2009年10月23日
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再生手続き開始時の評価損計上は従来どおり
民事再生法の場合の資産評価損の取扱いを確認
平成21年怒税制改正では資産の評価損の計上対象に金銭債権を追加するなど、企業再生関係税制が拡充された点はご承知のとおりだ(法法33A〜C)。ただし、現時点では通達の改正が特段ないこともあり、企業再生に携わる実務家からは、民事再生手続きの開始決定時における評価換えの取扱いは従来どおり可能か、といった疑問が寄せられている。
そこで、本誌がこれらの疑問点について国税当局へ取材した結果、資産の評価損を計上できるケースとして、民事再生手続いの開始決定時における資産評定の場合も政令で定める法的整理の事実(法法33A、法令68)に該当することを確認した。したがって、再生手続き開始決定時の資産評定については従来の取扱いどおり、損金経理により資産の評価損を計上できることとなろう。
◆ 民事再生法は法的整理の事実に該当
従前、損金経理による資産の評価損計上を認めた旧法人税法33条2項については、政令で定める事実(旧法令68)がある場合を要件として定めていた。例えば、評価損計上の対象である棚卸資産の場合は通達において「イからハまでに準ずる特別の事実」において「民事再生法の規定による再生手続開始の決定があったことにより・・・・」(法基通9−1−5)と例示するなど、民事再生法の場合も資産評定時に評価損の計上ができるとする法令解釈通達があり、法的整理の事実に該当することが確認されていたところだ。
21年度税制改正では、資産の評価損を計上できる法人税法33条2項で規定する特定の事実として「物損等の事実」と「法的整理の事実」に分ける整理がなされた(法令68@)。この法的整理の事実とは「会社更生法又は更生手続の特例等に関する法律の規定による更生手続きにおける評定が行われることに準ずる特別の事実」としており、併せて法的整理の事実があった場合には、評価損の計上を行う資産の範囲を限定しないこととされた。そのため、実務家の間では、民事再生法の場合が法的整理の事実に該当しない理由はないとの見方が支配的だったが、法令改正の内容が「法的整理の事実」に係るものであったため確信を得るまでには至らなかったようだ。この点について、本誌があらためて確認したところ、法的整理の事実に民事再生法の適用が含まれる趣旨であることが分かった。
◆ 手続開始決定時の評価損計上も可能
また、21年度税制改正では民事再生法の適用が法的整理に該当するとしても、前述の民事再生手続きの「開始決定時」に評価損を計上できる取扱い(法基通9−1−5)そのものに、変更が無いかという点についても、実務家の関心が集まっていたところだ。
21年度税制改正では、資産の評価損の計上ができる事実を規定する法令68条が見直された。改正前の取扱いでは、法的整理の時jつがあった場合にも評価損計上資産の範囲に制限があり、固定資産の場合は旧法令68条で規定する固定資産の評価損の計上ができる事実に規定するものとして「民事再生法の規定による再生手続き開始の決定があったことにより、評価換えをする必要が生じたこと」と明らかにしている(法基通9−1−16)。このほか、旧法令68条で定める評価損の計上ができる事実について、棚卸資産の場合には前述のとおり法基通9−1−5、有価証券の場合には法基通9−1−9等で、それぞれ再生手続き開始決定時に評価損を計上できる旨が規定されている。
そこで、21年度改正により再生手続き開始決定時の取扱いについて国税当局へ確認したところ、法令の改正は評価損ができる事実を制限する趣旨ではないことからも、いわゆる「再生手続き開始決定時の資産評定」については従来どおり資産の評価損を計上できる見通しだ。ただし、裁判所が下した再生手続きの開始決定から一定期間後における「再生計画認可決定時の資産評定」を行う場合(法法33C)には、法人税法33条2項の規定を適用できない(法令68A)。つまり、どちらか一方しか適用できない点に留意する必要があろう。
◆ 金銭債権は事実上、再生計画の認可時に計上
ところで、21年度税制改正では、条文上、法的整理の事実があった場合、資産の評価損を計上できる対象資産に制限がなくなったかのように見える。しかしながら、特定の事実が生じた場合に資産の評価損を損金算入できることを定めている法法33条2項では、資産の評価損を計上するためには損金経理を要件としている点はご存知のとおりだ。
会計上、貸付金等の金銭債権については貸借対照表価額を貸倒引当金控除後の金額とし(金融商品会計基準14項、28項等)、また、一般的に市場がないケースが多く、客観的な時価を測定することが困難なため、原則として時価評価を行わないこととしている。(同68項)。つまり、会計上では金銭債権について評価損の計上を行わないことから、税務上は損金経理要件を満たさず、評価損として損金に算入できないということとなる。
したがって、民事再生法の場合には金銭債権の評価損を計上できるタイミングは事実上、民事再生計画認可の決定時における資産評定(法法33C)によることとなろう。
(以上参考;週刊「税務通信」第3087号)
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