2008年10月14日
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インサイダー取引に係る課徴金事例が急増
(株)東京証券取引所及び(株)ジャスダック証券取引所は9月10日、共催で、「上場会社コンプライアンス・フォーラム」を開催した。 テーマは、近年のインサイダー取引増加を踏まえ、「上場会社におけるインサイダー取引の未然防止策と今後の課題」。フォーラムでは、証券取引等関し委員会(SESC)事務局の佐々木清孝総務課長が特別講演を行い、インサイダー取引に係る課徴金事例が増加していることなどを報告した。また、企業経営者等によるパネルディスカッションでは、マネックスグループの松本大社長が、インサイダー取引防止に関して厳しく取り組んでいることを報告。その上で、インサイダー取引については、法的な解釈が曖昧な部分もあることから、自社株取引などが萎縮し、経済活動が滞ることがないよう「どこまでは大丈夫、といったセーフハーバールールを作るべき」と語った。
◆ MSCBや不適切なファイナンスを重点監視
特別講演では、証券取引等監視委員会(SESC)の佐々木課長がSESCの活動報告や最近のインサイダー事案の傾向分析などを行った。
佐々木課長は、インサイダー取引に関して、審査件数や課徴金納付勧告件数が増加していることを報告(表参照)。要件については、@市況の悪化、Aネット取引の普及、Bクロスボーダー化の進展、CM&Aの増加を挙げた。
また、最近のインサイダー取引事案の傾向のひとつとして、「インサイダー情報にアクセスできる特別な権限を持った『社外関係者』の規律の欠如」を指摘。最近、マスコミ、公認会計士、証券会社などが関わる事案が頻発していることから、関係者に注意を促した。
なお、今後の重点施策として、直ちに法令違反とはいえない取引(MSCBや不適切なファイナンス等)の監視や、迅速性・効率性の観点から、課徴金制度の一層の活用などを挙げた。
●インサイダー取引に係る勧告と告発の状況
事務年度 |
17 |
18 |
19 |
審査 |
693件 |
884件 |
951件 |
課徴金納付勧告 |
9件 |
9件 |
21件 |
告発 |
5件 |
9件 |
2件 |
◆ インサイダー取引にセーフハーバールールを
パネルディスカッションでは、各パネリストが、自社のインサイダー取引防止策や、今後の課題などについて発表を行った。
このうち、マネックスグループの松本大社長は、@情報の拡散を抑えるという観点から、取締役であっても担当の取締役以外には不要な情報は伝えない、A会社内外の情報ギャップを縮小させるという観点から、月次の決算情報を取締役会開催日の午後3時にはTDネットで開示、Bまた、自社株売買については、全役員・社員に事前届出を義務付けた上、売買の機関を月次決算情報の発表から決算末日までの数日間に限る等、かなり厳しいインサイダー取引防止策を実践していることを報告した。その上で「(自社の取組は)個人的にはやり過ぎではないかと思う」インサイダー取引については、法的な解釈が曖昧な部分もあることから、経済活動を滞らせることがないよう「どこまでは大丈夫、といったセーフハーバールールを作るべき」と語った。
(以上参考;週刊「税務通信」第3035号)
(このコンテンツの使用に関し(株)税務研究会の許諾を受けています。)
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