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M&Aニュース

                                               2008年10月17
 


 納税猶予の対象要件は
 円滑化法施行規則6条1項7号に規定

    経営承継円滑化法が10月1日に施行
    

 10月1日に「中小企業における経営の承継の円滑化に関する法律」が施行された。
  この円滑化法に関連して、税制では平成21年度の税制改正で、事業承継にかかる非上場株式の納税猶予制度が創設されるが、この制度の適用を受けるためには円滑化法における経済産業大臣の認定を受けることが要件となる。
 「経済産業大臣の認定」については、円滑化法の12条に規定されているが、その詳細は、円滑化法の施行規則第6条に定められており、その6条1項の1号から6号は金融支援の要件についての規定であり、7号のイ〜チの規定が税制の要件となっており、以下の内容となっている。

 イ.風俗営業会社に該当しないこと。
 ロ.資産保有型会社に該当しないこと。
 ハ.資産運用型会社に該当しないこと。
 ニ.直近の事業年度における総収入金額が零を超えること。
 ホ.常時使用する従業員の数が1人以上であること。
 ヘ.特別子会社が上場会社等、大法人等又は風俗営業会社に該当しないこと。
 ト.代表者が経営承継相続人であること。
 チ.拒否権付株式を発行している場合には、経営承継相続人以外の者が有していないこと。

 事業承継税制の概要については、今秋以降の税制改正議論の内容を待つ必要があるわけだが、制度の要件については、円滑化法施行規則が適用されるとされており、税法では、租税回避防止等の手当が行われることとなるようだ。


◆ 会社が対象となる事業承継税制


 認定の対象は、円滑化法に規定される中小企業者で、上場会社等以外の会社とされる。
 金融支援については個人である中小企業者も対象とされているのに対し、税制では会社が対象とされている。これは、納税猶予の対象となる財産は、あくまでも事業承継に必要とされる株式であり、その他財産は納税猶予の対象とはされていないからである。


◆ 「風俗業」、「資産保有型会社」「資産運用型会社」「は認定の対象外


 円滑化法の12条では、制度の対象となる認定中小企業者を規定しているが、詳細については施行規則の6条1項7号で規定しており、そのイ〜チのいずれの規定にも該当することが必要とされる。
 認定の前提条件として、中小企業者の代表者が、先代経営者から相続又は遺贈(死因贈与を含む。)によりその中小企業者の株式等を取得し、相続税を納付することが見込まれることが要件となり、この他にも認定の要件は多岐に渡っている。
 まずイでは、性風俗関連特殊業を含む会社は認定を受けることはできないと規定している、ただし、バー、パチンコ、ゲームセンター等は、風営法の規制対象事業であるが、性風俗関連特殊営業ではないので、問題ないとされている。
 次のロでは、直近の事業年度末における資産の価額の総額に占める「特定資産」の価額の合計額の割合が70%以上である会社を「資産保有型会社」と定義し、これに該当しないことが認定の要件とされている。また、この「特定資産」には、@金融商品取引法第2条第1項に規定する有価証券及び持分、A中小企業者が現に自ら使用していない不動産(遊休地、役員用住宅等)、Bゴルフ場その他の施設の利用に関する権利(事業用目的であるものを除く)、C絵画、彫刻、貴金属及び宝石(事業用目的であるものを除く)、D現預金(代表者及び代表者に係る同族関係者に対する貸付金及び未収金を含む)が規定されている。
 また、ハでは、直近の事業年度における総収入額に占める特定資産の運用収入の合計額の割合が75%以上である会社を「資産運用型会社」と定義しており、これに該当しないことが認定の要件とされている。この場合の総収入金額は、損益計算書上の売上高、営業外収益及び特別利益の合計額となる。


