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M&Aニュース

                                               2009年10月01日
 



  
 自己株買いが予定されている株式に係る
   みなし配当の益金不算入制度
           
     
  
 

 平成22年度税制改正で適用が制限される可能性も
             



  先に公表された、財務省と経産省共催による資本に関係する取引等に係る税制についての勉強会の論点取りまとめには、「自己株式として取得されることを予定して取得した株式については、みなし配当に係る益金不算入制度の適用を認めないことが適当であると考えられる」との意見が織り込まれた。
 これは、現行制度上、法人株主が株式を市場で購入した後に同株式を発行法人に売却した際、みなし配当の益金不算入制度と同時に譲渡損失が生じた場合にはその損失を計上することができる仕組となっているが、実務上ではこの制度を利用し、恣意的に譲渡損失等を計上させるケースを規制するためだ。
 この論点は、今後、税制改正の要望事項に織り込まれる見込みとなっており、早ければ平成22年度改正で改められる可能性もあることから今後の動向に注目だ。


◆ 現行はTOBと市場売却で税負担に乖離


 現行の法人税法では、法人株主が発行法人に株式を譲渡した場合、その株式の譲渡金額のうち1株当たりの資本金等の額を超える部分については剰余金の払い戻しとされるため、みなし配当として益金不算入制度が適用される。同時に、譲渡損が計上される場合もある。
 例えば、法人が1株220で取得した株式(一株当たりの資本金等の額100)を250で市場で売却した場合、差額の30が株式の譲渡益となる。
 一方で、同じ株式をTOB(公開買付)に応募し250で発行法人に譲渡した場合には、法人税法上は譲渡譲渡対価250と資本金等の額100との差額部分である150が剰余金の払戻しとして配当とみなされ、その50%つまり75が益金不算入の金額とされる。加えて、譲渡対価の額250から取得価額220とみなし配当の金額150を除いた金額△120が株式の譲渡損失として損金の額に算入することができるのだ(差引△45の譲渡損)。


◆ 恣意的な譲渡損計上を規制


 資本関係取引等に関する勉強会では、自己株式として取得されることが予定されている株式を購入し、直後に発行法人へ譲渡することにより恣意的に譲渡損失の計上を行うケース等を問題視し、このような株式についてはみなし配当の益金不算入制度の運用を認めないことが適当である、との意見が織り込まれた。

 仮に税制改正で制度が改められ、上記と同様の株式を譲渡した場合には、みなし配当となる譲渡価額250と一株当たりの資本金等の額100との差額150は、全額課税の対象となる。一方で、譲渡損益の計算上は現行と同様、譲渡対価の額250から取得対価220とみなし配当の金額150を除いた金額△120が譲渡損失の額となるため、結果的に、株式の譲渡により課税される金額は30(益金算入額150−譲渡損失額120)となり、市場売却の場合と税負担はほぼ変わらないこととなる。
 ただし、みなし配当に係る益金不算入を制限するのは、あくまでも「自己株式として取得されることを予定して取得した株式に限る」ことが想定されている。それだけに、対象株式の判定方法も気になるところだが、その点を念頭に今後の議論に注目する必要があるだろう。




(以上参考;週刊「税務通信」第3081号)
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