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M&Aニュース

                                               2008年10月22
 


 米国基準と日本基準に1兆円の差

 その要因とは?
        

 米国会計基準に基づく当期純損益と、日本の会計基準に基づく当期純損益に1兆円超の開きがある事例が確認された。(株)三菱UFJフィナンシャル・グループ(以下、三菱UFJ)の平成20年3月期連結決算である。
 1兆円もの大きな乖離が生じたのは何故か?


 ◆ 米基準は▲5,424億、日本基準は6,366億


 三菱UFJは9月19日、米国会計基準に基づく20年3月期の連結決算を発表した。同社は、東証1部など国内の取引所のほか、ニューヨーク証券取引所にも上場しており、日本の会計基準と米国会計基準、それぞれに基づく連結財務諸表を2種類作成している。

<日本の会計基準に基づく連結業績>

当期純利益(百万円)
20年3月期 636,624
19年3月期 880,997
         ※百万円未満切捨て

<米国会計基準に基づく連結業績>

当期純利益(百万円)
20年3月期 △542,436
19年3月期 581,288
       ※百万円未満は四捨五入

 決算発表によると、米国会計基準に基づく当期純損益は5,424億円の赤字(前期は5,812億円の黒字。億単位未満切り捨て)。米国会計基準に基づく連結決算が赤字となったのは、旧UFJホールディングスとの合併以前に、旧三菱東京フィナンシャル・グループが赤字となった14年3月期以来で、実に6期ぶりとなる。
 一方で、5月20日に発表した日本の会計基準に基づく20年3月期連結決算によると、当期純損益は6,366億円の黒字となっている。つまり、米国会計基準に基づく連結純損益を比較すると1兆1,790億円もの開きが発生していることになる。


◆ 要因はのれんの減損8,937億円(米国)


 米国会計基準による「比較連結損益計算書」をみると、「のれん減損」との勘定科目で、8,937億円が「非金利費用」に計上されている。三菱UFJによると、「20年3月末における当社の株価を踏まえ、減損テストを行った結果、のれんの減損処理を行うことになった」という。

 17年10月、旧三菱東京フィナンシャル・グループは旧UFJホールディングスと合併。企業結合の会計処理にあたって、米国会計基準による決算では、「パーチェス法」を用いた。この際、買収価格が取得資産および引受負債の公正価値純額を超過する金額を「のれん」として、約1兆7,300億円計上している。
 米国会計基準及びIFRSにおいて、のれんの会計処理は「非償却+減損」が原則。定期的な減損テストの結果、のれんが減損していた場合には、減損損失を計上しなければならない。20年3月決算においては、サブプライム・ローンの影響や投資家心理の冷え込み等により、三菱UFJの株価が下落した結果、のれんの減損損失が初めて計上されることになったという。


◆ 会計上の相違であり、経営には影響なし

 これに対して、日本の会計基準に基づく決算では、企業結合の会計処理に「持分プーリング法」が採用された。このため、当該のれんは計上されておらず、減損損失および償却も当然発生していない。
 上記の通り、米国会計基準に基づく純損益と日本の会計基準に基づく純損益との差異は、「持分プーリング法の可否」、「のれんの会計処理の違い」が要因であったようだ。この点について、三菱UFJでは、「当該のれんの減損損失については、キャッシュ・アウトするような処理ではなく、経営への影響はない」としている。


◆ 日本基準でも持分プーリング法を廃止へ


 ただし、このような差異は順次解消されていく見込みだ。企業会計基準委員会(ASBJ)は9月19日、会計基準のコンバージェンスに向けた作業計画である「プロジェクト計画表」の内容を更新。年内にも、企業結合会計基準の改正が行われる予定だ。
 同基準の改正案に盛り込まれているのが、持分プーリング法の廃止。現行の日本基準では、その企業結合の経済的実態に応じて、持分プーリング法の廃止。現行の日本基準では、その企業結合の経済的実態に応じて、持分プーリング法とパーチェス法とが使い分けられているが、コンバージェンスを推進する観点から、持分プーリング法を廃止する方向で議論が進められている。
 また、「負ののれん」の会計処理についても、負債計上して規則的に償却を行う方法から、利益として処理する方向で議論されている。適用は22年4月以降となる見込み。他方「のれん」の会計処理については、21年からコンバージェンスの審議を開始し、22年中に公開草案を公表する予定だ。




(以上参考;週刊「経営財務」第2889号)
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