◆ 「資産保有型会社」と「資産運用型会社」のみなし除外規定


 なお、前述の「資産保有型会社」と「資産運用型会社」に該当する場合であっても、@事務所、店舗、工場その他の固定施設を所有し、又は賃借している、A常時使用する従業員の数が5人以上、B申請者が事業主体となり、経営承継相続人の被相続人の死亡の日の前3年間以上継続して、申請者自身に損益が帰属する商品販売等の事業活動をしている、のいずれかの要件も満たしているのであれば、「資産保有型会社」と「資産運用型会社」に該当しないとみなされ、認定の対象とされる。


◆ 従業員がいない会社は対象外に


 ニでは、申請者の直近の事業年度における損益計算書上の総収入金額が零の場合には、認定を受けることができないことが規定されている。

 ホでは、申請者に常時使用する従業員がいない場合には、認定を受けることができないことが規定されている。なお、従業員としての身分も有する役員(いわゆる使用人兼務役員)も、常時使用する従業員の数に含まれるとされるが、その役員が従業員としての身分を有することを証する書類(従業員給与が支給されていることが分かる給与明細の写しなど)の提出が必要となる。
 ヘでは、申請者の「特別子会社」が上場会社等、大法人等又は風俗営業会社に該当する場合には、認定を受けることができないとされている。この「特別子会社」とは、「会社並びにその代表者及び当該代表者に係る同族関係者が他の会社の総株主等議決権数の100分の50を超える議決権の数を有する場合における当該他の会社をいう」と定義されている。


◆ 経営承継相続人の要件


 続くトでは、申請者の代表者が「経営承継相続人」であることが認定の要件とされている。「経営承継相続人」の要件とは、@相続又は遺贈により申請者の株式等を取得した代表者であって、その代表者に係る同族関係者と合わせて過半数の議決権を有し、かつ、同族関係者の中で最も多くの議決権を有している者であること、A経済産業大臣の確認を受ける際に定めた「特定後継者」であり、かつ、被相続人(遺贈者を含む)の死亡の直前において申請者の役員であった者であること、B相続又は遺贈により申請者の株式等を取得した代表者は、認定申請日までの間、その株式等を所有し続けていること、C申請者の代表者の被相続人が、経済産業大臣の確認を受ける際に定めた「特定代表者」であったこと、D申請者の代表者の被相続人が、その死亡の直前において、その被相続人に係る同族関係者と合わせて過半数の議決権を有し、かつ、同族関係者(申請者の経営承継相続人を除く。)の中で最も多くの議決権を有している者であること、とされている。
 なお、Aの「特定後継者」については、次の要件のいずれかに該当する場合には、特定後継者でなくとも認定を受けることが可能とされている。(1)代表者が、その被相続人の親族であり、かつ、その被相続人が60歳未満で死亡した場合、(2)代表者が、その被相続人の親族であり、かつ、その被相続人の死亡の直前において、その中小企業者の役員であった場合であって、その被相続人の死亡の直前においてその代表者が有していたその中小企業者の株式等に係る議決権の数と相続(公正証書による遺言によってその中小企業者の株式等について遺産の分割の方法が定められたものに限る。)又は遺贈(公正証書による遺言によって特定の名義で行われたものに限る。)により取得したその株式等に係る議決権の数の合計数が総株主等議決権数の100分の50を超える数である場合、(3)特定後継者が死亡した場合に、その代表者が経産大臣の確認を受けたその中小企業者のその確認に係る新たに特定後継者となることが見込まれる者である場合。


◆ 拒否権付株式の規定


 チでは、その中小企業者が会社法第108条第1項第8号に規定されているいわゆる拒否権付株式を発行している場合には、経営承継相続人以外の者がそれを有していないことが、認定を受けるための要件とされている。


◆ 注目される税制改正の動向


 このように、事業承継税制についての適用要件については、円滑化法の施行規則が適用されるとされていることから、その概要がつかみ易い。しかしながら、税法では、租税回避にかかる規定が設けられるとされており、また、20年度改正の要綱に書かれていた納税猶予が免除になる際の詳細についてや、相続時精算課税との関係については、今秋以降の税制改正の議論の中で明らかにされることから、その内容と注視する必要があろう。







(以上参考;週刊「税務通信」第3036号)
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