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M&Aニュース

                                               2009年4月13日
 



  自社株売買契約を有効と認定し納税者主張を
  認める判決
  
    東京地裁 持株会移転目的の寄託契約とした
    相続税課税処分取り消す     

  
  東京地方裁判所(民事第38部・杉原則彦裁判長)は平成20年10月24日、被相続人が所有していた非上場株式が相続財産に含まれるか否かで争われた事件で、原告納税者の主張を全面的に認める判決を行った(18年(行ウ)739号)。
 事件は、A社会長であった被相続人から持株会への株式移転に関し、被相続人が生前に同社総務部長との間で売買契約を締結、相続開始後に持株会設立され、総務部長から持株会へ株式が移転していることから、株式は相続開始時においては被相続人に帰属しているとされたことで争いとなっていたもの。
 国側は、一連の取引から、本件売買契約は持株会の設立を停止条件として株式を移転させるもので、総務部長は株式を一時的に保管していたに過ぎない寄託契約としたが、裁判所は、総務部長に経営参画の権利がなかったとはいえず、持株会以外に売却することも不可能でなかったことなどから、被相続人と総務部長との売買契約は有効に成立していると認定、株式は相続財産に含まれないと判断した。
 被相続人の生前における総務部長との売買契約が真実のもので有効であるか、株式の移転の時期が主な争点となったもので、本件では持株会の実態等については争いの対象となっていない。判決は納税者勝訴で確定している。


◆国側は寄託契約とみて株式移転と認めず


 問題となったA社株式については、被相続人が会長であるA社の総務部長と被相続人の間で、1万3,000株を652万円で売買する契約が締結され、総務部長は購入資金を銀行から借入れて被相続人に支払いを行った。契約では、持株会以外の者へ譲渡しないこと、売買契約は設立後の持株会に引き継がれることなどが取り決められていた。
 事件は、被相続人が所有していた株式は相続開始時にはすでに総務部長に移転しているとして、相続財産に含めずに申告を行ったjことから更正処分が行われたことによるもの。
 国側は、売買契約書等による一連の取引に対し、@総務部長にはA社の経営に参与する権利や配当を受ける権利がなく、株式を投資することもできないこと、A自らの計算で買主としての義務を履行していないこと、B当事者の真意は株式の所有権を終局的に総務部長に移転することになかったことから、取引は、売主を被相続人、買主を設立が予定されていたA社持株会としたもので、その設立を停止条件として持株会に株式を移転させる契約であるとみたわけだ。
 本件の取引は、持株会設立までの間、総務部長が株式を一時的に保管するという意図があったものであることから寄託契約に当たり、相続開始時に持株会がなかった以上、株式は被相続人に帰属するものであるとし、売買価額652万円に対し、相続税評価価額は類似業種比準方式により11億9,800万円であるとした。


◆総務部長との売買契約を有効と認定


 裁判所はまず@について、総務部長はA社従業員で会社の意に反して議決権を行使することは困難な立場ではあるが、行使しなかったから直ちに議決権がないとはいえないこと、株式は当時信託契約の対象でA社全株式に配当はなかったことなどから、配当の権利がなかったとはいえないこと、652万円以上の価格で売却することが不可能ではなかったことが認められるとした。
 また、A総務部長の借入についてはA社による700万円の定期預金の担保提供があること、返済のために役職手当てとして18万、5,000円を支給していたことで、自己の計算において買主の義務を果たしていないとする国側の主張に対しては、持株会を設立して円滑な事業承継を実現するために働いた総務部長に報いるためと認められ、経済的負担がかからないように配慮することは合理的であるとした。そして、こうした配慮をしたからといって、総務部長が売買契約で所有権を取得したことを否定する根拠にはならないとした。
 Bについては、当事者の真意は最終的には持株会が株式を所有することで円滑な事業承継を図ろうというものと認められるとしたが、このことで総務部長が株式を取得したことを否定することとはできないとした。
 売買契約で総務部長が株式の所有権を取得したうえで、後に設立される持株会に株式を売却することによっても、持株会が株式を所有することによる事業承継の実現は可能であるからだとしている。
 また、株式を持株会に所有させる方法による事業承継で相続税を低く抑える意図が認められるが、そのこと自体は総務部長が株式を取得したという事実と両立しうるものであるとした。





(以上参考;週刊「税務通信」第3061号)
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