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                                               2009年6月19日
 



  東京地裁 DESについて債務消滅益を認め公正処分を支持
   

  DESによる取引を適格現物出資として帳簿価額による譲渡と認める

  
  株式会社の債務を株式に転化する手法、いわゆるDES(Debt Equity Swap:デット・エクイティ・スワップ)に関連して、債務消滅益が生じるか否かを主な争点とした訴訟で、東京地裁は課税当局の更正処分を適法とする判決を行った(平成21年4月28日判決言渡 平成19年(行ウ)第758号)。
 これは、関連会社から再建の現物出資を受けて、その関連会社へ新株を発行したDES取引について、債務消滅益の計上漏れがあるとして行われた更生処分等に対し、処分の取消しを求めていた事案。
 東京地裁民事第2部の岩井伸晃裁判長は、法令上、DESの実現については何らの規定が設けられて江おらず、平成18年税制改正前にDESついて一般的な税務上の取り扱いは明確になっていないとした。
 しかしながら、事案におけるDESについては、適格現物出資に該当し、債権の評価を券面額又は評価額のいずれで行うかという議論は影響を及ぼさず、現物出資の直前の帳簿価額による譲渡をしたものとして所得金額を計算することとなり、債務消滅益が発生したものと認められる、として課税当局の更正処分を支持する判断を示している。


◆ DESについて既存の関係法令を適用と判示


  事案においては、DESにより債務消滅益が生じるか否かが問題となっているが、判決では、法令上、DESを直接実現する制度については、何らの規定が設けられておらず、既存の法制度を利用するほかはないことから、既存の法制度を規律する関係法令の適用を免れないとしている。
 そして、DESについて@会社債権者の債務者会社に対する債権の現物出資、A混同による債権債務の消滅、B債務者会社の新株発行及び会社債権者の新株の引き受け、という各段階の過程で、法人税法等の関係法令の適用を受けるとした。


◆ 適格現物出資であれば法62条の4を適用


 原告である債権の現物出資を受けた法人は、債務者会社に対する債権を現物出資する場合に、債権の評価を券面額又は評価額のいずれかで行うかについて、東京地裁商事部は券面額によるべきである旨の提言をし、東京地裁商事部の選任した検査役も調査報告書において券面額によって現物出資に係る債権の評価をしていたと主張。
 また判決でも、事案において問題となっている現物出資について、東京地裁商事部によって選任された検査役は、調査報告書にといて、券面額によってその評価をしたことが認められるとした。
 しかしながら、判決では、事案において問題となった現物出資が適格現物出資であれば、法人税法62条の4第1項により、被現物出資法人に移転をした資産及び負債について、その適格現物出資の直前の帳簿価額により譲渡をしたものとして、所得の金額を計算することになるとし、会社法制上、一般に現物出資対象債権の評価を券面額又は評価額のいずれで行うかという議論は、法人税法上、適格現物出資における現物出資対象債権の価額の認定には影響を及ぼさず、その認定とは関係がないこととなる、とした。


◆ 適格現物出資に該当


 そこで判決では、事案のDES取引について検討をしているが、問題となった増資の前後を通じて、原告である債権の現物出資を受けた法人、また、現物出資を行った法人ともに、同一人が代表取締役であり、それぞれの法人はその同一人による完全支配関係にあったと認められるとした。
 よって、現物出資を行った法人は法人税法2条12の4に規定する現物出資法人に該当、また、債権の現物出資を受けた法人である原告は法人税法2条12の5に規定する被現物出資法人に該当し、問題となっている現物出資は法人税法2条12の14イ所定の適格現物出資に該当するものというべきとした。
 そして、問題となった現物出資は適格現物出資に該当するので、法人税法62条の4第1項により、現物出資された債権を直前の帳簿価額により譲渡したものとみなして、事業年度の所得の金額を計算することとなるから、混同により消滅した債務の券面額と、その取得価額である帳簿価額との差額について、債務消滅益が認められるとして、課税当局の行った処分を適法とする判決を行っている。





(以上参考;週刊「経営財務」第2918号)
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