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M&Aニュース

                                               2008年11月14
 


  
非適格再編であっても実態から適格再編と判断される可能性も


 企業組織再編税制 適用上の留意事項
     


 企業グループ内における再編を促す観点から、税務上では、合併や会社分割、株式交換・移転、現物出資などを行った場合に、移転資産の譲渡損益課税を繰り延べる”企業組織再編税制”が設けられており、現在、広く活用されている。

 実務上においては、課税の繰り延べが行われる点から税制適格再編の方が非適格再編に比べて有利であると考える向きもあるようだ。しかし、含み損のある資産を移転する場合、非適格再編では移転資産の含み損を顕在化することができる一方、適格再編では含み損を実現することができないなど、企業の財務状況等によって有利不利は異なるのが実情だ。

 また、最近では、組織再編税制上の特性を活かした合併等も一部でみられるが、税負担の軽減を目的として恣意的に行為内容等を変更し、適格再編・非適格再編の適用を受けていた場合、法人税法132条の2(組織再編成に係る行為又は計算の否認の規定)から課税上弊害があるとされる可能性も考えられるのでこちらも留意されたい。


◆ 税制上の適格再編と非適格再編の違い


 税務上、資産を他の者に譲渡した場合、譲渡した価額(時価)と簿価の差額に対して譲渡損益を計上することとなる。
 この取扱いは、組織再編により資産の移転が行われた場合も原則として同様であるが、企業グループ内の組織再編など資産の移転は形式のみであり、実質的な経済実態は変わらない場合には、税務上、移転した資産は”簿価”で引き継がれ、その資産がグループ外の企業等へ移転される時まで譲渡損益課税は行われないこととされている。

 つまり、税法上で規定する税制適格要件に該当する組織再編は、移転した資産について、”簿価引継””譲渡益課税の繰り延べ”が行われ、逆に税制適格要件に該当しない非適格組織再編は、移転資産について”時価評価””譲渡益課税”が行われることとなる。


◆ 適格・非適格の有利不利は一概にはいえず


 一見すると、適格再編は資産の移転に伴う課税関係は生じない点から、非適格再編に比べて税法上メリットがありそうだ。しかし
例えば移転する資産に含み損がある場合、適格再編であると資産は”簿価引継”となるため、再編に伴い移転する資産の含み損を顕在化することができないこととなる。
 その一方で、非適格再編の場合は、移転する資産の時価による譲渡となることから含み損が顕在化されることとなる。つまり、企業の財務状況等によって適格・非適格の有利不利は異なるということとなるのだ。


◆ 恣意的な適格・非適格の選択は否認につながる可能性も


 実務上においては、組織再編を行う際、組織再編税制の特性についても考慮しながらプランニングを行うこととなるだろう。
 この際、再編時において適格再編・非適格再編のいずれかを選択適用できるというわけではなく、再編の実態と税法の規定を照らし合わせて、適格・非適格の判断が行われることとなるので、くれぐれも注意が必要だ。

 仮に、税負担の軽減を目的として恣意的に適格・非適格の要件に該当するように再編の内容等を変更している場合は、課税上弊害があるとされる可能性もある。

 例えば、100%グループ企業間での再編を行う際、通常であれば適格に該当するものの、金銭を交付する又は交付を受けた株式の継続保有が見込まれないとの理由で非適格再編とし、その移転資産に係る譲渡損失を多額に計上しているような場合は、現金を交付する又は交付を受けた株式の継続保有が見込まれないことの合理的な理由の整理が必要となろう。





(以上参考;週刊「税務通信」第3040号)
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