2009年3月04日
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再編年度における受取配当等の益金不算入額の計算の留意点
負債利子の控除額計算の簡便法は平成10年4月に存する会社のみ適用可
法人が他の法人から配当等を受けた場合、法人税法上では、二重課税を防止する観点から配当金額等の一部又は全額が益金不算入とされる点は既報である。この益金不算入の金額は、配当等の金額から”その事業年度に支払う負債の利子の額の合計額のうち、株式に係る金額”を控除して算出する仕組みとなっている。
ところで、”負債の利子の額のうち株式に係る金額”の計算は、その事業年度において支払う負債の利子の合計額に、総資産のうち株式等の占める割合を乗じて算出する「総資産按分法」が原則とされているが、平成10年4月1日に存する会社については、基準年度の実績をベースに算出することができることとされている(以下「簡便法」)。
この「簡便法」は、適格合併を行った合併法人も適用することができるが、そもそも平成10年4月1日に存している場合のみ適用が認められる特例であるため、適格合併を行った合併法人の場合は、同日に合併法人と被合併法人のいずれも存していなければこの「簡便法」の適用は認められないのでくれぐれも注意が必要だ。
◆原則は毎期、総資産の帳簿価額の計算等が必要
受取配当等の益金不算入の金額は、収入した配当等の金額から株式等に係る負債の利子の額の合計額を控除した後の金額とされており、この負債の利子の額の合計額は、@連結法人株式等及び関係法人株式等のいずれにも該当しない株式等に係る配当等と、A関係法人株式等に係る配当等とに区分して「総資産按分法」により計算した金額となっている。
総資産按分法とは、その事業年度に支払う負債の利子の額の合計額に、当期末及び前期末の総資産のうち株式等の占める割合を乗じて算出する方法で、具体的には以下のとおりとなっている。
■配当等の額から控除する負債の利子の額(総資産按分法)
<連結法人株式等及び関係法人株式等以外の株式等に係るもの>
その事業年度に 当期末及び前期末の連結法人株式等及び 当期末及び前期末の受益権の帳簿
支払う負債の利子 × 関係法人株式等以外の株式等の帳簿価額の合計額 + 価額の二分の一相当額の合計額
の額の合計額 当期末及び前期末の総資産の帳簿価額の合計額
<関係法人株式等に係わるもの>
その事業年度に 当期末及び前期末の関係法人株式等の
支払う負債の利子 × 帳簿価額の合計額
の額の合計額 当期末及び前期末の総資産の帳簿価額の合計額
◆簡便法は決算月に関係なく平成10年4月に存している会社のみ対象
ところが、法人税法上では、配当等の合計額から控除する株式に係る負債の利子の額の合計額を、「平成10年4月1日から平成12年3月31日までの間に開始した事業年度(以下、基準年度)」の負債の利子の額等をベースに、その事業年度に支払う負債の利子の額の合計額を算出することができる、「簡便法」が設けられている(法令22B)。
これは、平成13年4月1日以後に適格合併を行った法人についても適用が認められているが、この場合、被合併法人における株式等に係る負債の利子の額の実績を含めて計算しなければならないこととなる。
■配当等の額から控除する負債の利子の額(簡便法)
その事業年度に 分母の事業年度における株式等に係る負債の利子の額として計算した金額の合計額※
支払う負債の × H10,4.1からH12.3.31までの間に開始した各事業年度に支払う負債の利子の額の
利子の額 合計額
※ 小数点以下3位未満の端数は切り捨て
また、この「簡便法」は、決算期に関係なく平成10年4月1日に存していることが要件とされているため、適格合併を行った合併法人の場合、平成10年4月1日に合併法人と被合併法人のすべてが存していなければ「簡便法」の適用は受けられないので、くれぐれも注意が必要だ。仮に、被合併法人が平成10年4月1日に存在していない場合には、「簡便法」ではなく「総資産按分法」により負債の利子の額の合計額を計算しなければならないこととなる。
(以上参考;週刊「税務通信」第3054号)
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