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M&Aニュース

                                                  2009年01月22日             
 

  
   適格再編を行った際、移転資産の簿価の誤りに注意 
 
  調査により否認額が判明した場合、資本金等の額に影響も 

 グループ企業内の合併や分割など、税法上で規定する適格再編が行われた場合、移転資産や負債は“簿価”により引き継がれ、課税が繰り延べられる点は既にお伝えしたところ。仮に、移転資産等について償却超過額や評価損など税務上の否認額がある場合には、移転資産等の帳簿価額に税務否認金相当額を加算又は減算した金額を、移転時の簿価としなければならないこととされている。
 ところが実務上では、この簿価の修正(否認金の加算又は減算)を失念し、調査等で帳簿価額に誤りが判明するケースがみられるようだ。このような場合、言うまでもなく合併法人・被合併法人いずれも移転資産や負債の帳簿価額を修正しなければならないこととなる。
 資産や負債の簿価を修正した場合、資本金等の額も修正が必要となり、資本金等の額をベースに算出する「寄付金の損金算入限度額の計算」等にも影響することとなるので、くれぐれも注意したいところだ。

 税務否認額は合併法人等へそのまま引継ぐ

 税務上、資産の移転は形式のみであり実質的な経済実態は変わらないような適格再編が行われた場合、合併法人等から被合併法人等へ移転する資産や負債は、合併に係る最後事業年度終了時の帳簿価額で引き継ぎが行われることとされている。
 この帳簿価額とは、税務上の帳簿価額であるため、移転する資産や負債に税務否認金がある場合には、その否認金を帳簿価額に加算又は減算しなければならない。例えば、移転する減価償却資産に償却超過額などの税務上の否認金の額がある場合には、その超過額を増額した金額で引引き継ががれることとなるのだ。

  分割法人の移転資産の帳簿価額等
償却超過額
     10
帳簿価額
100

         ↓
   

  
分割承継法人の取得価額

               
取得価額
110

 調査により税務否認額が判明した場合、寄附金限度額計算にも影響
 
 仮に、合併後の被合併法人の最後事業年度以前の各事業年度の調査により移転した資産や負債について償却超過額等の税務否認額があることが判明した場合には、合併法人等・被合併法人等いずれも移転した資産や負債の帳簿価額に当該否認額相当額を加算又は減算しなければならないので注意が必要だ。(法基通12の2-1-1)。
 なお、移転資産や負債の帳簿価額を修正した場合、資本金等の額も修正しなければならないこととなる。具体的には、資本金等の金額をベースに算出することとなる寄附金の損金算入限度額の計算に直接影響するとともに、自己株式の取得に伴い減少させる資本金等の額にも影響を与えるのでくれぐれも注意が必要だ。

 (例) 適格分社型分割を行った際の移転資産の簿価に誤りがあった場合
 ・適格分社型分割を実施
 ・分割法人は分割承継法人に対して簿価100で資産を移転
 ・その後の調査で、移転した資産について税務上の否認金10があることが判明
 【再編時の処理】
 適格分社型分割時に資産100、負債60等を移転
  <分割法人>        <分割承継法人>
   負債60/資産100     資産100/負債    60
   株式40            資本金等の額 40
 【調査により簿価修正】
 調査で移転資産についての“税務否認金10”の計上漏れが判明
  <分割法人>      <分割承継法人>
  負債60/資産110    資産110/負債    60
  株式50            資本金等の額 50
                           
                 簿価修正により資本金等の額が増加
 一方、分割承継法人においては、受け入れた資産の取得価額の修正を行わないと、例えばその移転を受けた資産が減価償却資産である場合には、再編後の償却費が過少となったりするので注意が必要だ。
 
 再編時には移転資産の税務否認額も確認を

 当局の調査部門では、組織再編などグループ企業間取引への対応を重点項目として位置づけ、組織再編事例の資料収集や関係法令の論点整理などを積極的に行っている。
 そのため、組織再編を行った企業に対して調査が行われた場合、再編を行った主旨や企業の財務状況など取引関係の分析が行われるとともに、組織再編税制上の処理が適切であるか等について細かくみられることが考えられる。
 適格再編を行う際には、移転資産の帳簿価額に加えて、その資産の税務否認額の有無についても確認を行い、くれぐれも誤りのないよう処理を行いたい。
                                                            
(以上参考;週刊「税務通信」第3049号)
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