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M&Aニュース

                                               2009年2月10日
 



  相続・贈与にかかる納税猶予を租税特別措置法で規定

    事業承継税制の申告期限を平成22年2月1日までとする特例も
      

  平成21年度税制改正法案が1月23日閣議決定され、同日、国会に提出された。今回の改正で注目されていた事業承継税制については、租税特別措置法に規定が設けられている。事業承継税制では、中小企業の事業継続に必要となる非上場株式について、贈与税と相続税の納税が猶予され、一定の場合には納税が免除されることとなり、制度を組み合わせることも可能だ。事業継続が極めて厳しい状況となっている中小企業を税の面から支援することが目的とされる。
 法案では、措置法の70条の7に贈与税の納税猶予を、また、70条の7の2に相続税の納税猶予を規定している。
 税制改正大綱にも示されていたように、この贈与税と相続税の納税猶予制度は、猶予された税額の納付、免除等については、ほぼ同様の措置となっているが、猶予される税額はそれぞれ異なる。
 贈与税の納税猶予制度では、贈与税の全額が贈与者の死亡の日までその納税が猶予されるのに対し、相続税の納税猶予制度では、課税価格の80%に対する相続税額が後継者の死亡等の日まで猶予される。
 また、適用開始日については、贈与税の納税猶予制度が、平成21年4月1日以後に贈与により取得をする非上場株式等にかかる贈与税について適用されるのに対し、相続税については平成20年10月1日以後に相続又は遺贈により取得をする非上場株式等にかかる相続税について適用される。
 なお、この相続税の納税猶予制度に関連しては、平成20年10月1日から平成21年3月31日までの間に開始した相続については申告期限の特例が設けられており、相続の開始があったことを知った日の翌日から10月以内とされている相続税の申告書の提出期限を「10月を経過する日又は平成22年2月1日のいずれか遅い日まで」として経過措置が設けられているのでこちらも確認しておきたい。


納税猶予を措置法で


 平成21年度の税制改正法案が国会に提出された。ただ、昨年度と同様に国会はいわゆるねじれた状態であるため、4月1日までに法案が成立するかどうかについては、今後の国会の動向を注視する必要がある。
 ところで、今回の改正法案ではかねてより注目されていた事業承継税制が創設されていることから、その内容を確認しておきたいところだ。
 事業承継税制は、20年改正で、21年の改正において制度化することが明記されており、事業継続が極めて危機的な状況にある中小企業の非上場株式について、事業の後継者に相続されたその株式の相続税の納税を猶予、また一定の場合には免除するというもの。今回の21年改正では、当初、創設が予定されていた相続税に併せて、贈与税についても制度の対象とされたことから、今後の使い勝手の良さに期待が持たれている。
 また、20年の改正では、この事業承継税制の創設に併せ、相続税の税額計算方式をいわゆる遺産取得方式に見直すことについても記述があったわけだが、今回の21年改正では見直しについては見送られ、事業承継税制だけが租税特別措置法に新たに創設されている。


納税猶予分の贈与税額


 贈与税の納税猶予は措置法70条の7に規定が設けられ、その1項に制度の概要が、2項以下に定義等がきていされている。
 この贈与税の納税猶予では、経済産業大臣の認定を受けた一定の非上場株式等を、その親族である一定の要件を満たす後継者である「経営承継受贈者」に贈与をした場合には、その非上場株式等の贈与に係る贈与税の全額について、その贈与者の死亡の日まで納税が猶予される。
 この場合、納税猶予の対象となる非上場の株式等は、贈与前から既にその「経営承継受贈者」が保有していたものを含め、発行済議決権株式等の総数等の3分の2に達するまでの部分が上限とされ、制度上、その非上場株式等は「特例受贈非上場株式等」と規定される。
 なお、猶予された納税が免除される場合については、「経営承継受贈者」が「特例受贈非上場株式等」を死亡の時まで保有し続けた場合又はその贈与者が死亡した場合とされている。
 また、「特例受贈非上場株式等」の贈与の日の属する年分の贈与税の申告から「5年」、又は、「特例受贈非上場株式等」を贈与した者の死亡の日、のいずれか早い期間と規定される「経営贈与承継期間」経過後に、「特例受贈非上場株式等」に係る会社に対し破産手続開始の規定又は特別清算開始の命令があった場合も猶予された全額が免除される。
 そして、「経営承継受贈者」と一定の関係を有する者以外の者へ「特例受贈非上場株式等」を一括して譲渡した場合は、その譲渡対価又は譲渡時の時価のいずれか高い額が猶予税額を下回るときに、その差額分の猶予税額が免除される。
 ただし、「経営承継受贈者」が「特例受贈非上場株式等」を死亡の時まで保有し続けた場合又はその贈与者が死亡した場合以外に猶予税額が免除される場合にあっては、過去5年間に「経営承継受贈者」及びその者と生計を一にする者に対して支払われた配当等に相当する額は、免除の対象とはならない。


納税猶予分の相続税額


 一方、相続税の納税猶予については、措置法70条の7の2に規定されており、経済産業大臣の認定を受けた一定の非上場会社である。「認定承継会社」の代表権を有していた非相続人から、相続又は遺贈によりその「認定承継会社」の非上場株式等を取得した一定の要件を満たす後継者である「経営承継相続人等」が納付すべき相続税額のうち、その非上場株式等に係る課税価格の80%に対応する相続税額については、その「経営承継相続人等」の死亡等の日までその納税が猶予される。
 相続にかかる場合、納税猶予の対象となる株式等は、「特例非上場株式等」と規定され、相続開始前から既に保有していたものを含めて、その「認定承継会社」の発行済議決権株式等の総数等の3分の2に達するまでの部分が猶予の対象となる。
 なお、「経営承継相続人等」の猶予税額の算定は、「経営承継相続人等」以外の相続人の取得財産を不変とし、「経営承継相続人等」が、通常の課税価格による「特例非上場株式等」のみを相続するものとして計算した場合の「経営承継相続人等」の相続税額から、課税価格を20%に減額した「特例非上場株式等」のみを相続するものとして計算した場合の「経営承継相続人等」の相続税額を控除した金額とされている。


贈与と相続で異なる適用開始日


 事業承継税制の適用日は、贈与にかかる場合と、相続にかかる場合で異なるので、確認しておきたい。法案の附則63条に「非上場株式等についての贈与税又は相続税の納税猶予に関する経過措置」が設けられており、その1項で「贈与」の場合については、法律の施行日以後の贈与が対象になるとされているので、今後の国会の動向等により、法律の施行日が平成21年4月1日からとなるのかが問題となる。
 また、相続については、平成20年10月1日以後の贈与又は遺贈が対象となると規定されている。


申告書の提出期限の特例


 この相続税の納税猶予制度に関連しては、法案付則第65条に「相続税の申告期限等に係る特例」が規定されており、平成20年10月1日から平成21年3月31日までの間に開始した相続については申告期限の特例がもうけられている。
 この特例は、被相続人が相続の開始の直前に有していた財産の中に非上場株式等が含まれており、かつ、その被相続人がその非上場株式等に係る会社の代表権を有していた場合に適用されるとあり、事業承継税制を射程においた特例となっている。
 具体的には、相続税法27条で、相続の開始があったことを知った日の翌日から10月以内と規定されている相続税の申告書の提出期限について、「10月を経過する日又は平成22年2月1日のいずれか遅い日まで」と規定しているので、こちらも確認しておきたい。


(以上参考;週刊「税務通信」第3052号)
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