運営人:潟Gムアンドエーインタークロス
後援:税務研究会

M&Aニュース

                                               2008年11月04
 


 経営承継円滑化法に基づく経産大臣の確認・認定が税制の要件
 
 改正で注目される事業承継税制の創設と税額計算方式の見直し
 


 平成21年度の税制改正では、事業承継税制として「取引相場のない株式等に係る相続税の納税猶予制度」が創設される。

 これは、事業の後継者の相続税額のうち、事業継続に必要とされる発行済議決権株式の3分の2を上限として、その80%に対応する相続税の納税を猶予するという制度だ。
 この税制の適用を受けるためには経済産業大臣の認定を受ける必要があるわけだが、そのためには、事業承継の計画的な取組について、経産大臣の確認が必要とされている。ただ、この経産大臣の確認、また認定については、「中小企業における経営の承継の円滑化に関する法律」に基づく事項となり、租税回避防止策のほかは税制固有の要件が付されることにはならないようだ。

 また、事業承継税制の導入に伴い、小規模宅地等の特例制度や、農地に対する納税猶予制度、また、特定同族株式等に対する相続時精算課税の特例が、今後どのように取り扱われることとなるのかは、実務家ならずとも気になるところだ。

 現在、事業承継税制の創設にあわせて、相続税の税額計算の方式の見直しも検討されているが、検討の方向性は示されてはいるものの、最終的な内容については、政府や与党の税制調査会での審議等を経た上で公表される税制改正大綱に拠ることとなろう。


◆ 円滑化法が税制適用要件


 「中小企業における経営の承継の円滑化に関する法律」が10月1日に施行されており、21年改正で創設される事業承継税制については、この平成20年10月1日に遡及して適用されることとなる。
 事業承継税制の適用にあたっては、「中小企業における経営の承継の円滑化に関する法律」に基づいて@対象となる株式の相続開始前に、事業承継の計画的な取組みについて経産大臣の確認を受ける。A会社や後継者に関して制度の適用要件を満たし、経産大臣の認定を受ける、B5年間事業を継続する、ことが要件とされているが、この要件について、租税回避を防止するほかは税制固有の要件が付されることはないようだ。


◆ 納税免除ではなくあくまでも猶予


 事業承継税制は、中小企業の経営承継に際して、事業を承継する相続人が、非上場会社を経営していた被相続人から相続等によりその会社の株式等を取得して、その会社を経営していく場合には、その会社の株式等の3分の2を上限として、価額の80%相当額の相続税の納税が猶予されるというもの。

 この場合、「納税猶予の対象となる株式等のみを相続するとした場合の相続税額」を計算し、その金額から「納税猶予の対象となる株式等の価額の20%相当額に対する相続税額」をマイナスした金額が、実際に納税が猶予される税額となる。

 この納税猶予の対象となるのは会社の株式のみであり、80%相当額の税額も免除されるのではなく、あくまでも猶予とされている。納税が免除されるのは、事業承継相続人が納税猶予の対象となった株式等を死亡の時まで保有し続けた場合等の一定の場合であり、事業承継相続人が、相続税の法定申告期限から5年の間に、代表者でなくなる等により、中小企業の経営の承継の円滑化に関する法律に基づき経済産業大臣の認定が取り消された場合等には、猶予税額の全額を納付することとなる。
 
 また、相続税の法定申告期限から5年が経過した後において、納税猶予の対象となった株式等を事業承継相続人が譲渡等した場合には、その時点で、納税猶予の対象となった株式の総数等に対する譲渡株式の総数等の割合に応じた猶予税額を納付する必要がある。


◆ 実務家の関心が高い一定の場合


 これらに関しては、株式等を死亡時まで保有しつづけた場合等で納税が免除される一定の場合とはどのようなケースなのか。また、納税猶予の対象となった株式等を譲渡等した場合に、納付が必要となる猶予税額の株価の価額をどのように算定するのかや、生前贈与との関係等、実務家の関心の高い項目がある。

 例えば、相続時の時価に基づいて確定した税額については、相続後の株価の変動が考慮されないのが原則ではあるものの、5年の事業継続期間経過後に、会社が破産した等により対象株式の継続保有が出来なくなるケースも想定されている。

 また、早期の事業承継の取組みに際し、株式の生前贈与は重要になると考えられるが、株式を売却してから現金を贈与するパターンと、株式を贈与してから受贈者が売却するパターンで、バランスを確保する必要性から、事業後継者に納税猶予対象株式を贈与する場合の取り扱いをどのようにするのか、といった論点もあり、今後の検討内容が注目されるところとなっている。


◆ 税額計算の見直しの動向


 21年度の税制改正では、この事業承継税制の創設と同時に、相続税の税額計算方式の見直しが行われているとされており、こちらも大きな関心を集めている。
 現行の、遺産総額から基礎控除(5,000万円+1,000万円×法定相続人数)を差し引き、その残額を法定相続人が民法で規定されている相続分に従って取得した取得額に、累進税率を適用する方式では、新しい事業承継税制において、事業の後継者以外の相続人も税負担の軽減を受けることが可能となり、また、新たに遺産が見つかった場合には遺産を取得しない人まで税負担が増加することになる等の問題があることから、税額計算方式の見直しが検討されている。

 新しい相続税の税額計算方式は、各遺産取得者の実際の取得額から基礎控除を差し引き、累進税率を適用する、いわゆる遺産取得課税方式が採用されることとなるようだが、未分割財産の問題や、小規模宅地等の特例制度や、農地に対する納税猶予制度、また、特定同族株式等に対する相続時精算課税の特例等の、租税特別措置との関係の問題もあり、制度の骨格がどのようになるのか、注目されている。




(以上参考;週刊「税務通信」第3039号)
(このコンテンツの使用に関し(株)税務研究会の許諾を受けています。)






Copyright (C) 1999- M&A Intercross Co.,Ltd , All rights reserved.
omo