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M&Aニュース

                                               2009年9月02日
 



  
 非上場株式の評価損 回復可能性は
            上場株式の判断を準用も
     
  
 監査法人の確認による形式基準の採用は認められない模様

   

  非上場株式の評価損の損金算入は、発行法人の資産状態が悪化して株価が著しく低下した場合に認められる。このうち、株価の著しい低下に対する判定は、上場株式における判定が準用されることから、上場株式の株価の低下の判定でポイントとなる回復可能性の判断を、非上場株式に対しても行うこととなる。
 上場株式の場合、回復可能性の判断について、監査法人から合理性のチェックを受けた形式基準を税務上で導入することも問題ないとされている。
 しかし、このような形式基準について、非上場株式の回復可能性の判断について準用することまでは認められないようだ。
 このため、監査法人による監査のない法人と同様に、非上場株式については回復可能性の検証を個別具体的に行って、評価損の損金算入の検討を行うことになろう。


◆ 非上場株式の価額の低下は上場株式の取扱いが準用されるが


 非上場株式の評価損について税法上、”その有価証券を発行する法人の資産状態が著しく悪化した”ために、”その価額が著しく低下したこと”をもって損金算入が認められる(法令68条@二)。前者の資産状態の悪化の要件は、民事再生法の再生手続き開始の決定等の状況の基準や、純資産価額による基準に該当するものとされ(法基通9−1−9)、後者の株式価額低下の要件は、”上場株式の価額が著しく低下したこと”の取扱いを準用したものとされている(法基通9−1−7、9−1−11)。
 上場株式の価額が著しい低下をしたこととは、事業年度終了時の価額が帳簿価額よりも、おおむね50%相当額を下回っていて、近い将来の価額の回復可能性がない場合とされている(法基通9−1−7)。回復可能性については、国税庁の『上場有価証券の評価損に関するQ&A』や、Q&Aの公表後の取材で、監査法人の監査を受けている場合、合理性の確認がされて継続的に使用していれば、会計上の形式基準を、税務上の回復可能性の判断として導入することは問題ないとされている。


◆ 会計では非上場株式の回復可能性は減損処理の要件とされていない


 以上のことから、監査法人の監査を受けている法人であれば、法人税基本通達9−1−11を見る限り、非上場株式の回復可能性に対しても、上場株式と同様に形式基準を導入しても問題なさそうに思えそうだが、本誌が確認したところ、非上場株式の回復可能性の判断基準として、会計上の形式基準は認められないようだ。
 会計上、上場株式等の時価のある有価証券の減損処理について、”時価が取得原価に比べて50%程度以上下落した場合に、合理的な反証がなければ回復する見込みがあるとは認められない”とする一方(金融商品会計実務指針91項)、非上場株式のように時価を把握するのが困難な有価証券の減損処理については、”「発行会社の財政状態の悪化により実質価額が著しく低下したときは、相当の減額をなし」とされ、実質価額の回復可能性は減損処理の要否の判定要件とはされていません”としている(同実務指針92項、金融商品会計Q&AQ33)。このように、上場株式とは違い、非上場株式の減損処理では回復可能性の検証を行うことが前提とされていないからだ。


◆ 総合的に勘案して回復可能性の検証を行うことに


 ただ、回復可能性の判断の考え方は準用されるようなので、国税庁Q&AのQ1で記された合理的な判断基準によって回復可能性の判断を行うことになるが、非上場株式であるため、過去の市場価格や証券アナリスト等の第三者の見解は根拠にし難い。したがって、発行法人の業況や財政状態だけではなく、中長期の経営計画や収益力など、多方面から非上場株式の回復可能性について具体的に検証を行うことになろう。





(以上参考;週刊「税務通信」第3077号)
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