運営人:潟Gムアンドエーインタークロス
後援:税務研究会

M&Aニュース

                                               2009年6月10日
 



  リート合併時の負ののれん 導管体判定から概ね除外
  
  
  負ののれん除外でパススルー要件の充足も簡易に

  
  今後は不動産投資法人(REIT)同士の合併機運の高まりが見込まれるが、これを受け平成21年度税制改正では、@導管体判定要件のベースを「配当可能所得」から「配当可能利益」に見直し、Aその上で、合併時に生じる負ののれんは「配当可能利益」に概ね含めないこととし(=負ののれんを一時に全額計上しないこととし)、Bまた、合併法人側が支払う「配当見合いの合併交付金」は被合併法人側の損金算入対象とするなど、「投資法人に係る課税の特例」(措法67の15)の一部を見直している。
 一定の要件の下、不動産投資法人が共同事業要件をクリアした適格合併を行える点は、国税庁が先般公表した文書回答で整理されているが、仮に適格合併を行えたとしても、会計上多額の負ののれんが計上される場面では、税法上の規定の利用方法次第では導管体判定要件をクリアできず、法人税課税の問題が生じる可能性があるので、同改正の内容には気をつけたいところだ。


◆ 「配当可能利益」ベースで導管体判定を見ることに


 まず、主な改正項目の1点目は、不動産投資法人が法人段階で課税されず出資者段階で課税される仕組み(いわゆるパススルー課税)をより徹底することを目的とした「導管体判定要件の見直し(=出資者への支払配当金損金算入要件の算定式の見直し)」がある。
 導管体とは、実質的には運用資産の集合体に過ぎない会社組織のこと。税法上、不動産投資法人が導管体であると認められれば、、一定の要件の下、不動産投資法人から出資者へ分配する配当金を不動産投資法人側で損金算入することが認められる。法人段階で課税されないことにより出資者が得る分配金が多くなる点に、リートの金融商品としての魅力があると言われる。
 この導管体の判定要件をクリアするためには、従前は「配当可能所得の90%超」を出資者へ分配すること等とされていたが、21年度改正では、この点を「配当可能利益の90%超」を分配することと見直し、同要件をクリアしやすくすることで、法人税課税されるリスクを軽減している(措法67の15@ホ)。
 例えば、会計上の収益が100,不動産の減損損失が60、当期利益が40、手持ち資金40とした場合、従前は、会計上の当期利益(=手持ち資金)が40しかないにも関わらず、税務上は「配当可能所得」100(税務上は減損損失60の損金算入を原則認めないので税務上の利益は100となる)の90%超を分配しないと(=手持ち資金40を超えた過大な分配をしないと)導管体判定要件を満たせなかったが、今後は、当期利益40と概ね一致することが多い「配当可能利益」40の90%超を分配すること等が要件となるため、手持ち資金40を超えた過大な分配を行わずとも同要件を満たせるということだ。
 不動産市況の悪化により、保有不動産の減損処理を行う不動産投資法人の数は多いと見られるが、上記改正により、仮に減損処理をしても導管体判定要件をクリアできず、法人税課税の問題が生じてしまうというリスクは軽減されることとなる。


◆ 投資法人同士の合併や会計基準の改正に合わせた見直しも


 これに加えて、2点目としては、先述した導管体判定を行う際に「負ののれんを一時に全額加算しない」と見直した点がある。
 これは、@今後、不動産投資法人同士の合併の増加が見込まれるが、その際に「負ののれん」が生じた場合、手元のキャッシュフローを大幅に超えた利益計上額が生じる恐れがある点や、A会計上、現行では負ののれんを最長20年に渡って規則的に償却する(=利益計上する)こととしているが、先般、「企業結合会計基準」が見直されたことにより、平成22年4月1日以後に行われる企業結合で生じる負ののれんは、その事業年度で一時に全額利益計上するとされた点が背景にある。(会計基準33等)。
 例えば、合併法人側の手元資金が20、合併により生じた負ののれんが100、当期利益120とした場合、従前は、会計上の手持ち資金が20しかないにも関わらず、当期利益は120となってしまうため、手持ち資金20を超えた120をベースに過大な分配をしないと導管体判定要件を満たせなかった。しかし、21年度改正により、原則として今後は負ののれんを当期利益から一旦除外した後、”負ののれんを100年で除した後の金額”、つまり上記例でいえば1(=負ののれん100×12ヶ月/1,200ヶ月)を合併事業年度の当期利益20に加算し導管体判定を行うこととなるため(=21をベースに90%超分配要件を見るため)、法人税課税の問題は生じることが少ないと見られる(措令39の32の3E、省令22の19AB)。
 ただし、上記例はあくまで原則規定であり、利益をほとんど計上できないような不動産投資法人によっては、負ののれんを100分割してもなお導管体判定要件をクリアできず、法人税課税の問題が生じる場面も想定される。これを受け、省令では別途、「物件貼り付け方式」と呼ばれる特例規定を設け、不動産投資法人同士が合併した後、合併による移転資産(土地等)を売却した時のみ、一定の計算式に基づく金額を「配当可能利益」に加算して導管体判定要件を行うことができるとしている。同特例を利用すれば、合併後に土地等を売却しない限り税務上負ののれんが生じず、導管体判定要件をクリアできなくなる恐れは減少するということだ。


◆ 配当見合いの合併交付金被合併法人側で損金に


 3点目としては、不動産投資法人同士の合併の際に被合併法人側の出資者に支払われることがある金銭が損金算入対象となる旨を明確化した「配当見合いの合併交付金の取り扱いの明確化」がある。
 これは、二つの場面に係る改正となる。一つ目は、投資法人に関する法令の見直しにより、合併の際に投資口調整比率の関係で端数が生じる場合には、被合併法人の投資主(=出資者)に合併法人側が”現金”を交付できるとされたことを受け(投資法人の計算に関する規則2A三等)、その現金も損金算入対象となる旨を明確化したこと。
 二つ目は、例えば、不動産投資法人Aが不動産投資法人Bを吸収合併する際に、B法人にみなし事業年度が生じたのであれば、B社はその事業年度中に「配当可能利益」の90%超を出資者に分配しないと導管体判定要件をクリアできないが、通常、その分配のためには、投資主総会(=株式会社の株主総会に相当、6ヶ月に一度開催することが多い)で分配額に係る決議を行うこと等を要する。  しかし、合併期日までに投資主総会を開催できるとは限らず、仮に配当決議を行えないのであれば、導管判定要件はクリアできないこととなってしまう。これらの点に配慮し、上記例で言えば、A社がB社に代わって、”みなし事業年度”におけるB社の「配当可能利益」相当額の90%超を出資者に支払えば、B社側において導管体判定要件をクリアでき、法人段階で課税の問題が生じることはなくなる旨を規定している。






(以上参考;週刊「税務通信」第3065号)
       (このコンテンツの使用に関し(株)税務研究会の許諾を受けています。)






Copyright (C) 1999- M&A Intercross Co.,Ltd , All rights reserved.
omo