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M&Aニュース

                                               2008年4月25日
 


営業権、一般動産、取引相場のない株式等の評価を見直し

国税庁 財産評価基本通達を一部改正、20年分相続等から適用

 国税庁は3月31日、「財産評価基本通達の一部改正について(法令解釈通達)」(課評2−5他・20年3月14日)を公表した。
 営業権、動産、取引相場のない株式の評価などの取扱いの一部を改正するもので、1月末から実施された意見公募手続き(パブコメ)で示された改正案どおりの改正が行われた。
 営業権の評価は、昨年12月の自民党税制改正大綱によってすでに評価方法を見直す方針が決められていたもの。標準企業者報酬額(企業者報酬の額)を引上げ、総資産に乗じる基準年利率を総資産年利率に変更することで、高収益企業では評価の引き下げが期待できるといわれる。また、動産等の評価では調達価額や標準価額による評価から、売買実例価額や実際の投下資本の額などによることとされ、資産の多様性や個別性を重視した評価が基本的な考え方とされる。
 改正後の取扱いは20年1月1日以後の相続等の評価から適用される。改正のあらましがまもなく公表される予定で、動産評価の具体的な指針等なども明確にされる。


企業者報酬額の計算を改定し簡素化


 営業権の評価では、まず、超過収益力の計算上、利益金額から控除できる企業者報酬額の計算が実態調査に基づいて改定され、比例式で簡素な方法とされることになった、利益金額5,000万円の場合の報酬額はこれまで850万円と算出されたが、改正後は2,500万円、評価の安全上0.5を乗じるため、平均利益金額が5,000万円以下の場合は営業権の価額は算出されないことになる。
 また、もうひとつの控除項目である「総資産×基準年利率」では、総資産に乗じる利率について、国債利回りを基にする基準年利率から、総資産額に対する利益金額の割合である「総資産利益率」に変更する。これまで1.5〜2%だった利率が、法人企業統計を基に算定された標準的な利益率である5%とされ、控除額が大きくなる。当分は5%とされるが、利益率に変動があれば見直されるようだ。
 これらの改定により、多くの場合、営業権の評価額は生じないか、引き下げられることになる。逆に、平均利益金額が15億円を超えるような、純資産方式で評価するケースでは例がないともいえそうな高収益企業については高く算出されることになる。
 このほか、平均利益金額の算定で行う企業物価指数による調整、役員等に支払う不動産貸借料や引当金勘定への繰入額等をなかったものとして加算する取扱いなどが、簡便性等を考慮して廃止するとされた。


類似業種比準方式で赤字会社の評価計算を見直し


 取引相場のない株式の評価では、類似業種比準価額方式で評価する場合について、比準要素のひとつである利益金額(丸C)がゼロの場合に、算式の分母を「5」から「3」とすることになっていたが、この場合でも、「5」とすることとされた。医療法人の出資を評価する場合も「2」ではなく「4」とされる。
 事業承継税制についての議論では、赤字でも評価額が高くなるケースがあるとの指摘もされていた。しかし、この計算方法の見直しによって、類似業種比準価額方式による評価額は引き下げられるケースも出てきそうだ。ただ、非上場会社においては、配当があって利益がゼロというようなケースは少ないといわれる。パブコメで寄せられた意見に対し国税庁では、適正な時価評価の観点等からの所要の見直しを行ったとしている。


改正後 改正前
(類似業種比準価額)
180 省略
(1) 上記算式中の「A」、「丸B」、「丸C」、「丸D」、「B」、「C」及び「D」は、それぞれ次による。・・・省略
(2) 上記算式中の「0.7」は、178《取引相場のない株式の評価上の区分》に定める中会社の株式を評価する場合には「0.6」、同項に定める小会社の株式を評価する場合には「0.5」とする。
(3)(削除)
(類似業種比準価額)
180 省略
(1) 上記算式中の「A」、「丸B」、「丸C」、「丸D」、「B」、「C」及び「D」は、それぞれ次による。・・省略
(2) 上記算式中の「0.7」は、178《取引相場のない株式の評価上の区分》に定める中会社の株式を評価する場合には「0.6」、同項に定める小会社の株式を評価する場合には「0.5」とする。
(3)上記算式中、丸Cの金額が0の場合には、分母の「5」は「3」とする。



原則売買実例価額への対応はあらましで指針


 このほか、果樹等、森林の立木以外の立木、立竹及び牛馬等、一般動産、船舶の評価についての見直しも行われた。
 果樹等については、国税局長が定める標準価額を基にしていたが、多様性、個別性をより反映させるため、標準価額方式を廃止、果樹は投下資本を基に、森林の立木以外の立木は売買実例価額、精通者意見価格等を勘案して評価することになる。毎年8月、路線価とともに公表されてきた「果樹等の標準価額」や「乳牛の標準価額」といった標準価額表は、平成20年分の財産評価基準書から作成されなくなるということだ。
 動産等については、調達価額で評価するとされてきたが、今後は、原則として売買実例価額等を勘案して評価するとされる。また、平成19年度の減価償却制度の改正に対応し、家屋の附属設備等の評価など、財産評価にあたっては法人税とは異なり、資産の取得時期に関係なく改正後の定率法によるとするなど、所得税法等から準用している部分の整理を行っている。
 売買実例価額等への見直しは、インターネットなど情報通信技術の発達で、納税者サイドで売買実例価額が把握しやすくなっていることなどが背景にある。パブコメでは中古動産は処分価額と購入価額の乖離が大きいため、売買実例価額の見積もりについては具体的で明確な指針が必要である、との意見があった。
 国税庁では、標準価額比準方式の廃止に対しては実務上の簡便法を配慮し、投下資本の簡便な算定方法を設け、売買実例価額の見積りについても具体的な指針を明確にするとの方針を示しており、これらを含めた「改正のあらまし」が近く公表される。




(以上参考;週刊「税務通信」第3012号)
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