2009年6月23日
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OECDの情報交換基準に基づいた
タックス・ヘイブン・リスト
タックス・ヘイブン対策税制とは異なる目的、基準で策定
OECD(経済協力機構)は、4月上旬のG20による国際金融サミット後に、「税目的の情報交換における進展に関する報告書」を公表しているが、この報告書は国際的に合意されている租税基準の導入状況を示すもので、84カ国について下記の4分野に分けて、リスト化している。
1.国際的に合意されている租税基準を実質的に導入している国・地域、40カ国。
2.国際的に合意されている租税基準の導入を確約しているものの、いまだ実質的に導入していないタックス・ヘイブン(租税回避地)、 30カ国。
3.国際的に合意されている租税基準の導入を確約しているものの、いまだ実質的に導入していないその他の金融センター、10カ国 4.国際的に合意されている租税基準の導入を確約していない国・地域、4カ国。
この報告書は、OECDで薦められているタックス・ヘイブン・プロジェクトにより公表された報告書であるため、タックス・ヘイブンに該当する国と地域が示された報告書と見る向きもあるが、「特定外国子会社等」の所得を合算するいわゆるタックス・ヘイブン対策税制と、今般OECDから公表されたリストは、その目的、また判断の基準についても異なっていることから確認をしておきたい。
◆ 国内所得の低課税国への移転を規制
日本におけるタックス・ヘイブン対策税制は、軽課税国に本店等を有する外国法人の発効済株式総数か出資総額の50%超が、内国法人によって直接又は間接に保有されている場合、その内国法人が保有する株式数又は出資額に対応する特定外国子会社等の留保金額は、その内国法人の各事業年度の所得の金額の計算上、益金の額に算入するとされている。
これは、日本における所得を、国外の低課税国や地域に移転することで、税負担を不当に軽減することを防止することを目的として規定されている。
◆ OECDは税の中立性、公平性の確保が目的
これに対し、OECDでは、2000年に有害税制リストとタックスヘイブン・リストを策定しているが、このリストの認定に用いられた具体的な判定基準は、以下の4項目とされている。
@ 無税若しくは名目的課税
A 透明性の欠如
B 有効な情報交換の欠如
C 実質的な活動が行われていることが要求されない
これは、例えば、金融サービス等による可動性の高い経済活動による所得、いわゆる足の速い所得と呼ばれるものは、所得移転が容易とされており、上記の判定基準に該当する国や地域に所得が移転されると、その結果として、可動性の低い所得である労働・消費等による所得への税負担が高まることが懸念されることから、判定基準に該当する国や地域をリスト化しているものだ。
よって、日本のタックス・ヘイブン対策税制と、OECDのタックス・ヘイブン・リストとは、そもそも制度の目的が異なっており、定義や具体的な要件も異なっていることから、直接関係があるものではない。
◆ 現在のOECDは透明性と情報交換によりリスト化
また、今年の4月に公表された「税目的の情報交換における進展に関する報告書」においては、上記4つの判定基準のうち、@とCは除外され、Aの透明性の欠如とBの有効な情報交換の欠如に該当するかによって、その判定が行われているのが実情とされる。
その結果として、「4.国際的に合意されている租税基準の導入を確約していない国・地域」として、公表当初はマレイシア、フィリピン、コスタリカ、ウルグアイ、がリストに載ったわけだが、4カ国ともリスト公表後に、租税基準の導入を確約することを発表しており、実質的には租税基準に合意していない国や地域は存在しないこととなっている。
ただし、透明性や情報交換の強化に合意はしているものの、「2.国際的に合意されている租税基準の導入を確約しているものの、いまだ実質的に導入していないタックス・ヘイブン(租税回避地)」、また、「3.国際的に合意されている租税基準の導入を確約しているものの、いまだ実質的に導入していないその他の金融センター」として、計40カ国がリスト化されている。
(以上参考;週刊「税務通信」第3067号)
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