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M&Aニュース

                                               2009年8月26日
 



  
   「のれん」減損処理と無形資産への配分が論点に 
  
    ASBJ 企業結合会計見直しの論点整理

   

  企業会計準備委員会(ASBJ)は7月10日に「企業結合会計の見直しに関する論点の整理」を公表し、9月7日まで意見募集を行っている。ASBJでは、企業結合に関する会計基準の見直し作業を2段階に分けて進めており、今回公表された論点整理はその第2弾。「少数株主持分の取り扱い」や「のれんの会計処理」などが主な論点である。早ければ2010年中に基準が公表される見込みだ。


 ASBJでは、IFRSとのコンバージェンスプロジェクトとして、企業結合に関する会計基準を段階的に見直している。2008年12月に改正基準を公表し、EU同等性評価対応項目を対象にした「ステップ1」の作業を完了。現在、それ以外の差異解消を図る「ステップ2」の検討を継続中である。ステップ2での論点は、@少数株主持分の取扱い、A取得原価の算定、B取得原価の配分、Cのれんの会計処理、D子会社に対する支配の喪失。以下では、注目される論点のひとつである「のれんの会計処理」に関する検討内容について確認してみる。


◆ のれんは「非償却+減損処理」へ


 「のれんの会計処理」に関しては、変則的な形での見直し作業が進められている。「正ののれん」と「負ののれん」とに分け、先のステップ1のプロジェクトにおいて、「負ののれん」の取扱いが見直され、ステップ2において、「正ののれん」の取扱いが検討されている。
 現行の日本基準では、のれんは、資産に計上し、20年以内のその効果の及ぶ期間にわたって規則的に消却する取扱いとなっている。これに対し、IFRSおよび米国基準では消却しない取扱いである。「のれんは、繰延税金資産と同様に、将来の収益力によって価値が変動する資産であり、規則的な償却ではなく、収益性の低下による回収可能性で評価すべき」という考え方などが償却しない根拠となっている。
 日本国内では、現行処理の維持を求める意見が多く、専門委員会の審議でも、償却案を指示する意見は多い、そのため、論点整理では、改正の方向性は示さず、論点を示すだけにとどめている。しかし、コメント募集後の審議では、償却処理を廃止する方向で検討が進められるものとみられる。


◆ IRFSでは毎期減損テストを実施


 のれんを非消却とした場合に論点となるのが、のれんの減損処理である、非消却としているIRFS等では、毎期減損テストを行うこととしている。日本基準(固定資産の減損に関する会計基準)では、減損の兆候がある場合に減損テストを行う取扱いとなっている。
 のれんを非償却とする会計処理を選択した場合には、より減損テストの頻度を上げ、IFRS等と同様に、減損の兆候がある場合に加えて、毎期、減損テストを行う取扱いとするかどうか。また、のれんを含むより大きな単位で判定を行うことを原則とするのではなく、より減損テストをきめ細かく行うために、IAS第36号と同様に資金生成単位にのれんの帳簿価額を配分する方法を原則とする取扱いとするかどうかという点が論点となっている。

日本基準における取扱い IFRSにおける取扱い
のれんをさらに分割するか否か のれんを含む、より大きな単位での判定が原則。
資金生成単位にのれんの簿価を配分する方法も認められる。
資金生成単位にのれんの簿価を配分する方法が原則。
できない場合に、結果として、のれんが関連するが配分できないような、多くの資金生成単位から構成される場合がある。
減損損失の認識の判定(減損テスト) のれんを含む、より大きな単位において、のれんを含まない各資産グループにおいて算定された減損損失控除前の簿価にのれんの簿価を加えた金額と、割引前将来キャッシュ・フローの総額とを比較する。 各資産グループの帳簿価額にのれんの帳簿価額を配分した額を加えた金額と、回収可能価額とを比較する。
減損テストの頻度 減損の兆候がある場合 毎年+減損の兆候がある場合
減損損失の測定 のれんを含まない各資産グループにおいて算定された減損損失控除前の帳簿価額にのれんの帳簿価額を加えた金額を、より大きな単位の回収可能価額まで減額し、差額を減損損失として認識する。のれんを加えることによって算定される減損損失の増加額は、原則としてのれんに配分する。 のれんを含む資金生成単位の帳簿価額と回収可能価額との差額を減損損失として認識する。
まず、最初に、当該単位に配分されたのれんの帳簿価額を減額する。
減損損失の戻入れ 認められない。 同左


◆ 無形資産への配分の取扱い変更で実務負担も


 無形資産への取得原価を配分する基準に関しても追加的な論点となっている。
 企業結合における取得原価のうち無形資産に配分されたものは、一般に、一定の年数以内で償却され、配分されなかったものは、当該取得原価が識別可能資産及び負債の純額を上回っている限り、のれんとして会計処理される。取得原価のうち無形資産に配分されなかったものがある場合でも、のれんを償却する方法を継続しているときには、毎期、規則的に費用処理される。しかし、のれんを償却しない方法に見直すときには、規則的には費用処理されないことになる。そこで、これまで以上に、取得原価を無形資産に配分し償却することが必要になるか否かといった点が議論となっている。
 ただし、IFRSを適用する際の実務においては、無形資産の公正価値の評価や算出された評価額の妥当性を判断するために多くの時間とコストをかけているとの指摘もあり、のれんの非償却化に関する議論では、実務的な負担への影響とセットで検討することが必要なようだ。



(以上参考;週刊「経営財務」第2928号)
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