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M&Aニュース

                                               2008年9月25
 


 業務悪化等による利益連動給与の減額に注意

  算定方法の定めに従って確定した金額を
  支給したことにはならない

 
 企業では、業績悪化等があった場合、株主に対して経営責任を明確にするため、役員給与を減額するケースがある。
 しかし、平成18年度の税制改正で導入された「利益連動給与」については、事後的に支給金額を減額した場合、「利益連動給与」に該当しないことになり、カットした残りの部分の支給金額は、損金算入できないことになってしまうため注意が必要だ。


◆ 算定方法に従って確定した金額を支給したことにならず「利益連動給与」に該当しないことに


 周知のとおり、「利益連動給与」は、あらかじめ役員給与の算定方法を定め、その事業年度に係る利益に関する指標の数値が確定すると、自動的に役員給与の金額が確定するというもので、算定方法の決定方法や開示等に係る一定の要件を満たすことで、その支給額を利益に関する指標に係る事業年度の損金に算入することができる(法法34@三)。
 利益連動給与は、同族会社では導入が認められておらず、算定方法の開示等の要件が厳しいことから、採用している法人が少ないのが現状であるが、上場企業を中心に、株主に対する経営責任の明確化等のため、業績連動型の役員処遇制度の導入ニーズが、高まってきており、今後、徐々に採用法人数が増えることが予想されている。
 ところで、株主に対する経営責任の明確化という面では、業績悪化を受けて、役員賞与を減額する企業が少なくない。
 しかしながら、確定した「利益連動給与」の金額を事後的に減額した場合には、利益連動給与に該当しないことになり、減額支給した全額が損金不算入となってしまうので注意が必要だ。
 例えば、算定方法の内容や決定方法、開示等について、利益連動給与の要件を満たしている場合に、「利益に関する指標の数値」が確定するのと同時に確定した「利益連動給与」の金額について、業績悪化等の責任を取って一律30%減額するといったケースだ。
 そうした場合、減額支給された金額は、あらかじめ定められた「算定方法」に基づいたものとはいえず、利益連動給与の要件を満たさないことから、30%減額後の支給額を損金に算入することはできないことになる。


◆ 利益連動給与の額確定後の支給額の移動は制度上予定されていない


 この点、定期同額給与や事前確定届出給与については、平成19年度税制改正において、著しい経営状況の悪化等、一定の場合には、あらかじめ定められた支給額を期中に改定することができる仕組みが導入されたが、利益連動給与に関しては、特段の改正は行われなかった。
 これは、利益に関する指標に連動して役員給与の金額が決まる利益連動給与では、確定後に支給金額が異動することは、そもそも制度上予定されていないためだ。
 例えば、業績が悪化し、「利益に関する指標の数値」そのものが、小さな数値となれば、それに連動して役員給与の金額が少額になるため、役員給与の支給額に業績の変動が織り込まれていることになる。
 つまり、上記のような利益連動給与の減額は、株主に対して「業績に連動して低くなった処遇」以上に責任を取るという意思を示すものと考えられるが、現行の「利益連動給与」の規定には合致しないということになる。
 なお、経営責任という意味では、減額割合を100%とすること(つまり、利益連動給与を支給しないこと)も考えられるが、その場合、損金に算入する金額がないのは、もちろんのことであるが、「算定方法の定めに従って確定した利益連動給与を支給しなかった」という点においては、支給する金額が残って江いるケースと同様であるため、次年度以降の利益連動給与の損金算入に影響を与えるのではないかと懸念する向きもあるようだ。
 しかし、利益連動給与は、事業年度単位の支給を前提とした制度であるため次年度以降の利益連動給与の損金算入には影響が少ない。


● コメント


 M&Aではオーナー社長が株式を譲渡後も引き続きその会社の経営を託されることがある。
 この場合、業績に応じた給与(賞与)が支払われる例では注意を要するであろう。





(以上参考;週刊「税務通信」第3031号)
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