運営人:潟Gムアンドエーインタークロス
後援:税務研究会

M&Aニュース

                                               2009年8月14日
 



  
共同事業を営むための再編を行った場合における事業規模要件・特定役員引継ぎ要件
  
  

資本金による事業規模の比較は合併の場合のみ適用
  
  

  組織再編税制では、被合併法人等と合併法人等との間に50%超の株式保有関係がない場合、共同事業要件に該当すれば適格合併等に該当することとされており、この共同事業要件の1つとして”事業規模要件又は特定役員の引継ぎ要件”が織り込まれている。
 事業規模要件は、資本金の額や売上金額など事業の規模が大きく異なる法人間が合併等を行った場合、事実上買収と変わらないため、再編に伴って移転する資産についての課税の繰り延べを認めない趣旨で設けられているものだ。また、特定役員引継ぎ要件は、再編前後で同じ特定役員が存続することが見込まれている場合、経営面からみて共同事業が担保されているといえることから、事業規模要件に代わるものとして設けられている。
 ところで、事業規模要件や特定役員引継ぎ要件は、再編の種類によって規定が異なる部分があるため実務上では誤りが散見されている。そこで今回は、事業規模要件と特定役員引継ぎ要件のうち特に誤りやすい点について確認する。


◆ 共同事業要件は5要件の全てを満たすことが必要


 組織再編税制では、被合併法人等と合併法人等との間に50%超の株式保有関係がない場合、共同事業要件に該当すれば適格再編に該当することとされている。共同事業要件とは、以下の全てを満たすものだ(法令4の2)。
 @ 被合併事業等と合併事業等が相互に関連している(事業関連要件)
 A 事業の規模が5倍を超えない(事業規模要件)又は特定役員が引き継がれることが見込まれている   (特定役員引継ぎ要件)
 B 合併法人等の直前の従業員のうち80%以上に相当する数の者が従事することが見込まれている(    従業員引継ぎ要件)
 C 被合併事業等が合併等後においても引き続き営まれることが見込まれている(事業継続要件)
 D 株式等を継続して保有することが見込まれている(株式保有要件)


◆ 事業規模要件の資本金による判定は合併の場合のみ適用


 共同事業要件(上記@〜D)のうち、事業規模要件は、被合併法人等の事業と合併法人等の事業のそれぞれの売上金額、従業者数など規模の割合が概ね5倍を超えないことを要件としている。
 これは、明らかに事業規模が大きく異なる法人間が合併等を行った場合、事実上買収と変わらないため、再編に伴って移転する資産についての課税の繰延べを認めない趣旨で設けられているものだ。
 ところで、この事業規模の比較は、合併の場合、売上金額や従業員数の他に”資本金の額若しくは出資金の額”で判断することが認められているが、分割や株式移転など合併以外の再編が行われた場合には資本金の額で比較することはできないので注意が必要だ。
 これは、合併以外の再編の場合、その再編の内容が事業の切り出しや株の移転等であるため資本金の額で判定を行うのは実態に即さないためだ。
 実務上では、株式移転を行った際、資本金の額をベースに規模要件の判断を行っているケースが散見されるようだ。仮に誤って資本金の額をベースで判定を行っていた場合、適格要件に該当しないこととなることも想定されるのでくれぐれも注意したい。


◆ 特定役員引継要件は合併・分割と株式移転等で想定が異なるので注意


 一方、特定役員引継ぎ要件は、被合併法人等や合併法人等の特定役員(社長、副社長、代表取締役、代表執行役、専務取締役、常務取締役等)が再編後においても引き続き役員となることが見込まれていることを要件としている。
 これは、特定役員が再編後においても継続して存続している場合、経営面からみて共同事業が担保されているといえるためだ。
 ただし、この特定役員の引継ぎ要件は、再編の種類によって規定が異なるので注意が必要だ。具体的には、合併等の場合、「被合併法人の特定役員のいずれかと合併法人の特定役員のいずれかとが合併後に合併法人の特定役員となることが見込まれていること」が要件とされているが、株式交換や株式移転の場合には、「株式移転前の株式移転完全子法人等の特定役員のいずれかが株式移転に伴って退任するものではないこと」が要件とされている。
 つまり、株式移転や株式交換の場合には、株式移転完全子法人の特定役員が一人でも再編に伴って退任している場合には、特定役員引継ぎ要件を満たさないこととなるのだ。
 実務上では、この点について誤った解釈をしているケースがみられるようだ。先述の事業規模要件の判定と同様、誤って判断を行った場合には適格要件に該当しないケースが生じることも考えられるので注意したい。





(以上参考;週刊「税務通信」第3074号)
       (このコンテンツの使用に関し(株)税務研究会の許諾を受けています。)






Copyright (C) 1999- M&A Intercross Co.,Ltd , All rights reserved.
omo