連する資産除去債務を算定するにあたっては適用初年度の期首日時点での割り引き前将来キャッシュ・フローの見積り及び割引率により計算を行う。 |
(2) |
適用初年度の期首における既存資産の帳簿価額に含まれる除去費用は、試算除去債務の発生時点での割り引き前将来キャッシュ・フローの見積り及び割引率が、適用初年度の期首時点と同一であったものとみなして計算した金額から、その後の減価償却額に相当する金額を控除した金額とする。 |
使用の都度発生する場合の費用配分方法で反対意見
基準案の公表に際し、資産除去債務が使用の都度発生する場合の費用配分の方法(基準案8項)に関し、委員1名から反対意見が出された。同項においては、資産除去債務に対応する除去費用を各期においてそれぞれ試算計上し、関連する有形固定資産の残存耐用年数にわたり、各期に費用配分する方法を原則法とし、代替方法として、除去費用をいったん資産計上し、当該計上時期と同一の期間に、資産計上額と同一の金額を費用処理する方法も認めている。
この点について、「前者の方法は、除去費用の費用計上が有形固定資産の使用期限の後半に著しく偏ることとなるため妥当とはいえない。両者において各会計期間の費用計上額が大きく相違する結果となるにもかかわらず両者のの選択を認めることは比較可能性を損なうおそれがある」とし、後者の方法のみを認めることとすべきという意見である。
なお、資産除去債務が使用の都度発生するケースとは、使用中に汚染が生じたケースなどが該当するが、極めて例外的であるとみられる。
(以上参考;週刊「経営財務」第2852号)
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