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M&Aニュース

                                               2009年8月28日
 



  
 国内企業同士の合併でも米SECに登録義務
     
  
                「Form F4」とは何か?

   

  2008年12月、「新日本石油」と「新日鉱ホールディングス」は経営統合を行うことについて基本的合意に達し、新会社設立に向けて走り始めた。同時に、両社では、米国証券取引委員会(SEC)の「Form F−4」登録に向け、米国会計基準に基づく過去2年分の財務諸表を作成すべく作業を進めている。国内企業同士の合併でも必要となるこの「Form F−4」登録とは何か。その概要を明らかにするとともに今後の展望を探った。


◆ 米国株主が10%超の場合に提出義務


 「Form F−4」は、非米国企業が経営統合を行う場合、SECに提出を要する「登録届出書」(日本でいう有価証券届出書のようなもの)。
 米国株主(国籍に関係なく米国に居住している株主)の株式保有割合が10%(計算上「自己株式」は除外)を超えるなど一定要件に該当した場合、日本国内企業同士の経営統合であっても、SECに登録届出書を提出しなければならない。新日本石油・新日鉱ホールディングスの経営統合においても、米国株主が多かったためこの10%ルールに抵触し、「From F−4」の登録義務ありと判定された。


◆ 米国会計基準又はIFRSで財務諸表を開示


 「Form F−4」で開示するのは、主に、統合するそれぞれの会社の監査済み財務諸表(過去2年分)と、統合に関する詳細な情報など。ただし、「日本基準」で作成された財務諸表の提出は認められていないため、「米国会計基準」、若しくは「国際会計基準(IFRS)」のいずれかに準拠した財務諸表へ組み替える必要がある。なお、過去にM&Aがあった場合などは、その時点まで遡ってデータ収集が必要になることもあるため、「過去10年近くを調べることとなる」(新日本石油)とのこと。さらに、同基準による新会社の見積財務諸表(プロフォルマ)の作成も必須となっている。


◆ IFRSへの移行で負担は解消?


 「Form F−4」については、迅速な組織再編の阻害要因になるとし、政府・経済産業省が「日米投資イニシアティブ」において、米国に見直しを要請している。しかし、米国政府は、投資家保護の観点などから正当化されると主張。継続協議となっている。
 この点、企業負担の大きい「財務諸表の組み換え」については、必然的に将来なくなることになる。金融庁が6月30日に公表した「我が国における国際会計基準の取扱いに関する意見書(中間報告)」に従えば、2015年又は2016年から、IFRSが強制適用となる可能性が高いからだ。ただ、IFRSに移行しても、日本企業の負担が残る可能性がないとはいえない。米国は、純粋なIFRSの提出しか認めていないため、万が一カーブアウトした場合、純粋なIFRSへの調整が必要となるからだ(ただし、金融庁はカーブアウトしないとしている)。実際、IFRSを採用しているEUでは、一部の基準(IAS39号「金融商品:認識及び測定」)を承認していないため、純粋なIFRSとは認められず、調整が必要となっている。
 このため経産省では、「日米投資イニシアティブ」において次回以降も「Form F−4」問題を取り上げる意向。特に次回は規制当局として「SECも参加する予定」とのことで、問題解決に向けた進展が期待される。




(以上参考;週刊「経営財務諸表」第2928号)
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