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M&Aニュース

                                               2008年5月12日
 


M&Aにおける株価とのれんの関係

 昨年末に改訂された米国の企業結合会計基準SFAS141(R)によると、企業結合の定義から「純資産の取得」がなくなり、「事業(buisiness)の支配(control)の獲得(acquisitions)」だけに絞られた。そのためであろうか、「持分プーリング法」と並び称された「パーチェス法」というキーワードが消え、「アクジション法(acquisituon method)」に置き換えられた。本文をよく読むと、「支配獲得」は単なる名称変更ではなく、国際財務報告基準IFRS3との収斂の結果でてきた概念変更のシンボルであることが分かる。その一つが買収対価としての株式の公正価格をいつの日の株価で決めるかが変わったことにあらわれている。
 従来は「M&A条件の合意日とか公表日の前後」と、きわめてあいまいで融通無碍な定めであったが、これからは「支配獲得日(acquisition date)」に統一される。この改訂はM&A当事者企業にどのような影響をもたらすであろうか。
 買収企業が買収対価を現金で払えばその金額イコール買収価額であるが、新株発行によればいつの株価で株式価値を測定するかによって買収価額が決まることはいうまでもない。のれんは買収価額と個別資産負債へ配分したあとの残余であるから、のれんの金額にも大いに影響することも明らかだ。のれん金額の大小は、規則的に償却するにせよ、減損テスト一本にせよ、M&A後の業績に大きな影響がでる可能性大である。
 現金ではなく株式を選択するにはいろいろな事情があると思われるが、通常いわれるように、M&Aのターゲット企業に比べて買収企業の業績が好調で株価が割高なときである。そうであれば、M&A条件の合意日とか公表日の前後の株価に比べて、支払獲得日の株価はどうしても低下傾向を示すことが多くなる。低下した株価が適切な市場価額であり公正な企業価値に近いのであれば致し方ない。「支配獲得日基準」への改訂はそうしう趣旨からであろう。
 それはそうとして、実際の買収総額は、株式市場価額に30〜40%のプレミアムを上乗せしたところで決まる。のれんの正体に係わるところである。市場で決まる株価収益率(PER)が1株当たり利益の数倍であり、株価純資産率も1株当たり純資産の数倍であるときは、将来見込まれる超過収益力がすでに株価に織り込まれていると考えるべきであろう。そうであれば、株価それ自体がのれんを含んでいることになる。その株価にさらに上乗せされたプレミアムとは一体何ものであろうか。M&Aの60〜70%が失敗であるといわれるが、その原因の一つが株価プレミアムの大盤振る舞いにあるように思われる。のれんは償却資産か非償却資産かという議論にいまだに決着がついていないが、群盲象をなでるような論議を重ねるよりも、個々ののれんが発生するプロセスを分析すれば、長期にわたる規則的償却が悠長すぎる場合も容易にみつかるであろう。




(以上参考;週刊「経営財務」第2866号)
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