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M&Aニュース

                                               2009年9月09日
 



  
     公正価値概念導入へ論点整理公表
     
  
 

    ASBJ 関連開示も拡充の方向


  企業会計準備委員会(ASBJ)は8月4日、第182回委員会を開催し、出席委員全員の賛成により「公正価値測定及びその開示に関する論点の整理」の公表を議決した。同論点整理は、公正価値の概念と公正価値とヒエラルキーを導入した場合の開示のあり方等について論点をまとめたもの。
 現行の日本基準では、「公正価値」ではなく、各基準において「時価」が定義されている。「公正価値」と日本基準での「時価」はほぼ同義とされるが、海外では、国際会計基準審議会(IASB)が米国基準にあわせるかたちで国際会計基準(IFRS)に「公正価値」の概念・定義を導入する方向。ASBJも、東京合意に基づくコンバージェンスの達成に向け、論点整理で公正価値の定義など次の3点を取り上げた。

論点1:公正価値の概念(定義)
論点2:資産又は負債の公正価値の測定方法
論点3:公正価値測定に関する開示


◆ 論点1:公正価値の概念−IFRSを踏襲か


 IASBは、今年3月に改正したIFRS第7号で金融商品を対象にした公正価値ヒエラルキーの考えを取り入れ、レベル(1〜3)ごとの開示を定めている。その後、さらに公正価値測定に関する公開草案を出し、公正価値概念の導入などで米国基準とのコンバージェンスを進める考えだ。
 IASBの公開草案と米国基準(SFAS第157号)における公正価値の定義は以下のとおり。

 公正価値とは、測定日において市場参加者間で秩序ある取引が行われた場合に、資産の売却によって受け取るであろう価格、又は負債の移転に支払うであろう価格である(出口価格)

 一方、我が国では、個別の基準において「公正な評価額であり、取引を実行するために必要な知識を持つ自発的な独立第三者の当事者が取引を行うと想定した場合の取引価額」といった「時価」の記述はあるが、「公正価値」としての定義はない。日本基準の「時価」と「公正価値」の考え方に大きな差異はないとの見方だ。
 しかし、日本基準の「時価」が入り口(購入)/出口(売却)価格の両方を認める一方で、IASB草案/米国基準は「出口価格」に統一するなど、見直すべき点もある。
 論点整理では、「出口価格の概念」をはじめ、「市場参加者の視点」や「参照市場の前提」などの検討項目を列挙した。
 このままIFRSを踏襲して「公正価値」を定義し、仮に日本基準の「時価」と置き換えることになると、以下の基準等では調整が必要になる可能性もある。
  • 金融商品に関する会計基準
  • 固定資産の減損に係る会計基準
  • 賃貸等不動産の時価等の開示に関する会計基準
  • 企業結合に関する会計基準
  • 固定資産の減損に係る会計基準の適用指針
  • 賃貸等不動産の時価等の開示に関する会計基準の適用指針 等
 ただ、ASBJは論点整理の対象を公正価値概念のみに限定、「特定の資産・負債の測定に入口価格を用いることを否定するものではない」としている。


◆ 論点2:資産・負債の公正価値の測定方法−ヒエラルキーで優先順位付け


 論点整理ではまた、公正価値ヒエラルキーの導入や、レベルごとの開示についてコメントを求めている。
 公正価値ヒエラルキーとは、公正価値を、測定にあたって利用した情報に基づいて3段階に分けたもの。
 利用した情報(インプット)は観察可能かとうか、客観性の有無で優先順位がつけられる。(図1参照)

【図1】 公正価値の開示ヒエラルキー

分類 具体的なインプット
レベル1 同一の資産又は負債について活発な市場における無修正の公表価格を用いた公正価値 活発な市場 ・同一の資産又は負債の公表価格
レベル2 他の観察可能なインプットを主に用いた公正価値 ・類似の資産又は負債の公表価格
活発でない市場 ・同一又は類似の資産又は負債の公表価格
・公表価格以外の観察能なインプット
レベル3 観察不可能なインプットを主に用いた公正価値 ・市場参加者が用いる仮定に関して報告企業自身の見積りを反映したインプット


 ここで使われるインプットとは、イールドカーブや信用リスクなど、資産・負債の価格算定に利用する仮定を指す。米国基準とIFRSでは、貸借対照表上、公正価値で測定されるもののレベル分類・表示が義務付けられている。


◆ 論点3:公正価値測定に関する開示−開示拡充で実務負担増も


 我が国では、2008年3月に金融商品会計基準を改正、時価開示に関する適用指針とともに、金融商品を対象とする開示に関する適用指針とともに、金融商品を対象とする開示の拡充が図られた。論点整理で取り上げる開示の議論は、時価表示に加え、公正価値とヒエラルキーによる分類など、企業に、より詳細な情報の提供を求めることになる。米国基準を採用している企業では、すでにこうした開示を行っている。  さらに、IASBの公開草案では、米国基準が求める現行の開示項目のほか、@レベル1とレベル2の間の重要な振替額及びその理由やAレベル3についてインプットの感応度分析、Bインプットに関する開示、なども要求。開示対象も現在の「貸借対照表において公正価格で測定されているもの」から「それ以外で公正価値が注記されているもの」まで広げる見込み。
 米国もIASBの案と同様の開示を促す方向で動いているため、米国基準採用企業も追加的な対応が必要になりそうだ。
 これらの開示によって、その透明性や比較可能性が高まるとの意見がある。一方、「企業の実務負担が増加するのは事実」との声もでており、企業をはじめ関係者がどのような見解を示すのか、論点整理への積極的なコメントが期待されている。





(以上参考;週刊「経営財務」第2930号)
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