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M&Aニュース

                                               2008年10月31
 


 金融危機問題で会計上の対応を検討
 
 ASBJ 時価の考え方を整理、保有区分見直しも議論に
 


 企業会計基準委員会(ASBJ)は10月28日に開催予定の第163回本委員会において、実務対応報告「金融資産の時価の算定に関する実務上の取り扱い」の公表議決を行う。最近の金融市場の混乱を受け、金融機関などが保有する金融資産の時価の算定に関し、質問が寄せられていることなどに対応したものだ。市場価格があるが、市場価格とは見なせない場合の取り扱い、市場価格がない場合の合理的に算定された価額の取り扱い等をQ&A形式で示す。新たな規定を設けず、金融商品会計基準等に規定されている時価の考え方を具体的に説明する。現行基準の枠内で対応する。
 また、もうひとつの議題が国際会計基準審議会(IASB)が金融資産をトレーディング保有目的分類から再分類できるように基準を改訂したことへの対応である。金融資産に係る保有目的区分の変更について検討を行う予定だ。


◆ 流動性が著しく欠けた場合の時価は合理的に算定


 証券化商品等の金融商品の大幅な取引価格の下落を受けて、金融機関などが保有する金融資産について、投げ売り状態に近い価格を「時価」とみなすか否かという点について、「不利な条件で引き受けざるを得ない取引または他から強制された取引による価格は時価ではない」との考えを示した。市場における取引が活発でないためまたは市場が十分に確立・整備されていないために、市場価格が金融資産の公正な評価額を示していない場合、市場価格があっても入手不可能な場合、さらに、市場価格がない場合であっても、要件を満たす限り「経営者の合理的な見積りに基づいて算定された価額」も旺盛な評価額に含まれるというものだ。
 現行の会計基準等を踏まえた実務上の取り扱いを確認するものであることから、実務対応報告の公表日前に終了した事業年度(当該事業年度を公正する四半期会計期間又は中間会計期間を含む。)であっても、企業が未だ公表していない財務諸表においては適用される。


◆ IASBは7月に遡り再分類できる改訂行う


 IASBは10月13日、「金融資産の再分類−IAS第39号『金融商品:認識と測定』及びIFRS第7号『金融商品:開示』の修正−」を公表した。IFRSを適用する企業に対しても、米国基準(SFAS115、SFAS65)で許容されているのと同様に、金融資産をトレーディンブ目的保有分類から再分類ができるよう改正を行った。
 米国の金融機関に比べ江、EUの金融機関が不利な扱いを受けているとの声が上がり、基準の改訂を要請され対応したものだ。緊急措置との観点から、公開草案の公表を経ず、直接公表した。さらに、2008年7月1日に遡り適用することも認めている。
 こうした国際的な動きを受けて、日本においてもその対応を検討する。10月23日に開催された金融庁・企画調整部会でも慎重な対応を求める意見が出されるなど、今後の議論が注目される論点だ。なお、国際的な取り扱いは表の通り。

(1)売買目的区分から償却原価で評価される区分への振替

会計基準 振替の可否 振替が認められる状況
日本基準 不可。 なし。
米国基準 特段の記載なし。 振替しうる状況について、特段の記載なし、このため、振替可能と解釈か。
国際会計基準 稀ではあるが、可能。 以下全てに該当する状況。
・(当初の意図に反して)当該有価証券を短期間で売買をすることがなくなったこと。
・満期まで又は予見できる期間にわたり、当該資産を保湯する意思と能力を有すること。

(2)売買目的区分から売却可能有価証券区分への振替

会計基準 振替の可否 振替が認められる状況
日本基準 例外的に可能 資金運用方針の変更又は法令・基準等の改正・適用に伴い、トレーディング勘定による運用を行わないことにした場合は、振替可能。この場合、全てを振替。
米国基準 稀ではあるが、可能。 振替しうる状況について、特段の記載なし。このため、稀ではあるが、一部の振替も可能と解釈か。
国際会計基準 特段の記載なし。 稀な状況ではあるが、(当初の意図に反して)当該有価証券を短期間で売買することがなくなった場合、振替可能との解釈が可能か。

(3)売却可能有価証券区分から償却原価で評価される区分への振替

会計基準 振替の可否 振替が認められる状況
日本基準 不可(注)。 なし。
米国基準 特段の記載なし。 振替しうる状況について、特段の記載なし。このため、振替可能と解釈か。
国際会計基準 稀ではあるが、可能。 満期まで又は予見できる期間にわたり、当該資産を保有する意思と能力を有すること。

(注)株式の場合、持株比率の増加等に伴い、売却可能有価証券(その他有価証券)から子会社・関連会社株式(原価評価)へ振り返ることがある。




(以上参考;週刊「経営財務」第2891号)
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