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                                               2008年10月28
 


 タックスヘイブン対策税制は日星祖税協定に違反せず
         
 ⇒東京地裁 更正処分の適法性を認め、納税者の主張を棄却



 タックスヘイブン対策税制が日本とシンガポールの租税協定に違反するか否かが、主な争点となった訴訟において、課税当局の更正処分を適法とする判断が東京地裁で示された(平成20年10月3日判決言渡 平成18年(行ウ)第714号)。
 タックス・ヘイブン対策税制が租税条約に違反するのか、という問題は、フランス国務院が、フランス国内の税制を、対スイス租税条約の事業所得条項に違反すると判断した判例があり、現在注目されているところとなっている。
 東京地裁は、フランス国務院の判示は、日本のタックスヘイブン対策税制に基づいて行った更正処分を違法と判断した。
 東京地裁では、類似の事案においても、タックスヘイブン対策税制は日本とシンガポールの租税協定に違反しないとの判断を示しているが、その事案は納税者サイドが控訴したことから、今後、高裁がどのような判断を示すのか、注目されている。
 なお、平成21年度の税制改正では、海外子会社からの配当の非課税制度の導入が検討されているが、現行のタックスヘイブン対策税制との関係がどのようになるのかが気になるところであり、その動向にも目を向けておきたい。


 注目されるタックスヘイブン税制


 タックスヘイブン対策税制は、海外の軽課税の国や地域を利用した国際的租税回避の防止を目的としており、税負担が25%以下の国や地域にある海外の子会社等の留保所得を、日本国内の株主の持分に応じて、所得に合算して課税する制度。
 しかしながら、フランス国務院(行政最高裁判所)が、フランスにおける従属外国法人立法がフランス・スイス租税条約7条1に違反すると判示(いわゆるシュナイダー判決)したことから、日本においても、タックスヘイブン対策税制と租税条約の関係について、様々な議論があったというところだ。
 そういう意味でも、今回の判決は注目されていたわけだが、東京地裁は8月末の判決に引き続き、日本のタックスヘイブン対策税制は日星租税協定には違反しないとの司法判断を示した、8月末の判決は個人のタックスヘイブン対策税制にかかる事案であったが、今回の判決は法人に対する事案であり、別々の部の判断ではあるものの、東京地裁は両事案でタックスヘイブン対策税制が条約に抵触しないとの判断を示したこととなる。


◆ 日本とは異なるフランスの制度


 今回の判決では、@フランスでは、法人税について、属地主義に基づく国外所得非課税主義及び外国法人からの配当を含めて受取配当の95%を益金に参入しない制度が採られているため、外国子会社の留保所得について配当があったとみなして通常の法人税の課税の対象としても、その効果が殆ど生じないこと、また、Aフランス国務院の判示がされた当事のフランスでは、タックスヘイブンに所在する子会社の留保所得について、通常の法人税の一部としてではなく、分離してその全体について直接に課税しており、親会社が適用対象とされる外国子会社の適用対象所得について法人税の納税義務を負うという制度が採られていたことが認められる。そして、このような法制度は、日本の制度とは全く異なるものであるというべきであり、フランス国務院の判示が、日本のタックス・ヘイブン対策く税制についての解釈において直ちに参考になるものとは言い難い、として、タックスヘイブン対策税制を規定している措置法66条の6第1項が、日星租税協定7条1に違反するということはできない、と結論付けている。


◆ 気になる税制改正の動向


 ところで、平成21年度の税制改正では、海外子会社に留保された利益を、日本国内に配当した場合に非課税とする措置の導入が検討されている。
 この海外子会社からの配当の非課税制度の導入に当たっては、現行のタックスヘイブン対策税制との関連が気になるところだ。なぜなら、仮にこの非課税制度が導入された場合、タックスヘイブン国に所在する特定外国子会社等が留保している所得であっても、日本国内の親会社に配当すれば、課税を受けないこととなるからだ。
 麻生首相が衆議院の本会議で、制度の導入について、年末の税制改正にかけて検討を進めることを名言していることから、制度が実現する可能性が高いと考えられ、タックスヘイブン対策税との関連を含め、今後の税制改正の動向に注意する必要があるだろう。




(以上参考;週刊「税務通信」第3037号)
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