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M&Aニュース

                                               2009年4月06日
 



  株式評価損の税務認容規定を明確化へ
  
    50%程度以上下落の評価損    

  
  3月期末に向け、株価の推移が注目される中、上場有価証券等の著しい価額の低下の判定基準を示した法人税基本通達9−1−7の内容を明確化し、減損処理した上場株式の評価損について損金認容しやすくすることが政府の金融対策のひとつとして検討されている。多額の評価損の計上を見込んでいた会社にあっては、朗報となりそうだ。政府の追加金融対策に盛り込まれれば、通達改正ではなく、当該取扱いを解説したQ&Aとして公表される見込みだ。こうした動きに対し、早くもその対応を検討する会社もある。過年度に減損処理をして有価証券の処理や税効果への影響などである。


◆株式評価損、多くは有税処理


 会計上、売買目的有価証券以外の有価証券のうち、時価のあるものについて時価が著しく下落したときは、回復する見込みがあると認められる場合を除き、時価をもって貸借対照表価額とし、評価差額は当期の損失として処理しなければならない(金融商品会計基準20項)。
 どの程度の下落が「著しく下落した」に該当するかの目安については、金融商品会計に関する実務指針において示されている。個々の銘柄の有価証券の時価が取得原価に比べて50%程度以上下落した場合には「著しく下落した」ときに該当するとし、概ね30%未満の場合には、一般的には「著しく下落した」ときに該当しないものとされる(金融商品会計実務指針91項)。さらに、その間の30%以上50%程度未満の下落に関しても、減損処理の検討が必要になる場合があるとし、個々の企業において時価が「著しく下落した」と判定するための合理的な基準を設け判定するものとしている(同実務指針284項)。また、回復があるとは認められない場合として、株式の時価が過去2年間にわたり著しく下落した状態にある場合や株式の発行会社が債務超過にある場合などを示している。
 この取扱いに基づき、社内で減損ルールを定め、50%程度以上下落していない場合、例えば、40%の下落であっても、減損処理をしている会社は多い。
 一方、税務上も一定の要件を満たす評価損については、損金算入を認めている。具体的には、帳簿価額の概ね50%相当額を下回ることとなり、かつ、近い将来その価額の回復が見込まれない場合である(法人税基本通達9−1−7)。
 しかし、このように税務上も評価損の損金算入を認めているものの、評価損を自己否認し有税処理している会社も多いという。今3月期についても、「数百億円規模の評価損が見込まれる。否認された場合の影響は計り知れない。文書など公式なものがなければ怖くてできない」と話す会社もあり、50%以上の下落があっても税務上は自己否認することを検討している会社も少なくないようだ。


◆「回復の可能性」の判断に差?


 損金算入に消極的な理由としては、会計上は、回復の見込みを積極的に説明できない場合に、減損処理が求められるのに対し、税務上は、「回復が見込まれない場合」に評価損の計上が認められるという規定ぶりの違いがあげられる。過去には、「具体的に証拠資料等を提出すべきであるところ、請求人は、有価証券報告書総覧を提出するのみであり、T銀行株式の価額が近い将来回復が見込まれないものであることについて具体的な証拠を提出していない」ことが更正処分理由にあげられた事例もある。回復の見込みがないことを証明しなければならないと解されている点も判断を迷わせている要因のようだ。


◆損金算入OKで増える選択肢


 しかし、従来から、「回復見込みの判断について、税務と金融商品会計との間で実務上それほど大きな差はない」との見解が示されており、会計上減損処理した50%程度以上下落の評価損についての損金認容は可能であると考えられるが、会社間で対応に差があることから、あらためて一定の見解を示すものと見られる。
 今回、税務上の判断基準が明確化されれば、多額の評価損が否認されるリスクも軽減されることから、方針転換する会社も増えるものとみられる。中には、早くも税務上の対応を検討する会社もある。そこで検討課題にあがっているのが、過年度に減損処理を行った有価証券の処理である。例えば、過去に30%減損したものが、今期さらに20%程度下落し、取得原価の50%程度になっているようなケース。会計上、一度減損処理したものは、さらに著しい下落がなければ減損処理の必要はないが、税務上の損金経理要件を満たすために、会計上も追加の評価減を行うかというものだ。仮に、社内ルールを変更したり、社内ルール未満の下落幅で評価減を行うこととなった場合には、「保守的な処理」との見方がある一方、「社内ルールを変更してまで評価減することは認められない」(会計士)という否定的な声もある。過年度の処理や各社の減損ルールにより、対応は別れそうだ。
 上記のような点に加え、税効果への影響も予想される。例えば、今期、課税所得が生じる会社で保有有価証券の減損処理が見込まれる会社において、評価損を自己否認し、繰延税金資産の計上を予定していたケースなどだ。
 また、逆に課税所得が生じない会社では、繰越欠損金の関係から評価損をどのように処理するかなどの検討点がありそうだ。






(以上参考;週刊「経営財務」第2912号)
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