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                                                   2008年12月12日             
 


   激動する評価・換算差額等(累積その他包括利益)が
 意味するもの

      

  2008年3月期末決算に引き続き、2009年3月期の第2四半期(中間決算)においても、大手上場企業の純資産のうち、評価・換算差額等(累積その包括利益=AOCI)が大きく減少している。いうまでもなく金融危機による激しい円高・株安の影響によるものだ。評価差額の黒字減少は「その他有価証券」の含み益が吹っ飛んだためであるが、2007年前半までは順風満帆に膨らんできただけに落ち込みの激しさが目立つのである。
  外貨換算差額も昨年同期までの急激な円安で一旦好転したが、その後の激しい円高によって投資と資本の外貨換算調整額が再び膨張している。
  海外子会社投資は、親会社単体の貸借対照表では投資時の為替レートで換算された円貨で固定されているが、子会社の資本は円高によって期末レートで換算すると大きく目減りしている。投資と資本の連結相殺消去差額が換算差額となって純資産を減少させるのである。
  ところがわが国の経営者は評価・換算差額等の減少にあまり責任を感じているようには見受けられない。理由の第1は、為替相場や株式相場の動きは経営者にとってコントロールが及ばないからである。第2は、わが国の貸借対照表では「累積その他包括利益」ではなく「評価・換算差額等」と呼び、株主資本以外の純資産と区分するため、まるで株主持分ではないかのような錯覚を誘うからであろう。第3は、わが国では本業から生まれる当期純利益のみが業績とされ、「評価・換算差額等」の増減を経営者の負の業績とみる利害関係者が少ないからである。純資産の変動額のうちリスクから解放された成果だけを利益と考え、包括利益による業績報告に反対する傾向が強いが、「評価・換算差額等」を単なる市場変動のクッション勘定と受け止め、その増減に一喜一憂する必要はないと考えられているからである。たしかに昨今の激動ぶりからはそのように受け止めるのも無理からぬところがある。
  ところが、近い将来に予想される国際会計基準の導入後は、本業の純利益だけではなく、財務の巧拙を表すものとして、AOCIの増減も業績の一部とみられるようになる。したがって、株式の持合いや海外子会社投資の市場変動リスクポジションは大きな経営課題となることは間違いないといえよう。いやそのまえに、今回の金融危機を契機として経営者の意識は大きく変わるに違いない。株の持合いを抑制し、海外投資に長期外貨借入金を見合わせてリスクヘッジを考えている企業は増えるであろう。
  なお、国際会計・米国会計基準には「フェアバリューオプション」が設けられている。ひたすら金融商品の含み損益をAOCIに押し込めておくのではなく、リスクポジションをヘッジしながら当期損益に直接反映する会計処理である。わが国でも研究すべき時期かも知れない。



(以上参考;週刊「経営財務」第2897号)
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