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M&Aニュース

                                               2009年2月16日
 



  リストラに伴う資産処分では課税売上割合の注意

    「準ずる割合」の適用は課税期間内の承認が必要
      

  急速な景気の悪化に伴い、派遣切り等の人員削減が問題となっているが、リストラの一環で土地や有価証券、売掛金等の金銭債権等の資産を処分する企業も多いことだろう。こうした場合、非課税売上の増加によって課税売上割合が95%未満となることがあり、仕入れに係る消費税額の計算に個別対応方式を適用する場合には、「課税売上割合に準ずる割合」の適用も検討する必要がある。
 しかし、「準ずる割合」の適用は、「届出」ではなく、承認申請を行って合理的な算定割合であることについての審査を受けた上で、適用しようとする「課税期間内に承認まで」を受けなければならないので、余裕を持って申請する必要があるので十分留意したい。


消費税非課税資産である土地等の売却で課税売上割合が急低下する場合も


 周知のとおり、「課税売上割合」は、その課税期間中に行った「資産の譲渡等の対価の合計額」に占める「課税資産の譲渡等の対価の合計額」の割合であり(消法30E)、資産の譲渡等の対価の額ではあっても、非課税とされる資産の譲渡等の対価の額は、基本的に、分母に含まれる一方、分子には含まれない(課税売上割合の計算上、分母・分子の金額について具体的に注意すべき点については法令に定めがある:消法30E、31、消令48、51)。
 したがって、その課税期間中に、非課税資産である土地や有価証券、金銭債権を他に譲渡した場合には、分母の資産の譲渡等の対価の合計額が大きくなり、課税売上割合が95%未満となる場合もある。
 課税売上割合が95%未満となった課税期間については、「個別対応方式」又は「一括比例配分方式」によって、仕入に係る消費税額を計算することとされており(消法30A一、二)、いずれの方式によった場合も、課税売上割合が95%以上である場合のように、仕入れに係る消費税額の全額を控除することはできないことになる。
 特に土地の処分の場合には、非課税資産の譲渡の対価の額が多額にのぼることがあり、平時、課税売上割合が95%を下回ることがなかったような事業者であっても、課税売上割合が急激に低下するケースもみられるところだ。


個別算定方式では、「課税売上割合に準ずる割合」の適用が有利となる場合


 ところで、課税売上割合が95%未満となって、「個別対応方式」を適用する場合には、仕入税額控除額の計算に際して、所轄税務署長の承認を受けて「課税売上割合に準ずる割合」を課税資産の譲渡等とその他の資産の譲渡等に共通して要する課税仕入れ等の税額に乗じる、という方法が認められている(消法30B)。
 また、土地の譲渡が単発のものであって、その土地の譲渡がなかったとすれば、事業の実態には変動がないと認められる場合には、@その土地の譲渡があった課税期間の前3年に含まれる課税期間の通算課税売上割合(消費税法施行令第53条第3項《通算課税売上割合の計算方法》に規定する計算方法により計算した割合、Aその土地の譲渡があった課税期間の前課税期間の課税売上割合、のいずれか低い割合によって、「準ずる割合」の承認を申請できることとされている(国税庁 質疑応答事例「たまたま土地の譲渡があった場合の課税売上割合に準ずる割合の承認」)。
 したがって、リストラ等による非課税資産の処分によって、課税売上割合が95%未満となった場合であっても、「準ずる割合」の承認等によって、事業者が仕入税額控除の計算方法の選択をする余地があり、選択の結果、控除額に有利・不利が生じることとなるので、十分に検討する必要があるといえよう。


準ずる割合」は適用しようとする課税期間内に所轄税務署長の承認を得ることが必要


 しかし、ここで注意したいのは、「準ずる割合」の適用は、「所轄税務署長の承認を受けた日の属する課税期間」とされており、準ずる割合を適用する課税期間内に申請さえ行えば、適用があるというわけではないという点だ。
 これは、準ずる割合については、個別対応方式による仕入に係る消費税額の計算において、配分しようとする課税・非課税共通用の課税仕入れごとに合理的な割合を決めることから、原則として、同一の割合をすべての共通用課税仕入れに適用することはできず、審査では、共通用の課税仕入の内容等に応じた合理的な基準であるかどうかを判断するため、時間を要するということのようだ。
 実際には、審査に要する期間はケース・バイ・ケースであるが、もとより、審査の結果、却下されることもあることから、3ヶ月程度の余裕を持って申請すべきと考えられる。
 したがって、3月決算法人で課税期間が一事業年度の場合、21年3月期については、もはや残された時間は少ないということになるが、少なくとも、来期に非課税資産の処分を行うことが予めわかっており、課税売上割合が95%未満となるのが見込まれるような場合にあっては(この場合、準ずる割合の承認申請は翌期中ということになるが)、当期中から来期の仕入税額控除に関して最も有利となる課税売上割合の計算方法の検討を行う等の対応が必要となろう。




(以上参考;週刊「税務通信」第3052号)
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