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M&Aニュース

                                               2009年8月19日
 



  
   所在不明株式が売却等された場合における
  株主及び株式会社の課税上の取り扱い
  
   東京局文書回答 株式発行会社の処理についても明らかに

   

  東京国税局は6月16日、所在不明株主の株式が売却等された場合における株主及び株式会社の課税上の取り扱いを明らかにした。
 所在不明株式が市場売却された場合における個人株主の課税関係は、平成21年2月20日付の文書回答で明らかにされているが、今回の照会では、上場会社である株式会社が所在不明株式について競売や買い取りを行った場合における、株主(個人・法人)の課税関係、株式発行会社の課税の取扱い等が新たに確認されている。


◆ 所在不明株式とは5年間剰余金の受領がされないもの


 会社法上は、株式会社が株主に対してする通知または催告を行っているにもかかわらず5年以上継続して到達せず、かつ、その株式の株主が5年間剰余金の配当を受領しなかった株式は、競売や市場売却、同株式の全部又は一部の買取りができることとされている(会社法197)。


◆ 競売や買取等を行った場合の”株式発行会社”の課税関係


 今回の文書照会では、所在不明株式について競売や市場売却、買取りが行われた場合における株主及び株式会社の課税関係が確認されている。
 まず、競売や市場売却を行った場合の株式会社の課税関係だが、所在不明株式の売却等はそもそも発行会社が所在不明株主にかわって第三者へ譲渡を行ったにすぎないため、株式譲渡の対価に相当する金額は、預かり金(負債)として計上することとなる。
 そして、その後において債務等の消滅時効が成立した際に、預り金として計上していた金額を”雑収入”として計上しなければならない。
 なお、この債権等の消滅時効の成立は、債権が10年間行使されないことにより生じることとなる(民法167@)。
 一方、自社で株式の買取りを行った場合、発行会社は所在不明株主の請求により買収代金を支払わなければならない義務を要しているため、株式会社は資本金等の額及び利益積立金額を減少させる処理を行うと同時に、買取代金を”未払金”として計上しなければならない。
 そして、との後において所在不明株主の請求により買収代金を交付した場合には未払金を減少させ、一方で、債権等の消滅時効が成立した際には、その消滅した日の属する事業年度の”雑収入”として計上することとなる。
 なお、株式会社が所在不明株主に対し買取代金を支払う際、配当とみなされる金額については、所得税を源泉徴収し翌月10日までに納付しなければならないこととされているが、その株式の買取りの日から1年を経過した日まで支払がない場合には、1年を経過した日についての所得税を納付しなければならない点についても確認されている。


◆ 競売等が行われた場合における”個人株主”の取扱い


 一方、所在不明株主が個人である場合、競売や市場売却されたことに伴う課税関係は、株主としての権利が所在不明株主から第三者へ移転した時(競売等の日)における”譲渡所得等”となる。この際、上場株式等を譲渡した際に適用される軽減税率等の各種特例の適用が可能だ。
 また、株式が株式会社により買い取られた場合については、交付を受けた金銭の額等が、株式会社の資本金等の額等のうちその交付の基因となった株式会社の株式に対応する部分の金額を超える部分の金額については”みなし配当”とされ、このみなし配当以外の金額は株式等に掛かる”譲渡所得等”と扱われることとなる。
 なお、このみなし配当所得や譲渡所得等の収入すべき時期は、株式会社による自社株式の取得日となる。


◆ 競売等が行われた場合における”法人株主”の取扱い


  また、所在不明株主が法人である場合、競売や市場売却により生じた譲渡利益額や譲渡損失額は、株式が競売や市場売却された日の属する事業年度において、益金の額又は損金の額に算入することとなる。これは、会社法の規定上、所在不明株式が競売された際、株主の権利は金銭債権に代わり株主の権利が法的に消滅するためだ。
 一方で、株式発行会社により買取が行われた場合には、買取りが行われた日の属する事業年度において、その譲渡利益の額又は譲渡損失の額を益金の額又は損金の額に算入することとなる。この際、株式の買取価額のうち、株式会社の資本金等の額等を超える部分(交付の基因となった株式に対応する部分)については、個人株主の場合と同様”みなし配当”に該当することとなる。




(以上参考;週刊「税務通信」第3075号)
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