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M&Aニュース

                                               2008年6月05日
 


対等合併と持分プーリング法の運命
 

 対等合併は吸収合併や買収に対立する概念であり、組織再編を表す1つのビジネス用語となっている。ところが、正式な会計学用語でもなければ吸収合併のような法律用語でもない。和をもって尊しとするのがわが国民性であると考える向きにとっては、仲良く一緒にやりましょうという対等合併は我が国企業社会独特の風習と思うのも自然である。しかし、これまた必ずしもそうではなく、意外に普遍的らしい。その証拠に、パーチェス法をアクション法と読み替えることによって支配獲得の論理を一段と鮮明にしたSFAS141R(2007年12月公表)は”true mergers”(真正合併)も、”mergers of equals”(対等合併)もこの会計基準の対象としている。諸外国でも珍しくないのである。
 わが国企業結合会計基準は、対等合併を「持分の結合」として、持分プーリング法を存続させたにもかかわらず、その適用例の実績があまりにも少ないのに驚くが、欧米の会計基準が「持分の結合」や対等合併を認めないのではなく、それもパーチェス(買収)であり、アクジション(支配の獲得)であるという。
 持分プーリング法の存続を願う人々にとっては、それを認めないどころか、それもひっくるめて1つの会計基準の対象とする態度は、受入難い欧米思考と映るであろうが、人間の経済活動の原点に回帰して取引実態をとらえる交換の理論によれば、企業結合の実態は他の企業支配の獲得であり、公正価値で測定すべきものである。その場合、「持分の結合」は取引の実態ではなく、単なる表面的な取引形態にすぎないとみる。したがって、持分プーリング法はM&A取引における交換価値を無視しているという批判につながる。結果的に投資の効率が分からない、被買収企業が認識しなかった無形資産のうち、買収企業が価値を見出した資産を明らかにしない。総資産は過小表示し、利益は過大表示する。これが持分プーリング法のもつ開示上の欠陥である。この欠陥は、資本市場全体としてみれば、効率的な経営資源の配分を妨げることになる。
 ”2つの会計事実に2つの会計手法を”という主張には、”ルールよりも経済実態重視を”という正当性がある。ところが、支配の獲得という概念をもって、全体を帰納的に把握し、「持分の結合」というレアケースを無視しても、比較可能性を高めようとする勢力からみればナイーブすぎる主張にすぎないであろう。
 だからといって持分プーリング法は完全に廃止されているわけではない。わが国企業結合会計基準が認めるように、共通支配下にある子会社同士の結合と共同支配会社(JV)の形成には依然として持分プーリング法は適用されるであろう。そのようなケースについては、SFAS141RもIFRS3Rも適用対象外としているにすぎない。
 このようにみてくると、会計基準の収斂の前に立ちはだかる障害は、ビジネス慣行のグローバル化の差よりも、考え方の違いのようである。





(以上参考;週刊「経営財務」第2870号)
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