運営人:潟Gムアンドエーインタークロス
後援:税務研究会

M&Aニュース

                                               2008年3月25日
 


新エンジェル税制では対象株式の譲渡時の計算にも留意

寄附金控除の運用を受けた出資金額は取得価額に含めず

 既報のとおり、平成20年度税制改正では、いわゆるエンジェル税制について、対象となる特定中小会社への出資金額を1,000万円まで寄附金控除の対象とする内容の拡充策が盛り込まれている(措法(案)41の19関係)。
 株式の払込金額について所得控除を受けることができることから、投資家にとっては、ベンチャー投資のリスクを入り口で軽減できるメリットがあるが、この規定の適用を受けた株式を譲渡する場合、寄附金控除の摘要を受けた金額を取得価額から除いて譲渡所得の計算を行うことになるので、その点も理解しておきたい。


出資金額を寄附金控除の適用対象として投資時点での税制優遇を強化


  既に改正法案で明らかにされているとおり、新制度は、

@ 特定新規株式(特定新規中小会社「中小企業の新たな事業活動の促進に関する法律」第7条に規定する特定新規中小企業者に該当する株式会社)で、設立後の期間が一年未満のものその他財務省令に定めるものについて、
A その株式の発行に際してその株式を居住者等が払込みにより取得する場合に、
B 控除対象特定新規株式(その年中に払込により取得した特定新規株式(その年の12月31日において有するものとして政令で定めるもの))の「取得に要した金額として政令で定める金額」(総所得金額の40%か1,000万円のいずれか低い方が上限)について、
C 所得税法第78条(寄附金控除)の適用を受けることができる

 というもので、20年4月1日以後に払込みにより取得する対象株式から適用される予定となっている。
 すなわち、要件を満たす特定新規中小会社へ出資する投資家は、出資金額から5,000円を控除した金額について、寄附金控除を受けることができることになり、起業間もない時期の企業に対して直接投資を行う富裕層(エンジェル)が米国等に比べて少ないと言われるわが国にあって、税制面からベンチャー投資への大きなインセンティブを与える改正であると期待されているところだ。


寄附金控除の適用を受けた出資金は株式の取得価額から除外


 ところで、今回の特例では、特例を受けた株式を発行する特定新規中小会社が、その後、事業に成功して上場を果たした後に、投資家がその株式を株式市場等において、売却等した場合には、譲渡所得の計算上、当初の払込額のうち寄附金の扱いを受けた部分の金額は、取得価額から除かれることになっている(政令事項)。
 つまり、取得時に寄附金として所得控除を受けた金額は、譲渡時にキャピタルゲイン課税の対象になるということだ。
 また、現行のエンジェル税制には、投資家が、特定中小会社の発行する株式を払込みにより取得した場合の払込額を、同一年中の他の株式の譲渡益から控除できる制度があるが(現行措法37の13:特定中小会社が発行した株式の取得に要した金額の控除等)、この制度は、20年度税制改正後も存置され、上記の新しい寄附金控除制度とは選択制となる予定だ。
 そのため、投資家は、他の株式の譲渡益が少ない年であっても、寄附金控除を選択し、節税メリットを享受することが可能となる。
 なお、20年度税制改正では、既存のエンジェル税制のうち、3年超保有の特定株式の譲渡等について、譲渡益の2分の1軽減を受けることができるとした「特定中小会社が発行した株式に係る譲渡所得等の課税の特例」(現行措法37の13の3)は廃止される予定となっている(経過措置あり)。
 制度の詳細については、法案成立後、政省令の公布を待たなければならないが、これまで出資時、保有時、売却時、各段階を通じて優遇策を設けていたエンジェル税制については、今回の税制改正によって、投資時点での優遇策を特に強化する方向に見直されることになるので、念頭に置いておきたい。




(以上参考;週刊「税務通信」第3008号)
(このコンテンツの使用に関し(株)税務研究会の許諾を受けています。)





Copyright (C) 1999- M&A Intercross Co.,Ltd , All rights reserved.
omo