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M&Aニュース

                                               2009年5月20日
 



  上場株式の評価損の損金算入には株価の回復可能性
  の判断が必要
  
    
  財務諸表監査を受ける法人の形式基準の取扱いも明らかに  

  
 国税庁は4月3日、同庁のHPに「上場有価証券の評価損に関するQ&A」を公表し、上場株式の評価損を損金算入するに当たっての取扱いの明確化を図っている。
 ただ、Q&Aの公表後も、会計上減損処理を行っても税務上評価損を計上することに、消極的な姿勢を示す企業も多く、また、Q2に関連しては、企業の関係団体に各方面から、企業会計と税務の基準を同様にすることの可否について、問い合わせが多数寄せられていたようだ。
 本誌ではQ&Aの公表後も引き続き取材を行ってきたが、今般、財務諸表の監査を受ける法人が、税務上、上場株式の評価損を計上する上で策定する一定の形式基準を、企業会計士の減損処理の基準と同一にすることについても問題ないと確認した。
 この21年3月期の申告で、上場株式の評価損の計上を検討する企業実務に影響が大きいことから、改めて確認しておきたい。


◆期末に回復可能性の判断が必要


 税務上、上場有価証券の評価損の損金算入が認められるためには、事業年度末の株価が帳簿価額の50%程度以上下落したことと、近い将来その株価の回復が見込めないことの二つが要件となることが、通達に定められている。したがって、税務上、事業年度末の株価が帳簿価額の50%以上下落したことだけをもって評価損の計上が認められるということにはならず、期末における株価の回復可能性の判断が必要とされている。


◆ 会計と同時期の損金算入基準の策定も可能


 この税務上の回復可能性の判dなについては、Q&AのQ1において、過去の市場価格の推移や市場環境の動向、発行法人の業況等を総合的に勘案した合理的な判断基準であれば尊重されることとされている。
 また、Q2にといて、監査法人や公認会計士によって財務諸表の換算を受ける法人が、株価の回復化可能性の判断として過去一定期間における株価動向に関する一定の形式基準(例えば、期末前6ヶ月間の平均株価など)を策定し、これに基づいて損金算入することも、客観性が確保されているものとして認めている。
 さらに、Q2の(注)1においては、この一定の形式基準について、「財務諸表の監査を経ているものであれば、この損金算入の基準に対するチェックを受けたものと同様に取り扱うことができる」としている。
 この記載について、今般、本誌が確認したのは事業年度末の株価が帳簿価額の50%程度以上下落したことだけをもって、株価の回復可能性の判断基準とすることは適当ではないものの、財務諸表の監査を受ける法人においては、株価の回復可能性の判断基準を、「企業会計上の減損処理の基準と同一にする」としても、差し支えないということ。
 つまり、会計上も「株価が50%程度以上下落した場合には、合理的な反証がない限り、回復する見込みがあるとは認められない」とし、一定の回復可能性の検証を行うことが前提となっていることを踏まえれば、財務諸表の監査を受ける法人において、損金算入の一定の形式基準を「企業会計上の減損処理の基準と同一にする」とすることも認められるということである。
 このような基準とすることを選択した場合には、企業会計で減損するタイミングにおいて、税務上も損金算入されることとなるが、Q2の解説にもあるとおり、恣意性が排除されたものでなければならないことから、継続的にこの基準を使用する必要があるということに留意したい。
 なお、必ずしもこの基準によらなければならないということではないため、企業によっては、会計上の減損処理の基準と税務上の回復可能性の判断基準の内容を異にすることも当然のことながら認められることもQ2の解説(2)に明らかにされている。
 いずれにしても、税務上の回復可能性の判断基準をどのようにするかは、各企業において明確にする必要があり、その基準を書面に残す等、損金算入の判断に疑義が生じないようにしておく必要があるだろう。


◆ 新規に策定した形式基準も合理性あり


 Q&AのQ2のA(3)では、株価の回復可能性を判断するための形式基準について、新規に策定した場合、または、変更した場合であっても、その基準を監査を担当する監査法人のチェックを受けながら継続的に使用するのであれば、新規策定又は変更を行った最初の事業年度から、合理的なものとして、取り扱うことができるとしている。
 これまで株価の回復可能性の判断基準を明確にしていなかった企業や、例えば2年間にわたり株価が50%以上下落した状況とすることをその基準としてきた企業が今回、このQ&Aが公表されたことがきっかけとして、今3月期において、新規に基準を策定すること又はこれまでの基準を変更することも可能であるので、あわせて留意する必要がある。
 もちろん、自社の収益状況に合わせて、この新たに策定した基準の使用を取りやめたり、正当な理由なく変更するような不合理な場合は、合理的な判断と認められず、基準を継続的に使用することが求められるのは言うまでもない。







(以上参考;週刊「税務通信」第3064号)
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